中露の宣伝に騙されるな

■派手な宣伝
 人民解放軍海軍による軍事演習は、南シナ海・東シナ海で激減。代わりに、アメリカ海軍・イギリス海軍・海上自衛隊などの艦船の航行は継続的に行われている。さらに、インド洋では、インドと合同訓練も定期的に行われている。

 イギリス海軍の空母打撃群がイギリスと日本を往復。今後はイギリス海軍のパトロール挺がインド太平洋で活動する。アメリカ・イギリスを中心とした連合軍の活動が増加すると、人民解放軍海軍の活動は縮小した。

 そんな時に人民解放軍海軍は10月14から17日まで、日本海でロシア海軍と合同軍事演習を実行。さらに18日には、日本の津軽海峡を通過した。合計10隻が津軽海峡通過を確認されており、太平洋に移動することで存在感をアピールした。

■政治用のアピール
 人民解放軍海軍とロシア海軍による、日本海での合同軍事演習は2012年から継続されている。だが、津軽海峡通過を同時に通過するのは今回が初めて。南シナ海・東シナ海の軍事演習を減少させ、中露合同軍事演習と合同の津軽海峡通過を行った。結論から言えば、これは政治用のアピールであり威嚇。

海洋戦略=目的(制海権の獲得)・手段(敵艦隊+敵基地ネットワークの破壊)・方法(艦隊と基地ネットワークの造成)

制海権=艦隊+基地ネットワークの継続利用。

 中露艦隊が津軽海峡を通過し、太平洋に抜けたことは、軍事における戦略を無視している。戦略を成立させるには、中露艦隊が東シナ海・日本海の制海権を獲得していることが前提になる。

 現段階では、中露艦隊は東シナ海・日本海の制海権を獲得していない。平時だから国際海峡を航行できるが、戦時になれば日米艦隊との争奪戦が行われる。中露艦隊による津軽海峡通過は、戦時の争奪戦を無視した合同軍事演習。

 制海権は基地から戦場まで、継続的に往復することで獲得できる。敵艦隊を撃破するか、戦意喪失で制海権を獲得できるのだが、人民解放軍海軍は南シナ海・東シナ海で活動を縮小。代わりに、ロシア海軍との連携で外交上の連合をアピール。さらに連合で津軽海峡を通過することで、人民解放軍海軍の存在感をアピールした。これらのことから、政治用のアピールだと断言できる。

 人民解放軍が政治用のアピールをする理由は、南シナ海・東シナ海で活動を縮小下から。これは存在感の低下であり、物資・資金減少を隠すことが目的。派手にアピールして、強がっているのだ。この手のアピールは、今後中国の基本方針になるだろう。

■戦略の前提が欠落
 ロシア海軍としてもアジアにおける存在感を示す必要が有る。人民解放軍海軍としても、ロシア海軍との連携は軍事的にも都合が良い。だが問題になるのが、東シナ海と日本海の制海権。

 人民解放軍海軍とロシア海軍の連携は理論上正しいのだが、お互いの基地ネットワークが離れているので、軍事力を連結させることが難しい。ロシア海軍は日本海でも活動できるのだが、人民解放軍海軍は東シナ海の制海権を持たないことと、対馬を日本が押させているので、戦時における日本海での活動は不可能。

 これを日本の立場から見れば、自衛隊が対馬・壱岐・北九州の軍事強化を行うと、人民解放軍海軍とロシア海軍の連合を遮断することが可能。自衛隊が保有する地対艦ミサイルを対馬・壱岐・北九州に配備することで、火力の縦深が得られる。これだけでも中露の連携を遮断したことになる。

 次に対馬・北九州で航空自衛隊の戦闘機隊が制空権を獲得できる基地を置けば、中露艦隊の連携は不可能。さらに戦時における制空権・制海権の獲得は日米が有利になり、中露では対応できない世界になる。それだけ、対馬・壱岐・北九州の軍事強化は、日米には有利な世界。同時に、中露の戦略を成立させない土台になる。

 日米は対馬・壱岐・北九州の軍事強化を行える利点が有るが、中露には戦略を成立させる前提が欠落している。それは人民解放軍海軍・空軍が、東シナ海の制空権・制海権を獲得できないことだ。

 さらにロシア海軍・空軍も、日本海を制して対馬海峡を突破する戦力に欠けている。端的に言えば、アジアにおけるロシア海軍は牽制艦隊。牽制艦隊は海で行う持久戦で、自艦隊からは攻撃しないで敵艦隊との決戦を回避する。敵艦隊とは一定の距離を保ち牽制する。海の持久戦とは言え最後には決戦を挑む決戦戦略だから、敵艦隊が油断すれば決戦を行うのが牽制艦隊。

 ロシア海軍の戦力では、日米艦隊に対して決戦を挑むことは不可能。そうなれば、潜水艦を用いた牽制・拘束・示威行動が、海軍活動の中心になるのは明らか。ロシア海軍の水上艦は、潜水艦との組み合わせで、辛うじて牽制艦隊になる程度。このため、海上自衛隊が日本海で活動する限り、中露艦隊は日本海・津軽海峡を通過して太平洋に抜けることは不可能なのだ。

■日本が行うこと
 日本の自衛隊の総兵力は23万人規模。常備軍としての総兵力は、総人口の1%になる。これに人口比率の要素を加えると、自衛隊の総兵力は80万人規模となる。同時に軍縮規模は50万人。

 だが今の自衛隊の総兵力は23万人。つまり自衛隊の総兵力は、軍縮規模以下の戦力。自衛隊の総兵力を軍縮規模に増員するだけでも、中露への軍事・政治両面で恫喝になる。さらに自衛隊が対馬・壱岐・北九州の軍事強化を行えば、中露の戦略を土台から破砕することが可能。

 仮に自衛隊の総兵力を増員すれば、これだけで日本の雇用対策になる。さらに増員すれば、衣食住も増加。基地に食料・衣料品・薬などを供給する業者への支援にもなり、経済対策の一つになる。

 人民解放軍は南シナ海・東シナ海で活動を縮小した。これを隠す目的で、中露で政治的なアピールを行っている。今後も政治用の脅しが増加するのは間違いない。ならば日本は、自衛隊増員と、対馬・壱岐・北九州の軍事強化で挑むべきだ。実行すると、中露の政治用の脅しを破砕することができる。

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