#2サンリオとV系

■なぜサンリオとV系なのか

「nとV系」、今回のnは「サンリオ(注釈1)」。サンリオといえばハローキティ(注釈2)を筆頭に世界的に人気がある“クールジャパン”の代表格という一面を維持しつつ国内においてはちびっこたちやサンリオ好きの大人はもちろん、いつの間にかオタクやいわゆる夜職界隈などにも深い親和性を持っているという“グローバル”と“ガラパゴス”の両面をがっちり押さえているという特異的な存在なのではないか。もちろんV系とも今や親和性が高いといえるのではないか。しかも麺側とバンギャル側の双方共だ。しかし今まで、「どこの麺がこのキャラクターが好きと公言していた」とか、「ギャはマイメロやクロミグッズをよく持っている」などでサンリオ×V系のような話は盛り上がることがあるが、そういえばいつからどのようにそうなった?という時系列を追ってやまとめてみたいな線や面的な話は見たことがないような気がするので今回テーマとしてまとめてみることにした。また、後述するが実は私はまさにV系とサンリオの親和性が上がってきた時期に2年ほどサンリオの某店舗でアルバイトをしていたので少し中の人目線の切り口からも語れるかもと思ったのもこのテーマを選んだきっかけであるだた、あくまでも荒巻視点の考察なので、当時はこうだったよ!という情報をどしどしお寄せいただけるとありがたい。サンリオもV系も慣れ親しんでいるそれぞれの人の数だけ物語があると思うので。

■サンリオとV系と私の歴史 90年代編

サンリオは国内においてどのように若者文化やオタクそしてV系と親和性が高いものになっていったのか。その変遷をたどるにおいて、今ミドルサーティーのサンリオ好きのバンギャルである私の小さいころからを振り返っていくことを軸にするとわかりやすいのではないか…ということで1990年代、2000年代、2010年代の三つに区切り、サンリオとV系と私の歴史を見ていく…
まずは私の幼少期、1990年代のサンリオを思い出してみるとメインターゲットはちびっこ~小学生くらいまでと熱狂的なキャラクターのファンのものだった。「バッドばつ丸」と「マロンクリーム」にどはまりした少女・荒巻も、お小遣いを握りしめては地元の文房具店にいきシールやメモ帳、筆記用具を買う日々。また親友がポチャッコ大好きだったのでポチャッコの絵の練習をめちゃくちゃにしていた。
ちなみに、このころのサンリオキャラクター大賞(注釈3)を振り返ってみると…

1991年から1995年まで5年連続で1位がポチャッコ、1996年にはパタパタペッピーと共に熾烈なベスト3争いを繰り広げていたバッドばつ丸が念願の1位を獲得、その翌年には1996年発売の肝いりルーキー・ポムポムプリンが1位をかっさらい衝撃を与える。というような流れだった。当時は、サンリオキャラクター大賞に投票できるのはいちご新聞を買った人のみだったので、リアル読者であるちびっこ票が大きく反映されちびっこに人気の新しめのキャラクターがベスト5を争っていたように感じる。もちろんオタクやV系との関りはほとんど見えてこない。

ところがその後1998年から2001年は5年連続で1位ハローキティ、2位マイメロディ、3位がポムポムプリン、そして2002年は1位、2位は変わらず3位がディアダニエル(キティちゃんのボーイフレンド)とそれまで、変動しがちだったキャラクターの順位が固定化し始める。何が起こったのか…まず思い浮かぶのは、ともちゃんこと華原朋美さんがキティちゃんの大ファンと公言していたことである、このころ持ち物をハローキティにした若者を「キティラー」と呼ぶ言葉も産まれ、“子供”じゃなくてもキティちゃん好きでいいんだという認識が大きく広まったのではないか。また1996年に大人向けの店舗であるViVitixが渋谷に登場したことによってうまくJKやOLのアイコンとしても定着できたのでは…当時いちご新聞を見ながらVivitixのちょっと大人でおしゃれなサンリオグッズにあこがれていたなあ。。。

■サンリオとV系と私の歴史 00年代編

ということで、主に子供に人気のものから子供じゃなくても好きでいいじゃん、だって可愛いんだもんとターゲットが広がっていった90年代のサンリオ。00年代に入ってすぐあることが…そう、V系の麺になぜか人気が高い(荒巻調べ)あの「シナモン(シナモロール)(注釈4)」の誕生。1998年以降5年間のこうちゃく状態だった人気ベスト5(キティ、マイメロ、ポムポムプリン、リトルツインスターズ、ダニエル)一石を投じるかの如く2003年人気ベスト3に食い込む。シナモンといえばデビューティーザーでフーバーオーバーの楽曲に合わせてヘドバンをする姿が印象に残っている人も多いと思うが、恐らく“ロック”とサンリオキャラクターがここまでちゃんとコラボするのはこれが初めてだったのではないか。

