【ぶんぶくちゃいな】「国」と「族」、中国人が恐れる二大ワード
「ネットで罵られたり、嫌われたりしませんか? 『お前は日本人じゃない、この国から出て行け』と言われるのは怖くありませんか?」
んー、と考えた。
こうした質問を聞くのはたぶん3回目だ。前回は、米「ニューヨーク・タイムズ」(NYT)記者を招いて行われた学内講演会だった。昨年アメリカで大きく注目されたセクハラ騒ぎ告発キャンペーン(いわゆる「MeToo」)をテーマにした講演で、長年フードライターとしてキャリアを積んできた記者たちが、レストラン主が雇用している女性シェフやウェイトレスに執拗にセクハラを繰り返していたことを記事にし、米国の優れた報道に贈られるピュリッツアー賞を受賞した経験を語り終えたときだった。
「フードライターなのに、レストラン業界のセクハラ事件を告発すれば業界に嫌われるとは思いませんでしたか?」
英語での質問を客席で聞いていて、わたしは質問者が中国から来た学生だなとすぐに気がついた。
その前にもやはり「告発」に絡んだ授業で一通り講義が終わった後に、同じ質問が出たのだ。「調査報道や告発って嫌がられませんか?」その授業に出席していたのはほぼ99%までが中国からの留学生で、その瞬間、わたしは質問の意図するところを理解した。
それが一般向けの公開講座や授業なら、メディアに関わったことのない人たちからの好奇心として、そんな質問がでてくるのは自然なことだろう。だが、授業と講演会はどちらもジャーナリズムを学ぶ学生たちを対象にしたもので、質問者つまりジャーナリストを目指す人たちがまだその第一歩も踏み出していないのにまず、「取材すると嫌われる」ことを忌避、いや恐れている様子が伝わってきてなんともいえない気分になった。
「現場の不正を告発するのが記者の本分ですから」たしかNYT記者の答えはそんな意味だったと記憶している。告発することで受ける反発を恐れていたら、ジャーナリストは何もできないじゃないの、そう彼女の言葉は言っていた。だが、一方で彼女はきっと質問の本意を図りかねていたのではないか。
●「ジャーナリスト」を目指す人が恐れていること
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