【ぶんぶくちゃいな】超人気ドラマ「人民的名義」に透ける「中央と地方」の権力格差

今年3月中旬から湖南省の衛星テレビ局が全国放送しているドラマ「人民的名義」(人民の名義)が爆発的な人気を集めている。

「人民の名義」なんてもったいぶったタイトルだなぁ、と思ったら、なんと汚職取り締まりをテーマにしたドラマだという。

汚職取り締まりは2013年に国家主席に就任した習近平が声高に進めている方針で、今でも毎日、中央政府から地方政府(地方自治体に相当)関係者の罷免や職務凍結のニュースが流れる。3月初めの全国人民代表大会開催時には毎日1ダースほどの名前の任免が報告されていた。もちろん、それが必ず汚職や失職のせいではないのだが、それにしてもばっさばっさと官僚が入れ替わることに、爽快感すら覚える。

とはいえ、「政治がクリーンになった」というような声は聞いたことがない。実際には汚職ですげ替えられた後任がまた汚職容疑で下野…といったことが繰り返されているからだろう、「クリーンになった」というよりもただひたすらばっさばっさと「斬られても斬られてもまた出て来る」というのが正直な感想だ。

つい先週も保険監督管理委員会という、中国の内閣にあたる国務院直属の保険行政トップが汚職容疑で取り調べを受けていることが明らかになった。国を挙げての汚職取り締まりが始まってからもうまるまる4、5年が経つというのに、いまだにこんな超大物が「釣られ」るのだから、最初は喜んでいた庶民もいちいち反応しなくなってしまった。

そんな中、そうした汚職取り締まりをテーマにしたドラマが大受けしているのである。国策ドラマなのか、それとも何か別の意図を持って作られたものなのだろうか…

調べてみると、4月15日までに55話のうち30話がすでに放送されており、YouTubeにあがっていた15話まで視聴してみた。これは確かになかなかうまくできているドラマだなぁ、というのがわたしの感想である。

●2週間で動画視聴回数10億

ここから先は

5,942字
この記事のみ ¥ 300
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

このアカウントは、完全フリーランスのライターが運営しています。もし記事が少しでも参考になった、あるいは気に入っていただけたら、下の「サポートをする」から少しだけでもサポートをいただけますと励みになります。サポートはできなくてもSNSでシェアしていただけると嬉しいです。