未来の1点からくる光、それが切ない色恋を照らす。前川清さん「男と女の破片(かけら)」
10年ほど前だった。
札幌市中央区大通西5丁目8番地、昭和ビルの地下一階。
(札幌のマチのどまんなかである)
当時「フラワー」という小さなスナックがあり、
私はしょっちゅうカラオケを歌いに行っていた。
秋の日の、夜10時過ぎだった。
私はカウンターの右隅に座っていた。
左隅に初老男性の2人組がいて、そのうちの1人が、
前川清さんの「男と女の破片」を歌った。
♪♪♪……
1)抱かれたら終る 男と女より
手枕のままで 何んにもしないで
指さきを拒む 心の裏側で
悲しいほど 好きでいればいい
愛が涙の 破片(かけら)になっても
心にあなたを宿して 生きていけるよう
二度と恋など 出来ないくらいに
身体のすみまで あなたと すべて取り換えて
あしたなんか もういらない
2)満月に吠える 男と女より
口紅もつけず眠りにつかせて
……♪♪♪
男性の歌い方がカッコよかった。
かみしめるようにかつメリハリもあり…。
初めて聞く曲だった。
「いい歌だなあ」と思った。
(店々に名人あり)
(後で調べて分かったことだけど)
作詞はあらきとよひささん。
独特の抒情空間によりヒット曲が山ほどある…
作曲はベテランヒットメーカーの都志見(つしみ)隆さん
30年余り前の発表である。
◇
タイトルに含まれる「破片」という言葉にまず惹かれた。
破片の辞書的な意味は「モノが壊れ、残ったその1部」である。
「はへん」と言うよりこの曲のように「かけら」と呼んだ方が趣が深いか。
https://www.youtube.com/watch?v=S0R4CA1Oqlg
◇
早速練習にかかった。
前川清さんの〝うねり節〟をそのままマネせず、
スナックの隅の初老男性の歌いぶりを思い出して声を出した。
私にとっての難易度は中の上。
挑戦のし甲斐はあったが、途中でめげそうになるほどでもない。
(カラオケ好きにお勧めです)
5年ほど前、カラオケ仲間との席で、この曲を歌ってみた。
普段はたいしてもらえない拍手を、このときはけっこういただいた。
うれしかった。
◇
男女の関係は容易にダメになる。
ダメになったあと、すべてが無に帰するかというと、
そうはいかない。
難しく面白いところだ。
この曲は、壊れることをを覚悟しきった、女性が
その未来破片から発する熱烈なラブソングだ。
色恋の物語性は未来破片から始まる。
この作品の真意の解釈難度は、上の上かもね。
(カラオケ好きにお勧めです)
(以上)
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