中国を追い詰めるアメリカと中国の悩み

■中国へのメッセージ
 アメリカは12月12日に中距離弾道ミサイルの発射実験を行った。この成功はロシアだけではなく中国にも影響する実験になった。何故なら中国はアメリカ・ロシア間のINFの隙間を悪用した接近阻止戦略でアメリカに対して優位に立っていた。だがトランプ大統領がINFを破棄。続けて中距離弾道ミサイルの開発を再開したから、中国の接近阻止戦略と兵器は無意味になり始めている。

■中国の思惑
 アメリカとロシアが中距離弾道ミサイルを制限するINFを締結した時期は、中国の国力・軍事力はアメリカの脅威にならなかった。だがアメリカとロシアのINFは中国には都合の良い条約だった。アメリカは中距離弾道ミサイルを保有しないのだから、アメリカに挑む中国には悪用すべき条約になる。

 中国は人民解放軍がアメリカ軍に劣ることを認識していた。アメリカから太平洋を奪うには空母艦隊が必要。だが人民解放軍が空母艦隊を保有することは困難だと理解。しかもアメリカ海軍に匹敵する質・量を保有することは不可能に近い。

 だが中距離弾道ミサイルであれば中国でも保有可能。しかもアメリカ軍は条約に拘束されて中距離弾道ミサイルを保有できない。そうなると中国は一方的に中距離弾道ミサイルをアメリカ軍に向けて撃つことができる。

 中国は接近阻止戦略を構想し、これに適合した兵器開発と運用を選択。そいて中国はアメリカに対して優位になるために、中距離弾道ミサイルの開発に邁進する。これは後にグアム・キラーと呼ばれ、さらに弾頭部に対艦ミサイルを搭載する派生型も開発された。

 中国の中距離弾道ミサイルはアメリカのグアムを攻撃可能。さらに対艦ミサイル搭載型中距離弾道ミサイルは、一方的にアメリカ空母艦隊を攻撃可能になった。真に開発が成功すれば、中国はアメリカ海軍の戦力を段階的に減らし、中国本土に接近したアメリカ空母艦隊を中国海軍が撃破する構想だった。これが接近阻止戦略。

■トランプ大統領が接近阻止戦略を破砕する
 だがトランプ大統領はINFに不満だった。ロシアの条約破りを疑ったことと、中国の覇権拡大でアメリカが一方的に不利な立場が許せなかった。トランプ大統領がINFを破棄すると、これがトランプ大統領の決断が中国の長年の努力を破砕した瞬間になった。

 何故ならアメリカ軍はミサイル防衛システムを保有。完全な迎撃は出来ないとしても、中国の弾道ミサイルを迎撃可能。だが今の人民解放軍にはミサイル防衛システムは無い。この段階でアメリカ軍が中距離弾道ミサイルを保有すればどうなるのか?

 人民解放軍とアメリカ軍が中距離弾道ミサイルを撃ち合えば、ミサイル防衛システムを保有するアメリカ軍が有利になる。この現実だから、人民解放軍はアメリカ軍との中距離弾道ミサイルの撃ち合いは敗北を意味することになる。

■新戦略を持てない人民解放軍
 人民解放軍はアメリカ軍が中距離弾道ミサイルを持たないことを前提に接近阻止戦略を構想した。そして構想に適合した兵器開発に邁進したが、INFを破棄したことで接近阻止戦略は無意味になった。ならば人民解放軍は新たな戦略を構築し、新戦略に適合した兵器開発と運用を選ぶ必要に迫られた。だが現段階では人民解放軍には新戦略が見えない。

 アメリカ軍のミサイル防衛システムは不完全だが実験的に配備。そうなると年数経過に合わせてミサイル防衛システムの完成度が上がる。さらに中距離弾道ミサイルを保有すると、アメリカ軍の攻撃火力は確実に上がることになる。

 だが人民解放軍は接近阻止戦略から離れることが出来ないようだ。もしくは有効な新戦略を構想することが出来ないのだ。仮に人民解放軍が太平洋まで進出するなら、空母艦隊を保有する必要が有る。これを実現するには台湾・沖縄を占領して基地化しなければ成功しない。

 人民解放軍が中国本土付近で迎撃するなら、人民解放軍は小型艦艇を多数用意し、海岸部からの対艦ミサイルの大群で迎撃することになる。だが人民解放軍がミサイル防衛システムを持たなければ成立しない。

 大雑把に見ても、人民解放軍が想定するアメリカ軍との決戦場が定まっていない。だから兵器開発も運用も曖昧で接近阻止戦略が漂流している。これが人民解放軍の現実だろう。

■人民解放軍の決断
 人民解放軍が接近阻止戦略を維持するとすれば、中国版ミサイル防衛システムを保有する必要が有る。これには技術開発に資金が必要になり、中国版原子力空母の資金を圧迫する。そうなればアメリカ海軍に対抗する空母艦隊の保有が遅れる。

 原子力空母の建造を優先すればミサイル防衛システムの開発が遅れる。そうなるとアメリカ軍の中距離弾道ミサイルに対抗できない。人民解放軍はジレンマに陥っているが、決断が遅れると敗北が確実になる。それだけ人民解放軍には時間が無いのだ。

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