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写研書体のOTF化というニュースがエモすぎる

久しぶりのnoteなのに、DTP業界以外の方はなんのこっちゃなブログになること不可避。
若干マニアックな話題です。

私はDTP出身のWeb屋だとサイトのプロフィールにも書いているのですが…

すみません!
経歴詐称していました!!

実は電算写植オペレーターが私のこの業界デビューです!!!
(どーでもいいw)

「電算写植」というのは、今のDTPの前進といえばよいでしょうか。
一つひとつの文字のハンコを拾って文章を組む「活版」と現在の主流「DTP」の間にある組版技術です。

現在の書籍やポスターなどの印刷物は、AdobeのIllustratorなどのグラフィックツールや組版ツールのInDesignなど、DTPソフトで作られています。
30年前の印刷物は「電算写植」が主流でした。

今はパソコンで画面を見ながらデザインするのが普通ですが、電算写植はオリジナルの言語で記述し、それを専用の計算機にかけ出力してやっとデザインの仕上がりが見えてくるもの。
(Webサイトのコーディングに少し似てますね)

今考えるとなんと効率の悪い(笑)

確かその専用の計算機も当時何千万だったと聞いています。
一番最初に就職した 株式会社帆風 は、国内でも数少ない電算写植の出力センターの一つでした。
私はそこの組版オペレーターだったんです。
(そういえば出力センターにはMac初号機も置いてたような?)

オリジナル言語で記述したデータを8インチのフロッピーにコピーし、その何千万もする出力機?計算機?にかけて出力してもらいます。
出力にはかなり時間がかかるのですが、出力担当の先輩に嫌われると後回しにされてしまうので気をつかったものです。

昔の印刷物には、莫大な時間やお金がかかっていたんですよね。
(その分、今よりもとても慎重に、そして丁寧に制作していました)

その電算写植で使われていたフォントが、今回話題になった写研書体と呼ばれるものです。

現在目に入るほとんどの印刷物は、OpenTypeという形式のフォント(OTF)が使われています。

ちなみにPCやブラウザ、Officeなどで使われているのはTrueType(TT)という形式のフォント。
(すごくざっくり言うと、ですが…)

写研書体とOTF・TTなどは規格そのものが違うので、現在私たちはMacやWindowsで使うことができません。

しかし今回モリサワと写研がOTFを共同開発するということで、DTPクラスタがザワつき、私のようなアラフィフ元写研ユーザーは大騒ぎしているというわけです。

書体がOTF化されるということは、印刷物などでも使用可能になるということ。

写研書体が一般に見られていたのは、ジュリアナやGOLDが全盛期のバブリーな時代ですよ。

ヤバい。
エモい! エモすぎる!!!

(↑「!」の後に全角スペースを入れるのも組版ルールです)

私が上京した頃。
バブル末期。
ジュリアナには行けなかったけど、新宿LOFTに憧れて夜な夜な出入りしお気に入りのバンドを見つけて追いかけたあの頃。
社員旅行に行ったらほとんどの部屋からT-BOLANのアコースティックアルバムかB'zのIN THE LIFEが聴こえてきてた。
彼氏がいなくて女友達(同僚達)と上野のゲーセンでやたらにゲットしてしまったぬいぐるみを両手に抱え凍えながら終電を待つというむなしいクリスマスに聴いていたのはB'zの名曲、いつかのメリークリスマス。
なんでもないような事が幸せだったと思うロード第n章。


…さて、電算オペの話に戻りましょう。

私たち新人電算オペは、全部でいくつあるかよく分からない書体の形を覚える特訓をしました。

やれと言われたわけではないけど、全部覚えてた先輩をカッコイイと思ったから。

電車の車内吊り広告など目に入る印刷物で使われている書体を当てる。
そんな特訓を日々繰り返していました。

おかげで、絶対フォント感が身につきました(笑)

ちなみに、フォントサイズも当てられるようになったし、ミリ単位でものの長さもバッチリ言い当てられるようになりました。

絶対フォント感、絶対級数感、絶対歯数感。

DTPになってから使用する書体は代わりましたが、基本となっていたのは写研書体なので紐付けて覚えることはできました。
(なぜならモリサワは写研とかつて袂を分かち…ゲフンゲフン)

その特技が講じて現在事務や総務をやられていらっしゃる方がよくご存知のあのサービスに繋がり当時某アワードを受賞しました。

DTP初期はQuarkXPress(QX)が主流。
Adobe社には Page Makerという組版ツールもあったもののQXの使い勝手には叶わず、写真やイラストはAdobe、組版はQXというねじれ国会が長年続きました。

しかしQXは日本語の美しい組版を実現することができず、電算職人組版マニアの私たちにはどうしても受け入れがたい存在だったのです。

しかし1999年、Adobeは私たちを唸らせる恐ろしいツールをリリースしました。
それがAdobe InDesign 1.0。

日本語特有の美しい組版ルールの実現だけでなく、オリジナルで組版ルールを作れるなど組版の幅が広がり、IllustratorやPhotoshopとの連携も当時は便利すぎて、私はその魅力に取り憑かれInDesignを愛する日々へと突入していきました。

当時はAdobe社や大塚商会などのInDesign講習を受講させてもらいまくり、社内に広めたり、帆風で運営していたDTPスクールで教本を作って講師をしたりしていました。

今はWeb屋をやってるけれど、今でもInDesignやりたいなーとたまに思います。
組版が好きなんです。
自分なりの組版ルールを作るのが楽しかったんですよ。
いかに可読性の高い組版を作るか。

「InDesignオペレーターが減っている」という話を聞きます。
そのたびにちょっと心がゆらぎます。
私、戻ろうか?

そこに、写研書体がOTF化というニュース。
キタコレ。

これは私をDTPに戻す陰謀ですか?
DTPに戻れというお告げですか?
いいですよ?
やぶさかじゃあないですよ?

あぁ、石井中ゴシック体のヒゲなし1が恋しい。
本欄明朝が好きでした。
標識はすべてナールに戻ってもいいのでは。
ワラビが作ったワラールも追加しませんか?
「LUNE SEAというバンドにハマってて」と言ったら「え?ゴナBかなC?」と言った先輩のオヤジギャグが今でも忘れられない。

リリースは2024年と、記事は伝えています。
私、50歳か。
12Q以下の文字は読めなくなってるかも。
今でも怪しいのに。

2024年、楽しみです。
その頃私はまだWeb屋をやっているのかしら?

エモさに任せて目次もつけずぐわーっと書いてしまいました。
文章の雑さは後で修正しようと思います。
いや、しないかも。
それがエモ。

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