米中宥和と未来

■成長し対立から融和へ
 中国共産党は建国してから、アメリカへの対抗心を消していない。中国共産党は世界の頂点になることを求め、常にアメリカに挑戦している。だが、戦後のアメリカ大統領の多くが、中国共産党の挑戦を軽視した。

 戦後の中国経済・軍事力は乏しく、アメリカに挑戦することが無謀。むしろアメリカは、中国の人口の多さから、有望な市場と見なしていた。アメリカはグローバル・スタンダードと称した、中身はアメリカン・スタンダードを世界に強制。これで中国は、富を手に入れることになる。

 中国共産党は人件費の安さを武器に、世界各地から積極的に工場を受け入れた。同じ品質ならば、人件費が安い方が良い。安さを優先する市場向けなら、中国で生産することは利益になった。

 21世紀になると、中国は“世界の工場”と呼ばれていた。同時に、中国共産党は富を獲得。潤沢な資金で、人民解放軍の近代化と覇権拡大を実行。さらに世界各地の政財界に金をバラ撒き、親中派の増加に成功。

 人民解放軍の急速な近代化と覇権拡大は、南シナ海・東シナ海でアメリカ軍と対立を生む。トランプ前大統領の時に、ようやくアメリカは、中国共産党の挑戦に対応するようになった。台湾軍への武器販売が行なわれ、中国共産党との対立が先鋭化した。

米中首脳オンライン会談、バイデン氏「衝突回避に責任」。
https://www.epochtimes.jp/p/2021/11/81964.html

 だがバイデン大統領になると、対立関係から段階的に宥和政策に移行している。中国共産党は、チベット・ウイグル・香港などで人権弾圧を行った。これで北京オリンピックをボイコットするのではなく、曖昧な言葉で誤魔化している。

 トランプ前大統領時代に作られた対中国包囲網の一つとして、各国の海軍が日本付近に集まった。イギリス空母打撃群が日本に到着した時が対立のピークで、その後は、バイデン大統領による宥和政策が進行している。

■戦争の原因
 戦争は何故発生する?3000年の戦争史の答えは、「怨念は戦争の卵」。怨念は価値観の違いから生まれ、価値観は経験から生まれる。各国で自然環境に対応して生きる経験が異なるので、価値観が異なるのは普通。しかも人間は、誰もが「自分は正しい」と主張する。何故なら自分を否定すれば、自殺か奴隷として生きることになる。

戦争になる考え方:自分は正しくてお前が間違っている。
戦争にならない考え方:自分が間違っていて貴方が正しい。

 「自分は正しくてお前が間違っている」と主張するから戦争になる。ならば、「自分が間違っていて貴方が正しい」と言えば戦争にはならない。だが人間の多くは、「自分は正しい」と主張する。誰もが自分は正しいと主張するのだから、正義と怨念の卵が常に生まれている。だから人類は戦争を止められない。

 中国共産党は、中国と共産党の価値観でアメリカに対して怨念を持つ。これは中国が世界の頂点になる理想を持つが、現実ではアメリカが世界の頂点。中国共産党は、この現実が気に入らない。そこで中国共産党は、アメリカに対して挑戦している。

 これは、「中国共産党が正しくて、アメリカ(世界)が間違っている」考え方。こうなれば戦争回避は不可能。しかも中国共産党は、潤沢な資金で人民解放軍の近代化を進めた。これで南シナ海・東シナ海の軍事的なバランスが崩れている。

 戦争の社会構造的原因の一つは、“国力と覇権の不均衡。イラクのフセイン大統領がクエート侵攻を行ったのは、クエートの最小限の軍事力が原因の一つ。世界秩序の根幹は、経済・イデオロギー・文化・宗教ではない。世界秩序は、軍事力を背景にした「Balance of Military Power」。金儲け・宗教布教・イデオロギーの拡大は、背景に軍事力の担保が必要になる。

国家戦略=外交×軍事

 国際社会の基本は、軍事を背景にした外交。だから各国は、軍事力を見せ付けて外交を行っている。実際に、イギリス海軍・アメリカ海軍が軍事力を見せ付けて、人民解放軍海軍の活動を、南シナ海・東シナ海から縮小させている。これにより、中国共産党はアメリカとの交渉を行うようになった。

■トランプ前大統領の資産を食い潰すバイデン大統領
 21世紀になると、中国経済は急成長。30年で中国経済は急成長し、世界の政財界に対して影響力を持つのは事実。だが急成長したことで、中国国内のインフラ整備・法整備は対応していなかった。

 中国のインフラは急成長に対応できず、電力不足に何度も陥っている。これで生産低下が発生し、世界の工場から転落しかねない。しかも中国共産党の政財界への浸透で、中国を危険視する国が増加。オーストラリアの様に貿易で対立したことで、中国は石炭輸入で苦しんでいる。

 オーストラリアからの石炭輸入が減少しただけで、中国は電力不足になった。さらに中国大手企業の倒産危機が発生し、中国経済全体が危険視されている。この状況で中国共産党は苦しい立場なのだが、外交で優位に進めるよりも、中国との対立回避を選んだ。

 11月15日に米中首脳オンライン会談が行なわれたが、その前から交渉が進められていたはず。交渉には交渉材料が必要だが、外交において次の二つは絶対に軽視してはならない。

1:寛容と忍耐をもってしては人間の敵意は決して消えない。
2:報酬と経済援助を与えても敵対関係は好転しない。

 この結果、交渉材料は覇権となる。さらに相手が譲歩しても、自国が国益を失わない交渉材料に限定される。だがバイデン大統領は、劣勢の中国に対して譲歩している動きが感じられる。

 最近の中国は、食糧不足・電力不足などで生産力低下。しかも人民解放軍の覇権は、南シナ海・東シナ海から縮小している。台湾への軍事的圧力は、11月1日から19日まで発生していない。これは物資不足の証であり、仮に物資が有るなら、毎週台湾の防空識別圏に侵入する。さらに人民解放軍海軍に物資が有るなら、継続的に南シナ海・東シナ海で活動させている。

 軍事行動の縮小は、軍事を背景にした外交に影響する。歴史を見ると、寛容・忍耐・援助では悪意を消した例は無い。だがバイデン大統領は、好条件を持ちながら中国共産党に対して譲歩している様だ。

■罠か売国
 現段階では、バイデン大統領が中国共産党に仕掛けた罠か、売国方針なのかは不明。中国共産党がバイデン大統領の譲歩を勘違いして、台湾侵攻を行う可能性が有る。この場合は罠になり、台湾と中国との戦争で利益を得るのはアメリカになる。

 バイデン政権は中国の台湾侵攻で軍事支援はするが、アメリカ軍の戦闘参加を明言していない。台湾が中国と戦争するなら、台湾がアメリカから兵器を買うので、資金はアメリカに流れる。そうなれば、アメリカには好都合。さらに、台湾を使った代理戦争になるので、アメリカには有益な戦争になる。さらに中国がインドに侵攻した場合も同じ。

 中国のインド侵攻が台湾と違うのは、人民解放軍がインド側の国境地帯を占領しても、アメリカは黙認する可能性が有ること。台湾を中国が占領すると、アメリカの海上交通路を中国に遮断される。だからアメリカは、中国が台湾を占領する動きを見せれば、必ずアメリカ軍を投入する。

 仮に裏取引が行なわれたとすれば、中国のインド侵攻が行なわれる。バイデン大統領は北京オリンピックのボイコットを臭わせているが、明言していない。これは中国に対する譲歩の証であり、現段階で交渉が進められていることを示す。ならば罠ではなく、バイデン政権による、中国に対する売国ではないのか。

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