米中関係は嵐の前

■追い詰められる中国共産党
 イギリスは7月19日から連続して、中国共産党を怒らせることをした。第一はイギリス海軍の空母を太平洋地域に派遣する。次に中国共産党によるウイグル人への人権弾圧を批判。さらに、香港犯罪人を中国共産党に引き渡す条約停止を発表。

 中国共産党はイギリス政府に報復を公言したが、このタイミングアメリカが中国共産党に打撃を加える。ポンペオ国務長官は中国共産党の脅威を感じる国に連合することを呼びかけた。7月22日には、アメリカのヒューストン市の中国総領事館閉鎖を命じた。

中国共産党は米英に報復を公言。さらに環球時報は、7月25日から8月2日まで南シナ海への玄関口である雷州半島付近で大規模な実弾演習を開催することを発表。中国共産党は即座に反発し、米中関係は日々悪化している。

■国際社会のルール
 結論から言えば、領事館閉鎖は間接的な宣戦布告。国際社会は軍隊を用いた開戦を、今の平和の否定と見なす。だから軍隊を用いた開戦は悪の行為になる。これは今の平和を維持したい強国に都合が良いルール。強国は現状維持派だから、現状打破派の弱国が逆らわない様にする策。

 表向きは平和を維持することが目的。裏の意味は、逆らった弱国を潰すことが目的。しかも正義を大義名分に潰せるから都合が良い。国際社会の見た目は話し合いだが、実際はダブル・スタンダード。

建前:理想と言う虚飾
本音:国益の現実

 国際社会は自国からの開戦をしない。その代わり、相手国を怒らせて相手国から開戦させる策を多用する。これは間接的な戦争と呼ばれ、各国は法律論を使い相手国を怒らせるのが基本。

 法律論の見た目は正しく美しい。だが国際社会では、相手国の国家主権を否定する武器になる。何故なら法律は国内限定であり、国外には適用できない。仮に自国の法律を相手国に持ち込めば、それは相手国の国家主権を否定する。

 国家主権は人権の源だから、国家主権の否定は相手国の国民の人権を否定する。これで相手国を怒らせ、相手国から開戦させる。だが相手国が策を知っていれば無力化される。とは言え相手国を怒らせる策は多く、戦前の日本はアメリカからABCD包囲網やハル・ノートで怒って開戦した。当時の日本は国際社会のルールを知らないから怒って開戦。当時の日本人は正々堂々の開戦と認識したが、国際社会では開戦こそが悪になる。だから日本は悪の国にされた。

■領事館閉鎖の意味
 領事館閉鎖は国家主権の否定に該当する。実際に中国共産党は、「領事館閉鎖は国家主権の侵害だ」と反発した。アメリカは領事館がスパイ活動の拠点なので、閉鎖すると発表した。だが国際社会では、大使館・領事館の裏の任務はスパイ活動。アメリカはどの国も実行している事実をネタに、中国共産党を怒らせることを実行した。

 さらにアメリカは、中国共産党員と家族の入国を停止。これは中国共産党が、アメリカ企業・有名人などの買収工作をさせないことが目的になる。中国共産党員と家族のアメリカ資産が凍結されたら、アメリカ企業・有名人を買収などできない。

 アメリカは中国共産党からの資金が、国内に入らないことを実行した。しかも領事館閉鎖を大々的に宣伝することで、中国の国家主権を否定。これは明らかに中国共産党を怒らせることが目的になる。

■人権問題も武器になる
 アメリカ・イギリスは、中国共産党によるウイグル人への人権弾圧を批判。ウイグル人への人権弾圧は事実だが、他の人権弾圧よりも優先している。ウイグルは一帯一路構想の、中国側の出入り口に位置する。つまりウイグルは一帯一路の要で、ウイグルからの貿易を遮断すれば一帯一路全体を機能停止にできる。

 単なる人権問題なら中国共産党は痛くも痒くもない。だがウイグルは一帯一路全体に影響するから、仮にウイグル関係の貿易を中止にできれば、一帯一路を破砕する。アメリカはウイグル人を強制労働させた企業との取引を、ウイグル人権法で禁止した。

 そうなれば法律論で一帯一路を破砕。一帯一路は陸路と海路で貿易が行われるから、中国共産党は海路の防衛は絶対条件になる。だが陸路が使えない一帯一路は価値が低下。中国共産党を怒らせるには十分な破壊力を持つ。

■南シナ海は一帯一路の最終防衛ライン
 中国共産党から見れば、アメリカ・イギリスは国家主権を侵害する悪の国。だが国際社会のルールを知っているなら、人民解放軍を用いた開戦はできない。仮に中国共産党から開戦すれば、中国共産党は悪の組織として裁かれる立場。アメリカ・イギリスは正義を大義名分に手に入れ、反中国共産党の国を連合して戦争するのは明らか。

 これには軍事的な圧力で対抗するしか道は無い。その一つは軍事力を背景にした外交。その一つが軍事演習。軍事演習は敵が居ないだけの戦争で、運用・指揮命令は実戦と同じ。だから各国は練度向上・維持を目的に行う。

 軍事演習の裏の意味は、定期的に行うことで軍事力を背景にした外交を行うことが目的。相手国を定期的に脅すことで、外交交渉を有利にする。もう一つの意味は、開戦に向けた部隊移動を隠すことが目的。

 開戦するなら部隊移動が必要で、これを行えば世界に開戦を教えることになる。だが定期的な軍事演習ならば、開戦準備を隠すことができる。だから定期的な軍事演習だから安心できないのだ。環球時報は、人民解放軍が7月25日から軍事演習をすると伝えた。明らかに南シナ海付近の演習だから、開戦に向けた部隊移動と見るべきだ。

■これから急変する
 米中関係は日々悪化している。双方が報復合戦を行い、さらにイギリスまで参加した。領事館閉鎖に至れば危機的な状況。これで大使館閉鎖になれば、次は直接的な戦争の予告になる。それだけ領事館閉鎖は後戻りができない危険な策。

 南シナ海・東シナ海付近で軍事演習が連続するなら、明らかに戦争準備。次に物資が移動・集積されるなら、一年以内に開戦する兆候。中国共産党が怒って突然開戦しても、アメリカは半年ほど防衛してから反攻作戦を行うだろう。

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