【ぶんぶくちゃいな】「一つの中国」がトランプのコマになったとき

「『一つの中国』政策についてはよく理解している。だが、なんらかの合意に達しないまま、中国に指図されるいわれはない」

先週初め、アメリカの次期大統領、ドナルド・トランプ氏のこの言葉が大きく報道された。彼は通貨や貿易など、アメリカが中国との関係において勝ち取るべきものもないまま不利な状況におかれたまま、「一つの中国」政策を呑む理由はない、と述べた。

米フォックステレビのインタビューで、大統領選挙勝利後に台湾の蔡英文総統からの祝賀の電話を受けたことを問われた際の言葉だ。この電話でのやりとりは、1979年の中国との国交樹立時に台湾との外交関係を解消して以来初めて、まだ就任前とは言え大統領職につながる人物が台湾政府トップと言葉を交わしたとして大ニュースになった。

日本では冒頭の発言に対して、ビジネスマンが多く集まるニュースサイト「NewsPicks」を見ると、「中国にがつーんと言ってやった。痛快」といった反応が多く並んだ。経済に関わる人たちが単純に喜び、そしてこの発言を歓迎している。だったら、もっと安倍首相にそう言わせろよ、と思うが、安倍首相は国内に向けては威勢の良いことを言っていても、実際にはここ数年、ずっと中国との関係修復に必死だ。もちろん、そんなことが言えるわけがない…という矛盾に、ビジネスマン諸氏は気づいていないのだろうか?

今はまだトランプ氏の大統領就任前だから笑っていられるが、実際にこの姿勢を就任後も貫かれたら、中国との関係修復に追われ続けてきた日本は、再びアメリカと中国の間に挟まれてしまうことになるだろう。そうなれば日本の経済界はまた当面の標的にされてしまうはずだが(政治家は日本で安穏としていられるからね)、本当にそれでいいのか。

日本社会がどれほど自分たちが置かれた、世界政治の位置に気づいていないのか、わたしはただただ呆れている。

●「領土問題」は中国最大最優先の関心事

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