【ぶんぶくちゃいな】誤差かデマか、国勢調査狂騒曲

今週は香港、中国ともに大きく注目される話題が続いた。

まず、香港で社会が久しぶり(?)に湧いたのが12日の真夜中に流れた、香港警察のナンバー2で「次期警視総監」と目されていた蔡展鵬・香港警務処国家安全処長が、「無認可のマッサージ店でサービスを受けていたところを拘束され、休職処分に」というニュース。

すでに1カ月前の出来事だったが、それまでまったく外界に漏れておらず、同処長が事件後1カ月あまり休職処分を受けていることを、英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」(SCMP)がすっぱ抜いた。

周知のとおり、昨年施行された香港国家安全維持法(以下、国家安全法)のおかげで多くの人たちが口を開けなくなっている。今年始めには昨年予定されていた立法会選挙に「勝つ」ための候補者選びの予備選挙に参画した民主派関係者55人が同法の「政権転覆共謀罪」に問われて逮捕され、公判を待っているところでもある。さらに今年になって制定された新たな選挙制度に失望し、わざわざ有権者登録を抹消する人も出ているほどだ。

国家安全法の名のもとに鼻息が荒くなった政府や警察関係者のメンツをぶっつぶしたという意味で、市民にとってこれほど楽しい事件は久しぶりだ。

なぜまた、国家安全処の処長が無認可マッサージ店に? 警察はデモ参加者を起訴した裁判で、「我われは犯罪者とそうではない人間を見分けるべく訓練されている」と豪語していたではないか? なのに認可を受けている店かどうかも見分けられないのか?

香港では美容マッサージ、あるいは手や足裏などのマッサージサービスでは認可を取る必要はない。認可が義務付けられているのは「異性による全身マッサージサービス」であり、そのこともまた人びとの憶測をかきたてている。

さらにマッサージ店の取り締まりを担当したのは「O記」と呼ばれる警察の重大犯罪取締担当チームで、なぜこともあろうに国家安全処長がそんなところに出入りしていたのか? 捜査官も驚いただろう、無認可マッサージ店でまさか自分たちのボスを逮捕するなんて…

本来の香港人なら大好きな話題だが、国家安全法下の香港では市民は笑いを押し殺しながら、メディアが流す警察発表を溜飲を下げている。

もう一つ、巷の注目を集めているのが、今週から始まった、2019年6月に「逃亡犯条例」改訂草案に反対する市民デモの直後に、衆人環視の場で政府への抗議を表明しつつ亡くなった「レインコートマン」の検死法廷である。

本名を梁凌傑というこの男性、黄色いレインコートの背中に政府と警察への抗議の言葉を書きつけ、改装中のショッピングモールの足場によじ登って市民への謝罪を求める垂れ幕を掲げて注目を浴びたが、警察の説得中に足場から落ちて死亡。その死が自殺だったのか、それとも手を伸ばした消防士を振り切ろうとして落ちたのか。デモ関連の最初の死者として象徴的な存在にされた彼の最期の姿が、この検死法廷で少しずつ警察官や消防士らの証言によって明らかにされ、それと同時に人びとにデモ初期の自分の思いを呼び起こしている。

●四川大地震から13年目の成都で起きた大事件

一方、中国でも負けず劣らずの大事件が起きている。

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