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【ぶんぶくちゃいな】『時代革命』周冠威監督インタビュー「香港に言論弾圧があってはならないんです」

8月13日から東京・ユーロスペースで、2019年の香港デモを捉えたドキュメンタリー映画『時代革命』の公開が始まった。この週末には、さらに大阪などでも上映が始まり、今後次々に各地での上映が予定されている(上映スケジュールなど詳細は公式ウェブサイトで)。

この映画はそのタイトルもさることながら(詳細は以下インタビューを参照のこと)、昨年のカンヌ映画祭で覆面によるプレミア上映が行われたことでも大きな話題になった。衝撃的なデモ隊と警察の衝突のシーン、そしてニュース映像だけではわからないデモの詳細やデモを支えた人たちの多岐にわたる協力がつぶさに捉えられているのも注目された。

また、映画の制作にかかわった人たちはその身に及ぶ危険を考慮してすべてクレジットに名前を出さず、唯一その名前を公開した周冠威・監督はその巨大な圧力を背負いつつ、現在も香港で暮らす。

筆者は3月の香港滞在時に監督を尋ねる予定だったが、前代未聞のコロナ大感染に巻き込まれ、断念。帰国後の日本公開決定の情報を耳にして、同監督へのインタビューを敢行した。zoom越しであったが、時間をかけてかなり突っ込んだ質問をぶつけ、監督の丁寧な言葉を記録できた。

これまでにもこれを参考に短い記事を外部で公開してきたが、ここにそのインタビュー全文を掲載する。『時代革命』をすでに観た人、あるいはこれから観る人、さらにはもう一度観ようとする人にとっても、参考になる情報がたくさん詰まっているはずだ。

なお、文中の[]は筆者による補足であり、さらに日本人にはわかりにくい事例などには[*]によって注釈をつけた。


◎『時代革命』周冠威監督インタビュー:「香港に言論弾圧があってはならないんです」

周冠威監督(Photos by Cheng Wai Hok 写真提供:太秦 株式会社)

周冠威:1979年香港生まれ。香港の芸術専門カレッジである香港演芸学院(The Hong Kong Academy for Performing Arts)で映画を専攻、卒業後多くの商業映画製作現場に関わる。2005年以降母校でも教鞭を取りつつ、ショートフィルムなどの撮影を続けた。2014年の雨傘運動後、2015年に製作されたオムニバス映画『十年』にも『焼身自殺者』のショートフィルムで参加。2020年には自ら監督、脚本を担当した劇映画『幻愛』で「中華圏のアカデミー賞」と呼ばれる台湾金馬奨で最優秀脚本化賞を受賞した。『時代革命』は2021年の製作となる。

――BBC放送のインタビューで、この映画のタイトルを「時代革命」とした際、ご友人に反対されたとおっしゃっていましたね。2019年のデモで叫ばれた「光復香港 時代革命」というスローガンから、なぜ「光復香港」ではなく「時代革命」を選んだのでしょう? 作品では「以前の香港を懐かしむ」ムードを強く感じたのですが、なぜ「香港」という言葉にこだわらず、「時代革命」としたのか?

周:「光復香港 時代革命」はあのデモで最も多く叫ばれ、またその期間も最も長かった。つまり最も代表的なスローガンですね。この作品で表現したかったのは、一つの出来事ではなく全体でした。だから、このスローガンこそタイトルにぴったりだと考えました。

なぜ「光復香港」にしなかったかというと、それだと映画自体のイメージが「いかに香港を光復する(取り戻す)か」になってしまうから。デモではそう叫ばれたものの、まだ香港は「光復」されていない。なのにここで「光復香港」を使うと、観る人を誤解させてしまう。だから「時代革命」という四つの文字こそがぴったりだと感じたんです。

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