ウクライナ侵攻で霧散した一帯一路と日本の援軍になった習近平主席

■ウクライナ侵攻の影で
 2月24日にロシアはウクライナに侵攻した。当初はロシアが短期で勝利すると予測されたが、5月の段階でウクライナが優勢になり始めている。欧米はロシアに対して経済制裁を行い、ウクライナから輸出されるはずの小麦が流通しなくなる。これで世界経済の悪化と食糧危機が危惧されている。

 中国はロシアとの関係から、ロシアに対して距離を保つ発言をしている。欧米に同調してロシアへの経済制裁をすることは無く、さらにロシアへの軍事支援をしていない。それどころか中国は、武漢ウイルスのゼロコロナ政策で苦しい立場が続いている。

■潰された一帯一路
 結論から言えば、ロシアによるウクライナ侵攻は中国の一帯一路を潰した。習近平主席が一帯一路構想を進めた張本人だから、ウクライナ侵攻は習近平主席を政権から追放する可能性が高い。何故なら、一帯一路の陸路はロシアのモスクワを中継する。欧米はロシアに対して経済制裁を行ったことで、一帯一路は間接的に潰された。

 習近平主席が推し進めた一帯一路は陸路と海路で構成されており、陸路はロシアを中継してヨーロッパまで繋がれている。だがロシアがウクライナに侵攻したことで、一帯一路の陸路は迂回路が無くなってしまう。

 一帯一路は経済圏だが安定した流通が命。もしも紛争で流通が遮断されたら経済圏としての価値が低下する。これは中国の面子と同じ意味だから、人民解放軍を投入して経済圏の安定化を行う必要が有る。

 実際にアメリカはグローバル・スタンダードを維持するために、アメリカ軍を世界各地に投入している。グローバル・スタンダードの中身はアメリカン・スタンダードだが、看板を変えて世界に押し付けた。しかもアメリカのための経済圏だから、海上交通路を遮断する動きを見せると素早くアメリカ軍を投入している。

 海洋国家アメリカのグローバル・スタンダードは海上交通路。だから陸路に関しては覇権の外に置かれている。実際に北朝鮮が騒いでも距離を保つのは、アメリカの国益である海上交通路を遮断しないからだ。それに対してイラク・イランに対しては、海上交通路を遮断する動きを見せると素早くアメリカ軍を投入している。

 ロシアのウクライナ侵攻は中国の一帯一路を遮断する。だが中国は人民解放軍を投入して陸路を守る動きを見せていない。これは致命的で、中国が一帯一路の陸路を守らないなら、経済圏として不適格。だがアメリカは外国から嫌われてもアメリカ軍を投入しているので、グローバル・スタンダードは結果的に信頼された経済圏になった。この違いは大きい。

■国内回帰を選ばせた習近平主席
 アメリカがロシアに対して経済制裁を行ったことで、ロシアは直接的な貿易ができない。ウクライナ経由で貿易できないだけではなく、バルト三国(エストニア・ラトビア・リトアニア)を中継した貿易もできない。さらにフィンランド・スウェーデンを中継した貿易もできない。

 アメリカが行ったロシアへの経済制裁は表向き。実際は中国の一帯一路を見事に粉砕している。アメリカは意図的に行ったかは不明だが、結果的にロシアと中国の弱体化を行った。表向きはロシア経済の打撃が報じられているが、面子を考慮すると習近平主席への打撃が大きいのは間違いない。

 中国は武漢ウイルスのゼロコロナ政策を進めているが、上海のロックダウンなどで経済活動が悪化。実際に貿易に悪影響を与えており、日本の家電量販店などで一部の家電製品が品薄になっている。これでは一帯一路の経済圏は維持できず、皮肉なことに中国が率先して一帯一路潰しをしている。

 習近平主席が進めた一帯一路は失敗。さらに武漢ウイルス対策で進めているゼロコロナ政策は中国経済を悪化させた。中国の政策で生産が不安定になると、中国は世界の工場としての価値が無くなった。実際に、日本の企業は国内回帰する動きが出ている。

製造業の国内回帰始まる、建材受注増加、人件費安が魅力-東製鉄

 中国は人件費の安さが魅力だった。だが今では、日本の方が人件費は安くなった。そんな時に中国経済の混乱は製造業には迷惑。経営者が親中派だとしても会社の利益を優先するから、損得勘定で国内回帰を選んだ。そうなれば中国経済を支える外国企業は減少し、残されたのは実力の無い中国企業だけになる。

 日本の製造業が国内回帰すると雇用が安定する。しかも日本で安定して生産できるなら、生産が不安定な中国製は魅力を失うのは間違いない。何故なら、欲しい時に買えないなら日本製を買う。これが消費者だから、習近平主席は結果的に日本のために中国を破壊する援軍になるだろう。

■中国の派閥争い
 以前から中国の派閥争いは囁かれているが、一帯一路は習近平主席が進めたので反習近平主席派には好材料になった。ロシアのウクライナ侵攻で陸路は遮断され、上海のロックダウンなどで貿易は停滞。これで外国企業が中国から撤退するので、習近平主席潰しを進めるのは明らか。

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 習近平主席も馬鹿ではなくクーデター潰しをするはず。さらに、武漢ウイルスのゼロコロナ政策が政治闘争に悪用されているなら長期化することになる。これは中国の政治・経済は魑魅魍魎が跋扈する世界であり、製造業が安定して生産できる世界ではない。

 だが中国は外国企業の国内回帰を止める動きが鈍く、経済の空洞化を危険視していない。理由は不明だが、習近平主席は外国との貿易を理解していない可能性が有る。習近平主席は外国を乗っ取る手法を知っていても、国内からの逃亡を止めることを知らないのだ。

 今の状況は反習近平主席派に有利な流れが続いている。自国経済を悪化させても習近平主席を追い出すのであれば、中国の政治は日本人が理解できない世界で動いている。そうなれば中国の派閥争いはこれから激化する。

 何故なら、ロシアのウクライナ侵攻で一帯一路の失敗は明らか。さらに外国企業の脱出で中国経済は悪化。これだけ致命的な結果が出ているのだから、反習近平派が国民を焚き付けてクーデターを実行する可能性が有る。国民は習近平の政策で苦しんでいるなら、反習近平派は正義の使者としての地位が得られている。ならば、この条件を活かすはずだ。

■中国への幻想を捨てよ
 日本の政財界に親中派が居るのは事実。北海道の土地を中国人が買い漁り、太陽光発電システムに上海電力が参加しているのも事実。経済に国境は無いが、中国の強引な手法で嫌中が増えたのも事実。

 皮肉なことに、習近平主席が進めた一帯一路は嫌中を増やす原因になった。一帯一路に組み込まれた国は土地を乗っ取られることが明らかになり民族意識を高めてしまった。これは世界各地で見られる傾向で、外国人に土地を買われると経済的な利益よりも反発が生まれている。

 一帯一路は中国がチベット・東トルキスタンで行っている悪行を世界に広め、アメリカにウイグル人権法を成立させた。さらに中国経済の混乱が生まれ外国企業は中国から逃げ出している。皮肉なことに、習近平主席が進めたことは全て中国を破壊する結果になった。

 仮に中国でクーデターが発生すれば、一帯一路関係の中国企業の立場は危険。反習近平派が習近平派の企業潰しを行えば、日本国内で活動している企業も潰される可能性が高い。そうなる前に、中国企業との関係を断ち切る方が良い。結果論になるが、日本の製造業が国内回帰するのだから、習近平主席は日本の援軍になったことは間違いない。

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