さて、そんなこんなで“大人”や“ロック好き”との親和性がじわじわ上がってきたサンリオだがさらに2005年4月 革命がおこる。そう、マイメロディ誕生30周年記念アニメ「おねがい!マイメロディ」の放送開始、そしてその中でマイメロディのライバル役として「クロミ」が登場したことだ。テレビ東京系列にて朝9:30~放送されていたこの作品は深夜33:30放送と実況板で言われるくらいブラックなネタや名言連発で、いい子のサンリオ、いい子のマイメロディの概念を覆していった。このお願いマイメロディのヒットからいわゆるキティラーのようなトレンドに敏感な若者から“オタク”や“ちょっと拗らせた若者”の心をつかみ始めたのでは思う。当時既にバンギャルになっており王道ではなくちょっと変わったものやこじれたものが大大大好きだったハイティーンの荒巻は、興味本位で見たこのアニメにがっちり心を奪われる。特に(恐らく)バッドばつ丸以来のテーマカラー黒である、毒がありながらもキュートでちょっと不憫なクロミちゃんになんかバンギャルっぽい!!!と強いシンパシーを(勝手に)感じ、サンリオでバイトしたい!!!と大崎のサンリオ本社にバイトの面接に行くのであった…
その後、無事首都圏の中でも大きめの某店舗で無事働き始めた荒巻、もちろんサンリオは老若男女国籍を問わず好きになっていいというのは大前提として、接客や陳列をする中で90年代に感じていたちびっこだけのものではもはやない各ターゲットへの的確な突き刺さりを感じた…

具体的には
★ちびっこ→シナモロール、シュガーバニーズ(店頭で感じた圧倒的シュガバニ人気、パステルカラー系)
★大人ファン→ハローキティ、マイメロディ(高価格帯のコラボやあえて80年代のデザインのものも)
★ギャル→チャーミーキティ、リトルツインスターズ(ViVitixでの品ぞろえが豊富。おしゃれな女子の圧倒的チャーミー人気)
★オタク向け?→クロミ(2005年)、ルロロマニック(2007年シナモロールの派生キャラ)
★外国人観光客のお土産→ハローキティの桜や和柄モチーフのものという各方面への手厚さだ。これは荒巻の個人的分析だが、お願いマイメロディがヒットしたとはいえまだまだ“オタク”への突き刺さり方は未知数なところもあったため、オタクやこじれた若者が好きそうなキャラクターは人気キャラクターのサブキャラクターという立ち位置で展開していたのは本当にお見事である。そして実際発売当時クロミの売り上げはそこまでなかったと記憶している。なぜならアルバイトである荒巻は社割を使ってサンリオグッズが買えたのだが、自分のためそして本命バンドであるメガマソのギター涼平さん(注釈5)がクロミちゃん好きを公言していたため、ファンレの便せんや差し入れのグッズをよく購入していた。その際、まずはその商品が欲しいお客様に行き渡るようにということで商品の入替時期ギリギリまで買わなかった。そのため人気商品だと買えないともあるがクロミちゃんはだいたい買えた。お店にはしばし麺コス(雅さんとか)の子やロリータの服の子が来ておりバンギャルの中でもファンレをサンリオキャラクターの便せんで書いている人がそれなりにいた気がする。(そもそもこの頃か、10年代に入ってからか定かではないが、リズリサやロリータ系のメゾンがマイメロやキティコラボなどをしていたためバンギャルだけではなくこのようなファッションを好む人にサンリオは親和性が高かったのかも…)また00年代の後半頃にはサンリオキャラクター好きを公言する麺がちらほら出てきたと記憶している。これはヤンキーのものからオタクのものに移り変わってきたというV系の変遷も影響しているのではないか。そしてV系との親和性を考える上でシナモンの誕生、おねがいマイメロディ放送に続くサードインパクトにして革新的な出来事が2009年起こる。そう

 yoshikittyの誕生

やはりここでも歴史を作るのはYOSHIKIさん。ただ、当初はバンギャルをターゲットにというより、キティさんとヨシキさんの海外人気を合わせればよりサンリオが海外進出できるのでは?という目論見だった。ただ、これが売れに売れたでサンリオキャラクター大賞では店頭展開がほとんどないにも関わらず特に2010年web投票が解禁されてからは海外からの支持と国内の根強いヨシキファンの影響力毎年上位にランクイン。
それが影響をしてかどうかは定かではありませんが、ここからサンリオとV系の公
式の接点はより増えていくことに…。

■サンリオとV系と私の歴史 10年代編

2010年代が始まってからは、サンリオとV系は「親和性が高いかも?」から具体的なコラボを連発しつつより深いつながりができていく。今回ありがたいことに何人かの方からマシュマロにて10年代以降のサンリオのV系にまつわる話をいただいたので、それを以下折り込みながら見ていきたい。10年代からの流れ、大きなところでいうと2012年シナモロールの10周年記念曲として彩冷えるのインテツさんが「シナモンのパレード」を作曲。(ちなみに作詞はシナモロール生みの親・奥村心雪さん、歌はでんぱ組と各方面に抜かりない布陣!)このシナモンのパレードMV(https://youtu.be/y78mfd2DFt4)がちょっとホラーテイストで絶対V系好きな人は刺さると思うので見て欲しい。ちなみにインテツさんは黒うさぎの声優もやっている。またyoshikittyに続け?とばかりに、2011年9月にはPEACE NOWのプロデュースでハローキティ×仙台貨物×、2012年にPEACE NOW 、2013年にミスタードーナツの企画にてハローキティ×ゴールデンボンバーとキティさんがどんどんV系と公式コラボをしていく。

