《江川紹子:政治の役割を蔑ろにして脅威を煽り、政治空白を作る安倍政権の罪》(Business Journal)

昨日ツイッターで、江川紹子さんのBusiness Journalの記事が流れてきた。

【麻生氏が武装難民の射殺に言及】政治の役割を蔑ろにして脅威を煽り、政治空白を作る安倍政権の罪(江川紹子の「事件ウォッチ」)

そこに「難民条約」についてちょっと触れていられるのだが、わたしも最初に麻生副総理の発言を聞いた時、「難民条約締結国である日本」でこれはダメだろうとツイートした。きちんと難民条約に照らしたら、マジ、ダメな発言ですよ、これ?

武装難民かもしれない。警察で対応できるか、自衛隊の防衛出動か、射殺ですか。真剣に考えたほうがいい。

日経新聞が伝えた時事通信の記事なんか、これを「北朝鮮情勢の緊迫化を受け、難民対応について議論を喚起した発言」などと結んでいる

はぁ? こんな暴論を「議論を喚起した」などと形容するのは「社会の木鐸」を公言するマスメディアとしては、相当腰が引けているとしかいいようがない。

難民条約にははっきりこう書かれている。

第33条 追放及び送還の禁止:1 締約国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない。(文科省サイト「難民の地位に関する条約」より)

もちろん、「射殺してはならない」とは書かれていないが、この条文を読めば「射殺」なんて論外だということはまともな見識を持つ人間には明らかだろう。この辺からきちんとこの発言を追求したマスメディアはあるのだろうか? 検索したところ、文中で「難民条約締結国であること」に「触れている」程度の記事しか見当たらない。

「Japan In-depth」には、「武器傾向そのものは違法ではない」という視点からこの発言がどれだけ難民保護の面から見て、非常識かということが述べられている(http://japan-indepth.jp/?p=36307 )。

そもそも、難民の武器は日本に向けられるわけではない。蛍光する必要があるとすれば、それは北朝鮮の官憲に抵抗するためであり、船内治安維持のためである。日本人に向けるためではない。

きちんと論ずれば問題点があぶり出されるのに、それがきちんとまとまった記事が流れてこないのはなぜ? もしかしたら、こういう発言が出てくるのも「議論を喚起した」ことになる、と思っているのだろうか?

大臣相手だから忖度してるの?
難民だから、日本の読者や視聴者には直接関係ないから、ほかのこと優先?

こういうきちんとした根拠や論拠があって、批判すべきところを批判せずにあーだこーだと政治家の足ばっかり引っ張り続けているマスメディアの報道は、これも「麻生叩き」の記事で終わっている。

麻生叩きより大事なメディアの役割は、読者が知らないかもしれない社会のルールや論拠をきちんと読者に伝えることだ。今やルールというと「マイルール」みたいに手垢がついた言葉になっているが、難民条約は文字に書かれた世界共通のルールなのだ。それをきちんと取り上げて、そこから問題点を論ずる姿勢をメディアは忘れていて、感情論に訴えることしか出来ていない気がする。

メディアは自分たちが世論のイニシアチブを取ることにやっきになりすぎて、こういう大事な事件の論点をきちんと提供し、文字通り社会の意識を喚起させる報道を忘れているんじゃないだろうか? 

このアカウントは、完全フリーランスのライターが運営しています。もし記事が少しでも参考になった、あるいは気に入っていただけたら、下の「サポートをする」から少しだけでもサポートをいただけますと励みになります。サポートはできなくてもSNSでシェアしていただけると嬉しいです。