【ぶんぶくちゃいな】コロナ3年、中国人の想いを代弁した流行語

2023年が開け、とうとう中国は3年ぶりに1月8日から新型コロナ対策の指針を「乙類乙管」へと引き下げる。

「乙類乙管」とは中国の疾病対応のレベルを意味する。新型コロナはこれまでずっと、最も厳格な対応を義務付けた「甲類伝染病」に次ぐ「乙類伝染病」とされてきたが、今回の指針変更で対応措置をトップレベルの「甲管理」から「乙管理」へとグレードダウンすることになった。

甲類伝染病には現時点でコレラやチフスが指定されており、強制力を持つ隔離や検査の実施、伝染事情の密接な監督が強制力を持って行われる、これに対して、乙類にはHIVやマラリア、狂犬病があるが、新型コロナウイルスは同じ乙類でもトップレベルの「甲管(理)」が採られてきた。

それが「乙類乙管」へのダウングレードにより、これまで強制的に行われてきた感染者(陽性者・無症状患者)の隔離、濃厚接触者の判定や追跡、感染リスク地区の区画化措置も停止されることになった。これに加え、海外との往来についてもこれまで半閉鎖状態だった空港を開放し、中国入国時には利用する交通機関の搭乗前48時間以内のPCR検査で陰性が証明されている場合、通常のビザと旅行用の身分証明書(パスポート)での入国が可能とされ、中国到着後の検査や隔離は行われない。同様に中国居住者の海外出国もまた通常のシュッっ国手続きに加え、受け入れ国が定めた入国条件に基づいていれば可能になる。

但し、「乙類乙管」は2022年のクリスマスに発表されたものの、実施は1月8日とされているため、正月早々に海外から中国に帰国しようとした留学生が強制隔離を求められて抵抗、警察に連行されるという事態も起きた。さすがに気の早い行動には非難の声もあるものの、ネットではこの学生は亡くなった家族の葬儀に出席するために帰国したという情報も流れており、これまでコロナ措置に阻まれてどれほどの人たちが家族の最期に立ち会えなかったことか…と自身や周囲を振り返って同情する声もある。この間、実際に筆者の友人でも少なくとも二人が急逝した家族の葬儀に出席できなかった。

ほぼまるまる3年に渡る対コロナ厳戒態勢は、中国で暮らしていたり、家族を持つ人たち一人ひとりの心に忘れられない記憶や失望、絶望、そして後悔の念(それは必ずしも当人の過失ではないものの)を刻みつけた。「乙類乙管」が発表されるとほぼ同時に、どっとSNSに流れ出た個人的な記憶や体験、思い出は読む者の気持ちをひたすら重くさせるものばかりだった。

さすがに年の初めにそれらをご紹介するのはあまりに辛いので、今回は年末に流れた「新型コロナ感染で生まれた言葉集」から代表的なものを選び、人々がそれを流行語化させた心情をお伝えする意味で解説しておきたい。

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