【読んでみましたアジア本】インド進出を狙う日本企業にNHK特派員が「インド愛」で応える一冊/広瀬公巳・著『インドが変える世界地図 モディの衝撃』(文春新書)

先日、香港でのジャーナリズムフェローシップに参加したメンバーと、フェローシップ解散後初めてオンラインで集まった。中国のメンバーが出張で参加できなかったことを除くと、約2時間8人のメンバーと、フェローシップ先で知り合ったジャーナリスト留学生の9人で、近況、特に各国のコロナ事情について話をした。

コロナはさまざまな面で多くのマイナス影響を与え、またその苦しみを振りまいたけれども、唯一といって良い利点をもたらしてくれた。それがネットミーティングツールの普及だ。3年前の2ヶ月のフェローシップの後、香港で別れたきり再集合のチャンスを失っていた我われに、意外にも短期間のうちに「オンラインリユニオン」のチャンスをもたらせてくれたのだから。

わずか3年間の間に、わたしとインド人フェロー以外みんなその「身分」を変えていた。働いていたメディアを離れ、インディペンデント映画の世界に足を踏み出した人、思い切って自分の生まれ育った土地を去り、新たな学問研究に乗り出した人、一度は隣国で国際機関での研修を体験して帰国したものの、コロナ感染事情のせいで求職活動が行えず故郷に閉じ込められたままの人、新たなメディアを組織してその代表に座り、忙しい日々を過ごしている人、ロックダウンされた街で一旦メディアを離れて次のチャンスを狙っている人…留学生はすでに学生の身分を離れたものの、安定した教職を求めて海外に目を向けているとのこと。

うち1人はコロナ感染からの回復期にあり、また身近な家族をコロナで亡くしたメンバーも数人。そんな中、最も精力的に取材活動を続けているインド人フェローはなんと、まだワクチン接種のチャンスがないとのことで、「マスクととにかく身辺に注意することでここまできた」と笑っていた。

まだまだ世界は生々しい現実の中にある。そんなわたしも、最近になって自分がコロナの影響を大きな受けていることに気づいたのだけれども。

中国と香港ばかり見てきたわたしが、もうちょっと視野を広げてアジアについて知識を増やそうと思い始めたのは、このフェローシップがきっかけだった。わたしには前後関係がわからず、ついていけない話題も多いのだけれども、やはり見知った人たち、それも現地でそうした問題に関心を寄せる人物の口から話を聞くと、いつまでも「知らぬ存ぜぬ」ではいられないと感じる。特にこの日本においても、コロナのように世界の動きを無視して生きていけないのだから。

何から手をつければいいのかわからない。ならば、まずは巷にあふれる書籍からアジアを知る。そこから一歩一歩日本の外で起きていること、そして日本でも語られる海外のニュースを理解するための土台にしていくべきだ。そして、わたしには尋ねたければ尋ねる相手がいる。先日の「オンラインリユニオン」はそれを再確認させてくれるものだった。

そして集まったメンバーの顔を見ながら、選んだのが今回ご紹介する『インドが変える世界地図 モディの衝撃』である。わたしにとってインドのモディ首相は、インド人フェローがずっと追い続けている、オンライン世論作りの「巧手」というイメージが強いからだ。

●インドとかけまして企業進出と解く…


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