いただいたマシュマロ

そうでしたね。歌広場淳さんはシナモンのデビュー15周年のときに応援団長をし、サンリオキャラクター大賞のたびにシナモンを盛り上げたり、真天地開闢集団ジグザグの命様も2020年の有吉反省会でサンリオ愛(マイメロ様だけでなく、ウィッシュミーメルちゃんっていうのがまた通…)を語っていました。

さらにアニメやソシャゲや2.5次元舞台などマルチ展開を目的に作られたSHOW BY ROCK!内に出てくるV系バンド『シンガンクリムゾンズ』は2015年サンリオキャラクター大賞で2位を獲得。アニメ、ソシャゲ、2.5次元でV系ってオタクの好きなもの全部乗せでは…これを2015年時点でやっているサンリオはすごい。そして同じく2015年頃からV系とサンリオの親和性はさらに増していく。そう、サンリオピューロランドにてライブするV系バンドも増えていくのだった。

■サンリオピューロランドとV系のコラボ

そもそも、なぜピューロランドでV系のライブ?ということだが、これは売り上げが低迷をしていたピューロランドの経営のテコ入れとして2014年に小巻亜矢さんが顧問(その後2016年に女性初の館長、2019年6月には株式会社サンリオエンターテイメント代表取締役社長)になったことが大きい。小巻さんは他社との積極的なコラボや大人にも刺さる可愛さエンターテイメントを掲げ(特に若い女性に向けた)、ピューロの売り上げをV字復活させたことで有名である。そのコラボの中のコンテンツの一つとして、2000年代中盤から続くサンリオとV系の親和性にも目が向けられたのだろう。サンリオ好きのバンギャルとしては一度は行ってみたいピューロライブ…今回ライブレポをいくつかいただいた。本当にありがとうございます。

ちなみに今回調べたところ、DOG inTheパラレルワールドオーケストラ、Kra、D、アンティック-珈琲店-、the Raid、-真天地開闢集団-ジグザグ、GOATBED、GOTCHAROCKA、Blu-BiLLioNなどのバンドがピューロランドでのライブを行っていた。予想していたより多くそして振れ幅があるのバンドの数々に非日常×非日常/カワイイ×カッコいいが産み出すライブ空間はそりゃ最高だろうと改めてサンリオとV系の親和性の高さがうかがえた。


■辻 信太郎会長の言葉

サンリオ前社長・現会長の辻信太朗さんは常々『私は世界中 皆が仲良くするためにこの会社を作った。』とおっしゃっているそうだ。V系だけではなく今やサンリオの商品は何次元だろうと『好きなモノがあるオタク』にとって欠かせないものとなり、サンリオを通してならどんなジャンルのオタク同士も仲良く好きなものについて語れるのかもしれない。深すぎる懐だ。かわいいのに深い、ガラパゴスなのにグローバル。その不思議な魅力にV系は今後も時に手をとり進んでいって欲しい。かわいいし、かっこいいし、面白いから。あと、ルロロマニックは今リバイバルすれば絶対売れると思うので、ぜひ商品展開を増やしてください!




★注釈(Wikipediaなどを参考にしました)★

1)サンリオ
1960年(昭和35年)8月10日、山梨県産の絹製品を販売する同県の外郭団体「山梨シルクセンター」を独立させ、株式会社山梨シルクセンターとして資本金100万円で設立。1973年(昭和48年)、商号を株式会社サンリオに変更。辻信太郎が創業時から一貫して社長を務めていたが、2020年7月1日付で代表権のある会長に退いた。
2)ハローキティハローキティのグッズが初めて販売されたのが1975年、今から48年前!そしてほぼ同期はマイメロディとリトルツインスターズ…。50年近く最前線を走り続けているキャラクター達…見習いたい…。
3)サンリオキャラクター大賞
サンリオキャラクター大賞は1986年からはじまったのだが、当時はいちご新聞の購入者が投票できるというシステムだったため、いちご新聞の愛読者であるちびっこ票が色濃く反映されていたのでは。現在お馴染みのweb投票になったのは2010年から
4)シナモン
2001年9月にキャラクター開発。同年秋頃、『いちご新聞』で行われた新キャラクターの読者投票企画にて選ばれ、グッズデビューが決まった。キャラクターの開発は当時のカフェブームの時代背景を受けた。2002年5月16日からグッズの発売が開始。当時の作品タイトル名はベビーシナモン(baby cinnamon)である。当時「癒し系」として注目を集めていたセガトイズ・ホリプロの「お茶犬」に対抗するキャラクターとされる。
5)涼平
メガマソの涼平さんはマンガ大賞の審査員というくらいマンガやアニメが好きなオタクなので、当時話題だったアニメおねがいマイメロディを通してクロミファンになったと思われる。


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