【ぶんぶくちゃいな】「中国の特色ある」2021年香港立法会選挙のカラクリ

12月19日が投票日の香港立法会議員選挙の立候補受付がこの12日に締め切られた。

今回の選挙についてはこれまで何度かこのメルマガでも触れてきたが、念のためここでおさらいしておく。

この選挙は本来なら昨年9月に行われるはずだったが、林鄭行政長官が新型コロナウイルスの感染拡大回避を理由に延期を宣言。そして延期後のこの1年あまりの間に、中央政府お膝元の全国人民代表大会常務委員会は「愛国者による香港治政」を口実に選挙制度そのものが大きく改定され、これまでの議席70が90に拡大された。

さらに、議席の内訳はこれまで二つの選出母体に加えて、新たに「選挙委員会」の枠が加えられた。まず、これまで議席を二分してきた「功能組」と呼ばれる産業界や業態分野(スポーツ・文化や教育、法律など商業外の業態)からそれぞれ選出されてきた議員の議席数は35から30へ、また「直接選挙組」つまり住民がその居住地区ごとに投票で選出する議席もこれまでの35から20へとそれぞれ大きく減らされた。そして、新制度における残りの40議席は新たに導入された「選挙委員会」と呼ばれる組織のメンバー1500人のみが投票で選出することになった。

この選挙委員会という新組織については、《【ぶんぶくちゃいな】香港新選挙制度スタート、その深い罠と暗い闇》で詳しくまとめたのでそちらを参照いただきたい。

ここで一旦、有権者の数と選出議員枠を比べてみる。選挙委員会組は有権者1500に対して議席40、功能組は有権者約21万9000人に対して議席30、そして直接選挙組は有権者約447万3000人に対して議席20。一票の不公平さに驚くばかりだ。

それだけではない。選挙委員会組では各選挙委員メンバーには同組の40議員選出のために一人40票を投ずることが義務付けられている。つまり、1回の立法会議員選挙において、人によっては「直接選挙1票+所属業界団体功能組1票+選挙委員会40票=合計最大42票」を投ずることができるというシステムとなっている。もちろん、一方で400万人以上の有権者が投ずることができるのは、居住区別の直接選挙における1票のみ。このような選挙制度の改革が「愛国者による治政」の美名のもとで行われたことに、少なからずの香港市民が怒りを覚えている。

こうした人々の怒りが選挙の立候補にも大きな影響を与えている。

●ここ数年の香港選挙事情を振り返る


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