アドマイヤベガの天皇賞(秋)とドウデュース
僕はサラブレットでアドマイヤベガが一番好きだ。
突出した能力を持っていたわけではない
デビューから引退まで、武豊がすべての手綱を取り
1998年の11月7日にデビューし
1999年11月7日の菊花賞でちょうど1年の競争生活を終え
瞬く間にターフを去ってしまった
サンデーサイレンスと2冠馬ベガの間に生まれた、悲しいくらいに繊細な末脚を使うダービー馬だ
菊花賞で失意の敗戦の後、その秋と翌春を休養に充てて、天皇賞(秋)で戦線に復帰をするはずだった。
アドマイヤベガが休養している間、同期の皐月賞馬テイエムオペラオーが有馬記念で一期上のスペシャルウィークとグラスワンダーの3着に入り、年が明けてからは京都記念、阪神大賞典、天皇賞(春)、宝塚記念、と連勝を重ねた。
マスコミは、テイエムオペラオーには国内にはもう敵がいないと騒いだ。
悔しかった。
僕はテイエムオペラオーを外して、ラスカルスズカとナリタトップロードの馬券を買った。
そんなはずではなかった。
アドマイヤベガが万全なら、こんなことにはなっていないと思った。
アドマイヤベガさえ出走していたら、テイエムオペラオーを必ず差し切れるのに、こんなはずはなかった。
しかし、宝塚記念が終った頃、世間ではアドマイヤベガは過去の馬になってしまっていた。
待ってくれ、同期のダービー馬はまだ負けていない。
僕はテイエムオペラオーが勝つ度にそう思った。
アドマイヤベガは、宝塚記念をスキップし、オールカマーから天皇賞(秋)を目指すことに決まった。
大学1年の僕はアドマイヤベガとテイエムオペラオーとの再戦を熱望した。
サンデーサイレンスとベガの仔が、府中の2000mでテイエムオペラオーに負けるはずはないと思った。
一方で、なぜかテイエムオペラオーとアドマイヤベガの対決が現実的なものだとは思えなかった。自分の中でもアドマイヤベガは過去の馬になってしまったような感覚に陥っていた。そんな日が訪れないような気もしていた。
そして、山本トレセンから函館競馬場に入厩し、調教を始めたところ、アドマイヤベガは繋靭帯炎を発症し、そのまま引退してしまった。
今週末、天皇賞(秋)に武豊のドウデュースが出走する。
凱旋門賞に出走したことで3歳秋を棒に振り、年が明けて京都記念は勝ったものの、ドバイターフを出走直前に跛行で取り消した悲運のダービー馬。
その間にダービーで破ったはずの同期イクイノックスは、GⅠを4連勝して世界最強馬になっていた。
2000年に夢見ていた天皇賞での対決を重ねてしまうのは仕方がない。
夢の中にいるようだけど、やっぱりキタサンブラックにサンデー×トニービンのハーツクライが府中の2000で負けるわけにはいかないのだ。
ドウデュースはまだターフにいる。
眩く、光り輝いている。
アドマイヤベガとは違う。
イクイノックスはダービーの時とは比べものにならないほど強くなり安定した。
しかし、好走は2000m超に集中している。
この秋に最大目標に置いているのは天皇賞ではない。次のジャパンカップだ。
付け入る隙は大きい。
武豊に光を。
渾身のレースが見たい。
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