M-1GP2021錦鯉 最終決戦 ネタ分析

こんにちは。ホスピタリ将です。


年の瀬も近づき…やっと昨年のM-1GPの錦鯉さんのネタ分析を終えました。
これもひとえに、まとまった時間ができたおかげなんです。
 
…と言いますのも、私ホスピは神経系の病気を持っているんですが
ここ数年症状は安定していたのですがこの度見事に再発してしまいました。
よって数日の療養を要するようになり時間ができ、そういえば年の瀬だなということでこのネタ分析に着手することができました。
再発ラッキーとも取れますねw
 
さて錦鯉さんといえば、長谷川さんは同郷北海道。
今回最高齢での優勝。今や借金も返済も余裕?な第二の人生を送っていますね。
渡辺さんは一見「じゃないほう芸人」のような雰囲気でしたが、コアなAV好きで、ボケも上手いし掘れば掘るほど味の出る変わった人というのが、優勝してからすぐに露呈していますw
 
歳の割にはフットワークも軽そうで、今がこれまでをひっくり返すぐらい楽しいんだろうなというのが無理なく伝わり、今後の活躍も楽しみはお二人です❤
 

●分析方法●


漫才ネタの文字起こしして、面白い部分・視聴者からの笑い声が発生した部分を笑える箇所として、その笑える箇所の前後のやりとりのみ抜粋しています。(内容や視聴者の笑い声を聞いて総合的に私が笑える箇所として判断しています。)
笑える箇所は時間軸に沿って掲載しています。(皆さんには参照映像等と共に本ブログを見て頂くとわかり易いです。)
また笑える箇所・解説を太字で加工しています。
笑える箇所を「ウケる技術」という本に記載がある40の技術を使って振り分けをしています。「ツッコミ」「カミングアウト」etc…などのウケる技術に振り分け、解説を付け加えています。
内容によっては「ツッコミ+カミングアウト」など2つのウケる技術を組み合わせることもあります。こちらも私の主観であり、恐らく「こういった印象を与えたいだろう」と推測している内容になります。
 
省略のため以下の「ボ」「ツ」「ボツ」でネタの役割を表現しています。
「ボ」=ボケ役の発言
「ツ」=ツッコミ役の発言
「ボツ」=ボケ役・ツッコミ役の両方の発言
 

●分析対象ネタ●


M-1GP2021・錦鯉・最終決戦
漫才時間237秒
笑える箇所37回(約6.4秒に1回発生)
ネタ前半に笑える箇所15回、ネタ後半に笑える箇所22回。
 
●シナリオ●
起:サル捕獲を業者がへたくそ
承:サルの捕獲のやり方(住宅街)
転:サルの捕獲のやり方(森の中)
結:サルの捕獲のやり方(長谷川さん覚醒)
 

●漫才ネタと笑える箇所と分析●


笑える箇所と前後の文章を載せています。
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ボ:どうもー!こんにちはー!
ツ:覚えろよ!
ボ:どうせみんなこうなるんだよ!(ウケる技術「ビジュアル化」:歳を
 とると皆ハゲて歯が無くなると押し付ける。)

ツ:嫌なこと言うな!すいませんね、錦織と申しますよろしくお願い
 します。
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ボ:俺ね街中に逃げたサルを捕まえたいんだよね
ツ:…もっとやることあんだろう!お前はよ。50歳ならよ。(ウケる技術
 「ツッコミ」:50歳と言う年齢からかけ離れたわんぱくな夢に喝を
 入れる。ちょっと考えてからの間がちょうどよい。)

ボ:捕まえたいのよ。
**********
ツ:いやあんなん業者任しときゃいいんだよ。
ボ:業者下手じゃん!!ね?!(ウケる技術「強がり」+「切替」:年齢の
 割にできるオーラも感じられないが自信満々で、同調を煽る。)

ツ:誰に言ってんだよ。
ボ:よくニュースとかでやってるけど。
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ボ:サルめ!どこへ行った!
ツ:いきなり佳境じゃねえかお前!(ウケる技術「ツッコミ」:サルを
 捕まえる動きとしては妥当だが、やりすぎ感を出しているのを視聴者に
 伝える。)

ボ:(バタバタとそのあたりを探し回る)
ツ:もっと何か、段階踏めよ!
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ボ:あ!サル発見!
ツ:あ、いた?うん。
ボ:キッキッキッキッキ!(自分のお尻を叩き挑発しているよう)
ツ:おおおお!煽ってきてるねサルが。
ボ:くそぉ!馬鹿にしやがってこっちだってオラララララ!おしっこ
 シャー!(ウケる技術「ビジュアル化」+「裏切り」:サルを捕まえる
 人間の方が周りに迷惑をかけている。)

