【ぶんぶくちゃいな】中国「奇文」鑑賞:米国に対峙するため、エンタメ界を整頓せよ!

8月の香港では満身創痍と言ってもいいほどめちゃくちゃな出来事が立て続けに起きたが、中国でもここ1ヶ月あまり、天と地がひっくり返るほどの騒ぎが起きている。

7月には、義務教育期間中の子どもたちの「重圧」軽減を口実に、学外教育、つまり塾や長期休み中の集中学外授業、英語学校などが一斉に禁止になった。中には一度に日本円で数十万円もの学費を取っていた塾や課程もあり、機関側の紹介で金融機関にローンを組んで支払いをしていたケースも含めて、親たちが返金を求めて押しかけた結果、バタバタと倒産、破産、夜逃げが始まった。中にはここ20年間の教育ブームをバックにじっくりと力を蓄えてきた学外教育機関もあるが、一挙にたちいかなくなり、一夜にして一つの業種が完全に消えていきつつある。

また、学校に対しても宿題の軽減、及び小学校1、2年生への筆記試験禁止、成績ごとのクラス分け禁止が通達され、これまですっかり浸透していた教育手段がたち行かなくなっている。そして、まだまだ消え去らないコロナ下で新学期(中国は9月新学年開始)が始まった。今後は子どもたちの予習復習を親たちがサポート(しかし、宿題代行は禁止)するしかなくなり、親の教育レベルによって子どもたちの学習機会が大きく分かれるのではないか、という不安の声が上がっている。

その一方で、昨年11月のIT大手「アリババ」グループ系列の金融サービス会社「マー蟻集団 Ant Group」(「マー」は「虫」に「馬」。以下、アントグループ)の上場中止後に巻き起こった、「ITプラットホーム整頓」の動きもずっと続いている。6月にニューヨークで上場したばかりの「滴滴出行 Didi」(以下、滴滴)がそれからわずか2日後に「データセキュリティ」に触れたとして処分対象となり、その後ネット関連企業の海外上場に対する条件が一挙に引き上げられた。

さらに「独占禁止」の名のもとでの規制も始まり、音楽配信において「騰訊 Tencent」(以下、テンセント)が「独占配信契約」を結んだとして処罰された。そしてテンセントは独占契約を放棄すると宣言、さらにはライバルの「網易 NetEase」(以下、網易)はサイト上の「独占配信」の文字を削除。実際にはテンセントが「独占配信」放棄を宣言したからといって、その他のサービス提供者が同様の配信契約を結べるかどうかは別問題であり、特に網易のこの動きから容易に想像がつくのは、問題のポイントはその実態よりも、「独占」という文字にあるらしいということである。

中国らしいといえば「らしい」が、さまざまな商業習慣や業界手段を無視、あるいは破壊するかのような形で当局が介入し始めたのはいったいなぜなのか? 

アントグループの上場中止を引き起こすきっかけとなった馬雲(ジャック・マー)の発言以降、「企業の強大化に対する警鐘」などとも言われてきたが、それにしてもあまりにも激しい「業界破り」が続く。それこそ、校外学習業界お取り潰しは、多くの人たちが破産、負債、そして失業、さらにはキャリアの中断という憂き目に直面するほどの大事件である。

「共産党が〇〇を恐れている」といったような表現ではもう理由がつかない――と多くの人たちが考え始めていたときに、突然浮上したのが、「共同富裕」という政治スローガンだった。

●上場企業が続々協力表明

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