【ぶんぶくちゃいな】「不夜城香港を取り戻せ」 政府が仕掛ける次なる手とは

東アジアはまさに台風シーズンに入った。日本でもこのところ毎日のように台風情報が流れているが、同様に日本列島より南に位置する台湾域(「域」という意味では沖縄、とくに石垣あたりも含まれる)、中国東部海岸線及び香港・マカオでも続けざまに台風の影響を受けている。

今週は先月末に発生した台風11号「海葵」(「ハイクイ」と読む)が、沖縄の先島諸島沖を通過し、そのまま台湾南部に上陸して同島を横切り、東シナ海を突っ切るように横断、対岸の福建省南部と広東省北部の境界あたりで中国大陸に上陸した。その後、広東省内を横ばいするように進み、福建省南部から広東省の沿岸部や内陸部に大水害をもたらした。

「海葵」は風力が強く、かなり大型の台風だったため、実際の上陸地点よりもずっと離れた香港でも、9月6日夜に香港天文台(気象台に相当)が「自宅待機」を意味する台風警戒シグナル8を発令。香港は先週末にも特大台風9号「蘇拉」(「サオラ」)が接近し、最高レベルの台風シグナル10が発令されたばかり。まだその記憶もさめやらないうちにシグナル9が発令された6日の夕刻には、スーパーのパンやインスタント食品、及び野菜の棚はほぼ空っぽになった。

その夜、SNSには「マンションが揺れた」「雨風が酷くてペットが大騒ぎした」「怖くてあまり眠れなかった」という声が相次いだ。だが、翌7日午前にはシグナルは解除され、小学校以下の子どもたちを除いて、大人たちは職場に戻り、市内は通常の生活に戻った……はずだった。

ところが、である。7日夜、香港はなんの前触れもなく、突然の大型豪雨に見舞われたのだ。

ある友人はこの日夕方、「台風も去ったことだし、仕事が終わったら映画でも観よう」と思っていたが、面倒くさくなってそのまま車で郊外の自宅に帰ったという。「今考えると、ラッキーだった。もしあのまま映画館で過ごしていたら、濁流状態になった道路を家まで車を運転して帰ることはできなかったはず」とつぶやいていた。

香港はそんな、たった2、3時間のうちに降った豪雨で道は見渡す限り濁流になり、タクシーが流され、バスもまた濁流の中で身動きが取れなくなるという事態に陥った。雨は7日夜ずっと降り続き、あちこちで道路の陥没なども引き起こされた。その様子を伝えるニュース映像はこちら。

政府は夜11時すぎに黒色豪雨警報を出したが、その時にはすでにあちこちで大水害が起きており、各地の地下道路は浸水、多くの建物の地下駐車場も水浸しどころか貯水池のようになっていた。

香港政府と気象台(香港の場合は「天文台」)は翌8日、それを「海葵」がもたらした「後遺症」だったと認めた。そして、7日夕刻から降り続いた激しい雨の量は600ミリを超え、年間平均雨量の4分の1に匹敵するほどで、さらには一時は1884年に始まった雨量統計でも過去最大の158.1ミリが降ったと報告した。

だが、香港には先に述べた台風シグナル警報制度のほか、黄、赤、黒と色分けしてその深刻度を市民に警告する降水警報の制度も運用されてきた。だが、7日は事前に警告は発されず、大雨が降り出してから足早に黃から赤、そして午後11時すぎになって初めて最高レベルの黒色警報が発されたことに、激しい怒りの声が巻き起こった。


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