ツ:あららららら、猿の方が意味わかるよ!サルの方が賢いじゃねーよ。
 (ウケる技術「ツッコミ」:挑発にのっているだけで捕まえる方向に
 向かっていない。)

**********
ボ:コノヤロー!捕まえた!
ツ:お!捕まえた!
ボ:キーキーキーキー!うわあ!
ツ:顔を引っかかれている!大丈夫か、大丈夫か雅紀さん!
ボ:くそぉ!捕まえた!
ツ:あ、また!また顔を!
ボ:キーキーキーキー!うわあ!
ツ:また顔を引っかかれた!大丈夫か!
ボ:くそぉ!捕まえた!
ツ:あ、また!また顔を!
ボ:キーキーキーキー!
ツ:また顔を!
ボ:うわあ!(ウケる技術「天丼」:何度も同じ方法で捕まえては顔を
 引っかかれて逃げられている。)

ツ:覚えろよ!いい加減!もうサルがびっくりしてんじゃねえかお前。
 (ウケる技術「ツッコミ」:捕まえたことがあると豪語する学習能力が
 ない50歳に怒っている。)

**********
ボ:あ!逃げた!
ツ:大変だこれは。
ボ:待てー!(ウケる技術「ビジュアル化」+「裏切り」:捕まえたことが
 ある50歳がサルに合わせてが退化する。)

ツ:お前は二足でいけよ!(四足歩行)合わせなくていいよ!(ウケる技術
 「ツッコミ」:四足歩行ではしっているのを視聴者に分かりやすく説明
 している。)

**********
ボ:あ森の中に逃げこんだ!
ツ:……じゃあいいじゃねか。(ウケる技術「ツッコミ」:サルを捕まえ
 たいが、人里離れてくれればそれも解決したことになる。ただ間を使う
 ことで、話が終わってしまう悲しさも混じる。)
終わり、おい終わりだ!
ボ:(森を)燃やしたい!(ウケる技術「カウンター」:話が終わって
 しまうため何とか話題を繋ごうと話がエスカレートする。)

ツ:駄目だよ!!何してんだよ、馬鹿野郎!
**********
ボ:あっ人の家に逃げ込んだ!
ツ:お前が火つけるからだろう!
ボ:(窓)パリーん!!(ウケる技術「決まり動作」:映画などで相手を
 追う格好いいシーンをサルにたいして行う。)

ツ:開けてけ開けてけ!人ん家なんだから!(ウケる技術「ツッコミ」:
 人ん家だし、窓割ってまでする相手ではないと観客に伝える。)

ボ:あ!サル発見!
**********
ボ:この野郎!人間様をなめやがって!
ツ:捕まえた。
ボ:あ、おじいさん!
ツ:間違えんなよ!服きてたら爺さんだよ!(ウケる技術「ツッコミ」
 +「ディテール化」:間違えやすく…もないが直ぐわかる「サルと人間の
 違い」を教える。)

ボ:(爺さんを投げ捨てる)(ウケる技術「キャラ変」:今は爺さんより
 サルの駆除が最優先のため爺さんを投げ捨てる。)

**********
ツ:投げ捨てんじゃねーよ!爺さんはこうして…(ウケる技術「ディテール
 化」:サルの駆除の本線とは別に爺さんのいたわり方のスピンオフが
 始まる。)

ボ:どこ行きやがった!
ツ:爺さんは最後に頭をこう…(ウケる技術「ディテール化」:サルの駆除
 の本線とは別に爺さんのいたわり方のスピンオフは続いている。)

**********
ボ:バナナを置いて、上にかごを置いて、バナナを取りに来たところを、この紐を引っ張ればいいんだ!
ツ:鳩のやり方じゃねえかよお前。(ウケる技術「ツッコミ」:観客に思い
 描きやすいように定番の罠の例を伝える。)
大丈夫?捕まるの?
ボ:(罠の前で待っている様子)…あれ?バナナがある!(ウケる技術
 「キャラ変」+「サプライズ」:自分がサルに仕掛けた罠に自分が引っ
 かかりサル化してしまっている。)

ツ:駄目だよ!駄目だよ!駄目だよ!
ボ:やった!ガシャン!くそぉ!開けろー! (ウケる技術「サプライズ」
 +「決まり動作」:自作のサルの罠に自分で捕まってしまう。サルと同等
 かサル以下の知能とばれてしまう。)

