次の章に進みたくない

 節目というものが得意ではなくて、人生において節目でしかない””大学卒業””が目前に迫る今を生きるのが本当にくるしい。くるしいと言っても「消えてしまいたい!」「逃げたい!」とかいう後ろ向きなアレではなくて、「このままがいい!」とかいうわがままなアレです。今の生活形態、人間関係があまりにも快適で、ずっとこの状態でいたい。

 地元がかなりのド田舎のため、都心の大学に通い、都会の””話し言葉に訛りのない””、””男尊女卑思想を持ち合わせていない””人々に囲まれて過ごす生活が心地よくて仕方がない。ぬくぬく、あまりにもぬくぬくしている。
 県内の国立大学に行くことが至高とされている地元では””東京のよくわからない大学に行ったよくわからない人””として扱われ、東京にいるときは””田舎者がバレないように程よく擬態する人””として生活をしているため、やや自分の方向性がわからなくなってしまうこともある。が、都会での生活の心地よさに適うものはない。ずっと都会にいたい。

 というのもわたしは低賃金の地元で働きたくなくて、都心でバイトをしている。していた。ついさっき退職してきた。都心でのバイト、コンビニバイト。別のnoteにも書いたかもしれないが、このコンビニバイトはかなり楽しかった。退職したくないあまりに今日はいつもより事務所に居座ってしまった。とてもおもしろいお姉さんがいて、今日あったことや恋人とのアレコレ、最近の話をいつもお互いに話していた。わたしはこの先の人生、誰にこれらを話したらいいのだろうか。警備員、納品のトラックの運転手。彼らにも最後の挨拶をしてきた。運が良く、今日は好きな警備員がいた。くすんだ目の彼は優しく微笑んでくれた。運転手。最近ようやっと挨拶ができるようになった。どこかの訛りのある話し方をする彼は、「どこかで会えたらよろしく頼むわ」と笑ってくれた。彼らには、もう、二度と会えないだろう。お姉さんには、きっと、会える。まだまだ若いし彼女の未来が気になるからわたしから連絡を取るだろう。しかし、その他のクルーさんには、もう、二度と、会えないだろう。特殊店舗なため、””ここに来たらみんなに会える””というのが、そもそもできない。勤務店舗はあと半年で閉まる。半年後にはみんなバラバラだ。わたしだけではない。みんなだ。さみしい。こんなに働きやすい店舗もなかなかない、とみんな口を揃えて言う。あと半年、どうか、みんな楽しんでほしい。こんな言い方をするのもアレだが、あの環境が崩れる前に退職するという選択は、正解かもしれない。綺麗なままで終われる。くるしい…。

 どうがんばっても次の章に進むしかない。次の道は自分で用意した道だ。流れに身を任せていても、その道を歩くことになるのだ。その道を踏まなくなって、どのみち大学は卒業することになる。田舎に帰ることになる。どうしたらいいんだ

 地元が田舎で、””地元に帰る””ということがこれほどまでくるしいことだなんて思っていなかった。体感的には「置いていかないでほしい」という気持ちだが、行動としてはわたしが勝手にみんなから離れて行っている。シールのベタベタを残して、自ら剥がれにいっている。行動と体感が伴っていない。しかしながらみんな、置いていかないでほしい…。
 
 いろんなところで大切な人を作りすぎた。いや、大切な人に出会いすぎた。ありがとう、みんな。出会ってくれて。

 本当に節目というものが得意ではない。最近はそのことばかり考えている。東京で出会った大切な人たちとの思い出を大事に胸に抱き、ショーケースに飾るイメージで、お守りとして保管するしかないのだ。
 ああ、本当に、次の章に進みたくない。

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