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書評 「アルジャーノンに花束」~幸せってなに?~


はじめに

読書の習慣をつけようと、友人を誘って読んだ本の感想をちまちまと投稿していくことにしました。

第一回は「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス(著)の書評をしていきたいと思います。

あらすじ

主人公のチャーリー・ゴードンは知的障害を持つ中年男性で、日中はパン屋で雑用をしながら夜は知的障害をもつ成人のための学校で読み書きを学んでいます。
チャーリーには普通の人が当たり前にできるようなことにも大きな困難が伴います。しかし、持ち前の真面目さや優しさから、パン屋の主人であるドナーや、チャーリーのクラスを受け持つ若い女性教師のアリスなど、仲間の支えにより幸せに暮らしています。

そんなある日、チャーリーに大きな転機が訪れます。知能を向上させる研究の被験者に選ばれたのです。賢くなればパン屋のみんなの話がもっとよくわかって、みんなともっと仲良くなれる。そんなふうにチャーリーは喜んで手術を受けます。
手術は見事に成功。手術直後のチャーリーの知能は、同じ手術を受けたネズミのアルジャーノンにテストで負けるようなレベルでしたが、チャーリーの知能は日々驚異的な勢いで向上していき、ついにはいまだかつて無い程の天才へと変貌を遂げます。

手術を終え、パン屋に復帰したチャーリー。賢くなれば、みんなともっと仲良くなれると信じていたチャーリーでしたが、彼を待ち受けていたのは葛藤の連続でした。

パン屋の仲間と白痴の頃に作った楽しい思い出が今の彼の心を踏みにじり、家族同然に接してきた仲間たちから拒絶され、ぼやけていた心の奥の傷が賢くなるにつれて鮮明になりじんじんと痛みだす・・・

自分自身の変化に葛藤し、仲間の変化に葛藤し、解像度を増していく過去に葛藤します。

チャーリーの知能レベルは急成長していきますが、心はゆっくりと成長していきます。

成熟した彼の知能に対して、彼の心はあまりにも未熟です。
そんな未熟な心では、支えきれないほどの重荷が次々と積み上がって行くのです。

手術によって彼の世界は一変し、心の痛みは増していきますが、物語のあるところから痛みがだんだんとぼやけはじめます。というのも、手術の効果は知能を向上させるだけではなくて・・・

みたいな話です。

感想

作中チャーリーはみんなが当たり前にできることが出来ないこと、周りと違うことが原因で散々周りから笑いものになったり虐げられたりします。私自身も少年時代、何をやってもビリで、周りから散々バカにされたり笑いものにされていました。チャーリーと自分が重なり、ページを追うに連れ胸が締め付けられる思いでした。それでもページをめくる手が止まらなくなるほどの魅力がこの作品にはありました。最後にチャーリーが心の拠り所にしたものや、最後に彼が見せる純粋さには、読むたびに心を動かされます。

幸せとは何か、人間の尊厳とは何かを強く問いかける名作だと思います。ぜひ読んでみてください。

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