ツ:お前が置いた!お前が置いた!お前が置いた!
ボ:誰の仕業だー!(ウケる技術「レッテル展開」:自作の罠を覚えて
 おらず、食欲に負け、サルと同等かサル以下の知能になっている。)

ツ:お前の仕業なんだよ!(ウケる技術「ツッコミ」:仕業というボケ役の
 言葉を使って、そっくりそのままお返ししている。)

**********
ボ:わかったぞ!
ツ:大丈夫か?
ボ:バナナを置いて!(ウケる技術「天丼」+「裏切り」:当然違う代案を
 期待していたが、ツッコミ役が言うとおりバカが体中を駆け回っている
 せいか二の舞を予想させる。)

ツ:全然わかってねえな!
ボ:上にかごを置けばいいんだ!(ウケる技術「天丼」+「裏切り」:頭
 からお尻まで先ほどの失敗案と同じで、記憶を喪失してしまっている
 ようだ。サル化してしまっている。)

ツ:わかってねえじゃん!駄目だって、駄目だったろ?!
**********
ボ:…あれ?バナナがある!(ウケる技術「キャラ変」+「天丼」:自分の
 仕掛けた罠を忘れて、前回の失敗を忘れて記憶を喪失してしまっている
 ようだ。サル化してしまっている。)

ツ:バナナに!バナナに気づくなよ!
ボ:やった!うおおおお!開けろー!!(ウケる技術「天丼」+「決まり
 動作」:再びサルに用意した罠に自分でひっかかってしまう。いわん
 こっちゃない。サル以下の知能を再び露呈する。)

ツ:気づくなってバナナに!
**********
ボ:ちくしょうー!!…サルを捕まえるなんて簡単です。(ウケる技術
 「キャラ変」:別の人格が出たかのように知能的なキャラクタに返信
 する。サルを捕まえるため自分の変えようと必死にも思える。)

ツ:怒り過ぎて賢くなった!
ボ:こうすればいいんです!バナナを置いて、(ウケる技術「裏切り」
 +「天丼」:キャラクタを変えたが作戦が変わらない)

ツ:全然馬鹿じゃねぇか!馬鹿じゃねぇか!
ボ:上からかごを置けばいいんです。
**********
ツ:ダメだって!それダメだって!…見るなもう。(ウケる技術「悪い
 空気」:新キャラに対して違う結果を期待しながら、観客と一緒にとり
 あえず見守る。)

ボ:…あれ?
ツ:バナナを見るな、バナナをみるな。(ウケる技術「悪い空気」:これ
 までと同じ結果になりそうで不安。)

ボ:バナナがある! (ウケる技術「キャラ変」+「天丼」:知的キャラへの
 変身むなしく、サル以下の知能キャラクタに戻る。)

**********
ツ:バナナを見るなよ!バナナを見ないでくれよ!もう!(ウケる技術
 「悪い空気」:言わんこっちゃないという雰囲気。)

ボ:うおおおお!!ぎゃふーん!!!
ツ:ぎゃふーん、は初めて聞いた!(ウケる技術「ツッコミ」:これまでと
 違う、違うキャラクタの出現を観客に匂わせる。)

ボ:あ~あ!あ~あ!あ~あ!(ウケる技術「キャラ変」:怒り過ぎて
 ボケ役の中のバナナ欲の塊のようなラスボス的存在が出てくくる。)

**********
ボ:バナナあぁ~!
ツ:もうやめろー!!(怪物となったボケを仕留める)(ウケる技術
 「サプライズ」:ツッコミ役が見かねて仕留める。そんなことができた
 のかと観客も驚く、最終手段。)

ボ:…ライフイズビューテブルー!!(ウケる技術「ボキャブラリー」
 +「ミスマッチ」:このやりとりから「人生は美しい」とは全く感じ取る
 ことができない。まったく意味のわからない締めの一言。)

ツ:うるせえよ!どうもありがとうございました。
 
**********

●技術紹介●

漫才ネタ中に出てきた笑える箇所のウケる技術を紹介いたします。
なお、このウケる技術は「ウケる技術」という本の中に紹介される40の技術を参考にしています。
 
~空気・共感~ 【場の空気を読みその空気を拾う技術】
「ツッコミ」相手の面白さに気づいて拾う 11回
「カウンター」普通ためらうところを即レスで返す 1回
「悪い空気」雰囲気の悪さを共感し合う 3回
…小計15回
 
