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【ぶんぶくちゃいな】「メッシ欠場は海外組織の陰謀」論が傷つけた香港ビジネス環境

すでに日本のメディアも多く取り上げて報道しているが、2月4日に香港大球場で行われたサッカー親善試合の「インテル・マイアミCF(以下、「インテル・マイアミ」)対香港選抜チーム」が大変な騒ぎに発展している。

きっかけになったのは、今サッカー界で人気絶頂のリオネル・メッシ選手とルイス・スアレス選手がベンチに座ったまま出場しなかったことだ。試合は4対1でインテル・マイアミ側の勝利で終わったが、超人気選手のメッシのプレーを見ることができなかった観客たちから不満の声が上がった。

試合はメッシ、スアレスなど人気の4選手の姿を中心に描いたポスターを使って宣伝され、チケットは最低価格でも880香港ドル(約1万7000円)、最高額は4880香港ドル(約9万2000円)だったが、なんと発売後約1時間後には完売という人気ぶり。その宣伝攻勢から見て、チケット購入者が「メッシのプレーを生で観ることができる!」という期待を抱いて入場したのはしかたないことだった。

だからこそ、試合終了後には激しいブーイングが起こり、元イングランド代表のこれまた超人気選手で、現在はインテル・マイアミの代表を務めるデビッド・ベッカム氏の試合後の挨拶も不満の声にかき消され、慌てた会場側は「ベッカム氏にリスペクトを!」と注意を喚起する放送を流したものの、人々の不満は収まらなかった。

さらにそれに火を注いだのは、チームの次の訪問先である日本で、メッシとスアレスの両選手がコートに立ってプレーしたことだった。香港の試合後にインテル・マイアミの監督は「ケガのために2人の欠場を決めた」という「苦渋の判断」を強調したが、そのわずか3日後の日本での「活躍ぶり」に香港の試合で失望した人たちの中から「本当にケガだったのか?」という声が噴き出し、文字通り「炎上」したのである。

このあたりの経緯については、筆者も2月10日にダイヤモンド・オンラインのコラム枠にて「『カネ返せ!』メッシの試合欠場に中国人が大激怒、でも香港人は薄ら笑いのワケ」という記事を公開したので、まずはこちらを参照していただきたい。

だが、その後事態は不可思議な方向に向かい始めた。中国政府系メディアがファンの怒りを代弁してみせたかと思うと、なんと「メッシの欠場は、海外のアンチ中国勢力による陰謀」「アンチ中国勢力が香港に混乱をもたらそうとしたため」と論じ始めたのである。

さすがにこの論理に唖然となったサッカーファンは少なくない。「メッシ欠場」がこれほど簡単に政治事件に結び付けられてしまう状況、そしてそれが許されてしまう香港の現状と今後について、ここでまとめてみたい。


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