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【ぶんぶくちゃいな】アイドル話だけで終わらないMIRRORのもっと先のお話

先月末に『香港のアイドル「MIRROR」が、スゴい熱気で迎えられているワケ』という記事を書いたら、あちこちからいつもと違う反響が返ってきてびっくりしている。

まだご覧になっていない方はリンク先を読めばおわかりいただけると思うが、内容はいつものとおり「昨今の香港」事情のご紹介なのだが、いつもわたしの記事を読んでくださる以外の、もっと若い方などからも反響があって驚いた。実は記事で取り上げた、日本の人気テレビドラマ『おっさんずラブ』の香港リメイク版『大叔的愛』が昨年末に日本でもオンデマンドで配信されており、偶然それを観た、あるいはもともと『おっさんずラブ』ファンの人たちがすでに主演メンバーや「MIRROR」に注目し始めていたらしい。この記事をきっかけにあちこちで「興味ある」「気になっている」「ファンです」「観たい」という声が噴き出して、すぐに情報交換が始まったことに驚いた。

さすがネット時代、やっぱり情報が回るのが早いですね…加えて、記事を見つけた香港人ファンからもツイッター経由でわたし宛てに、MIRRORや個別メンバーを「どんなに好きか」「なぜ好きか」をつらつら書き連ねたツイートもたくさん届き、ぶつけられる熱い思いにタジタジしている。ゴメンナサイね、わたし、彼らの存在があなたたちを幸せにしているのはわかっているし、微笑ましいと思っているけど、熱い思いを交わし合えるほどでは…ああ、冷や汗が…。

「いやー、すごい熱気にあてられたよ」と、日本在住香港人の友人Lとの会食の時につぶやいたら、彼女はさっき外したマスクをくるんだケースをそっと見せてくれた。そこには『大叔的愛』に主演した盧瀚霆(アンソン・ロー)さんの顔が…なんとこんな近くにファンがいた…。

彼女は数年前から日本でビジネスを展開しているが、昨年は実家の都合で1年間をまるまる香港で過ごした。「1年ちょっと前に日本から香港に戻ったときはMIRRORなんて名前も知らなかったのよね。香港でのホテル隔離中にテレビをつけたらメンバーが出演するドラマが放送されていて、面白かったし、隔離中で暇だったからネットでさかのぼって全部観たの。で、ハマった」

そこからLは、3年前に99人もの候補者からMIRRORメンバー12人が選抜されたスター誕生番組(99回放送!)も全部最初から観直したという。そして、前述の記事でご紹介したメンバーの「調教」番組や『大叔的愛』を追いかけ、新曲発表のときに街角に出現するアンソンさんやメンバーたちの大型広告をバックにした記念写真を撮りに出かけたり、さらにはアンソンさんの誕生日にファンクラブがお金を出し合ってレンタルしたフェリーの大型ネオンサインとも一緒に写真に収まり、文字通り「狂乱」の一員になった。そう、彼女ははっきりとブームは「狂乱」だと言った。

だって、考えてもみてよ。6月4日(注:天安門事件記念日)やその他のデモの思い出に結びつく日に、黒いTシャツを着たり、買い物ついでにいつもの公園に寄ったりすると、警察が寄ってくる。ちょっとした言葉にも気をつけなくちゃいけない。うっかりと知らない人の前で自分が感じる不快感を口にすることもできないのよ。誰が聞いているかわからないし、どんな落とし穴にはまるだろうとみんなが毎日びくびくして過ごしている。そんなときに、わぁーっと思いっきり声を上げて大騒ぎができ、知らない人とも笑顔や言葉を交わせて、思いっきりグループで発散できる。そんなの、むちゃくちゃ久しぶり。ハマらないほうが無理よ。みんな、楽しみたくてしょうがないんだもの。

Lは自分が1年間、MIRROR旋風にハマりまくった生活を「もうクレージーよ」と大笑いしながらも、一方で企業経営者らしく、そんな自分たちの姿、そして社会のムードを理性的に分析していた。

●ブームがもたらした、かつての「一体感」

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