~キャラ~ 【空気・共感モノとは逆に場の空気を作り出す技術】
「強がり」自信ありげにふるまう 1回
「ビジュアル化」体を使って滑稽な映像を再現する 3回
「決まり動作」決まり動作を場面に当てはめる 3回
…小計7回
 
~前後~ 【会話文の前と後で逆の関係を作ることによって聞き手の期待の 
 逆を行く、良い意味で裏切る技術】

「切替」会話の矛先をいきなり変える 1回
「キャラ変」態度を急変させる 6回
「裏切り」相手に次の行動を読ませておいて逆を言う 5回
「サプライズ」相手の期待をいい意味で裏切る 3回
…小計15回
 
~クリエイティブ~ 【新しい組み合わせを作る技術とベタな共感しやすい
 連想を展開する技術】

「ディテール化」話の細部を具体的にして転がす 3回
「ミスマッチ」話の文脈と違うものを組み合わせる 1回
「天丼」一度受けた言葉を再度登場させる 7回 
「レッテル展開」相手の行動を一つのレッテルで解釈する 1回
「ボキャブラリー」面白さが増す語彙を会話にまぶす 1回
…小計13回
 
〔ウケる技術使用回数 合計50回(15種類)〕
(※笑える箇所は37回ですが、ウケる技術の使用回数が50回ということは
 一度に2つ以上ウケる技術が使われている部分があるためです。)
 

●印象●

6.4秒に一回笑える箇所があり、非常に多く感じます。
しかもネタ前半と後半での笑える箇所の差は7回!後半に畳みかける勢いがあります。この7回という数字の大きさからセオリーを抑えているなと感じざるを得ません!!(ちなみに歴代一位のネタ前半<後半の笑える箇所は
霜降り明星で、前半に対し、ネタ後半は13回笑える箇所が多いです。)
 
「天丼」の数が圧倒的に多い、ネタの構成が昔風の漫才だなという印象がある。わかりやすいけど、飽きやすいリスクもありますよね。
でもそれが成功できたのは恥ずかしげもなく同じボケを100%で、いややるたびに110…120%とバカ役を演じきれる長谷川さんがいるから成り立つ漫才。だからお客様も見てて飽きないのだろうw
過去M-1優勝者最終決戦の中でも天丼が1番多いです。
 
この漫才中で「ツッコミ」による笑いの発生が一番多いはやはりこの漫才を上手く渡辺さんがリードできているからかな。
ボケの長谷川さんははっきり言って言うことが滅茶苦茶だ、それを上手く
解説やら訂正やら中立の立場で落ち着いて諭そうとしてくれている。

「サルが森に逃げた」「…じゃあいいじゃねえか。」

このツッコミはベストオブベストだと思ったw
当初の捕まえるいう目的以上のことができた。
人としてもサルとしてもこれ以上ない結果を前に冷静な勝利のツッコミだw
この少し考える「…」の間、これが素晴らしいタイミングだった。これ以上ない、よく考えている。観客にも疑問を投げかける間だった。
他にもそうだが、静と動のツッコミが入り交じり、強弱ある大人ながらのツッコミだった。
さすが二人合わせて90歳こえるだけあるよねw貫禄の間w
 
最後のこの漫才は「ライフイズビューティフル!」という意味の分からないボケで終わるのだがこれが天丼ばかりで、演者合計年齢90歳を超える
古臭い漫才臭を払拭したように思える。

サルは捕まえられないし、サル以下の知能かもしれない、
そもそも芸人として全然売れてこなかった!
…でも人生は美しい!
どんな締め括りだよ!w 

ここにシンプルだけじゃない、新しさも混じった良い漫才が完成したように
感じました。
 
僕はこの漫才は正直、お涙頂戴の恩情審査で錦鯉が優勝したものだと思っていた。実はオズワルドが優勝するもんだと思っていたw
それは漫才のシナリオとしては非常にシンプルに見えたからだ。
 
でもそれはテレビの印象で、こうして深く分析をしてみると
ウケる技術の使用種類も少なくなくバランスがよく、天丼・サプライズ
・悪い空気・決まり動作の使用回数は歴代M-1GP優勝漫才の中で
一番多く、古臭い雰囲気を出しながらも新しさを取り入れて、
大胆な漫才をしていた。

この辺をM-1審査員の人たちは5分弱の中で見抜いたのだろか。大正解だと思う。彼らの手元のメモが見たいw
 
●引用文献●
小林昌平, 山本周嗣, 水野敬也(2007)「ウケる技術」新潮文庫
 
●参照動画●
アマゾンプライムM-1動画
 

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