【ぶんぶくちゃいな】ポスト・ジャック・マー:アリババ新時代を取り巻くシーンとは

9月10日、世界にその名を知らしめた「阿里巴巴 Alibaba」(以下、アリババ)グループのジャック・マー(馬雲)が、昨年のこの日宣言したとおり、同グループの総帥である会長職の座を自ら後継者に指名した張勇(ダニエル・チャン)に譲った。

この日は(諸説あるものの)マー自身の誕生日とされており、またアリババ自体が旗揚げした日でもあり、また今年は旗揚げから20週年に当たる日でもあった。加えて、中国においてはこの日はジャック・マーが尊敬して止まない職業である「教師」に感謝を示す日「教師節」に指定されている。中国ではすでに、日本で言えば、バブル時代の松下幸之助レベルの「経営の神様」と崇められるようになったマーにとって最高の、しかし大変わかりやすい記念日となった。

ついでに調べてみたら、中国の伝統的な暦占いである「通勝」によると、今年9月10日は結婚、同盟、結納、出立や祈祷、祭祀、引っ越し、入居に良い日らしく、これまたぴったりの日だった。すでに香港の市民権を取得しているマーが、香港で信じられている通勝をそこまで参照したかどうかは不明だけれども。

ただ、彼はそれだけの祝福を受けて「引退」するにふさわしい人であることは間違いない。

中国がまだ世界貿易機関(WTO)へのメンバー国入りを目指していたときに、中国企業と外国企業を結びつけるサービスを思いつき、立ち上げたのがアリババだった。とにかく思いついたアイディアを一歩先へと進ませることを考える人が好きな人だったのだということはその経歴を見ればよく分かる。

そうした彼の経歴ややってきた事業については、過去なんどかこの「ぶんぶくちゃいな」でも触れてきたし、「アリババ会長引退」記事で散々書かれているので、そちらをご覧頂きたい。また、ジャック・マーという人物の「経営哲学」についてはさまざまな日本語本が出ているが、個人的には彼が一経営者に過ぎなかった時代から付き合ってきたジャーナリストがまとめた本の翻訳書『Alibaba アリババの野望 世界最大級の「ITの巨人」ジャック・マーの見る未来』が肉薄していて面白かった(なお、同書の「読んでみました中国本」コラムはこちら)。

彼が10日に社員らを前に話した「最後のスピーチ」もその日のうちに翻訳が出ているので、ご興味あればぜひどうぞ。

とにかく、中国で信用事業である電子マーケティングを成功させ、それを今や中国において欠かせないビジネス手段にまで確立したという功績は無視できない。そしてやっと日本でも熱気が高まり始めた第三者ペイメントを、まだクレジットカードが普及していなかった15年も前に始め、それを根付かせ、今では消費だけではなく、中国での生活にはなくてはならないものに育て上げたことは、中国に疎い人も知っておくべきだと思う。

それから、それに、さらに…を言い続けるときりがないので、その点はネットを検索すれば出てくる彼の偉人伝に任せるとして、今回は「ジャック・マー以降のアリババ」について中国メディアに流れた分析を拾ってみたい。

●弱点はズバリ、「巨大であること」

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