民主派圧勝で市民に楽観論? ちょっと待った!:《香港 民主派圧勝の選挙後初の週末 抗議活動続くも衝突なし》(NHKニュース)

民主派が圧勝した区議会議員選挙のあと初めての週末を迎えた香港では、抗議活動は続いているものの衝突は起きていません。市民のあいだでは最終的には政府側が譲歩し要求を受け入れると考える人の割合が増えていることが世論調査で明らかになりました。

昨日NHKがこのニュースを流しているのを見て、「ハテ、こんな民意調査出てたっけ?」と気になったので調べてみました。確かにありました、香港民意研究所。ただ、上記のようにまとめているNHKの報道は、ちょっと勇み足ですね。

実際の調査報告はこちら:主要訴求全線下滑 矛頭仍然指向政府

NHKの報道では、「民主派が圧勝した区議会議員選挙のあと」「市民のあいだでは最終的には政府側が譲歩し要求を受け入れると考える人の割合が増えている」と続いているので、意図しているのかどうかはわかりませんが、「民主派の圧勝によって政府が譲歩すると考える市民が増えた」という内容に読めます。

しかし、実際にこの調査が行われたのは21−26日であり、区議会議員選挙投票日は24日。つまり、調査日は投票日をまたいでいて、この結果はイコール民主派の圧勝を受けた結果の「楽観論」とはいえないということです。現実には投票当日には民主派、親中派ともにかなり緊張感を漂せており、民主派にも楽観論はありませんでした。

もちろん、24日の圧勝を見てから調査に回答した人は圧勝の熱気に当てられて「政府は折れる」と答えたかもしれませんが、必ずしもすべての回答が「圧勝を受けた楽観論」ではないことは歴然としています。逆に、投票結果を見る前に回答した人たちにとっては「政府はいつかは折れるはず」とその信念を述べたともいえます。この調査の結果を単純に選挙結果と結びつけるのは誤読でしょう。

報道において客観的事実のチェックは基本中の基本のはずで、民意調査の実施日をはしょって伝えたのは現場のうっかりなのか、それとも日本メディアの期待論なのか。現地からの報道に頼るしかない日本人視聴者に向けて、根拠のない期待論を混ぜ込むのはやめていただきたいですね。

あと、「選挙後初の週末、衝突なし」は昨日の時点ではそのとおりでしたが、本日はすでに催涙弾が発射されています。念のため。


このアカウントは、完全フリーランスのライターが運営しています。もし記事が少しでも参考になった、あるいは気に入っていただけたら、下の「サポートをする」から少しだけでもサポートをいただけますと励みになります。サポートはできなくてもSNSでシェアしていただけると嬉しいです。