【ぶんぶくちゃいな】「歌う王族」香港政府を魅了する中東王子

3月末から4月初めの週にかけて、香港と中国はそれぞれ、前者がイースター連休(3月29日から4月1日)、後者は清明節連休(4月4日から6日)と連休続き。メディアもそれに合わせて休日配信体制に入ってしまい、ニュースチェックの感覚がちょっと狂ってしまった。

おかげで大変なニュースをうっかり見落としてしまっていた。

そのニュースとは、イースター休み明けの4月2日、香港株式取引所では3月末までに2023年度の決算報告を提出しなかった上場企業60社以上の取引を停止した(https://x.gd/BKhTB )というもの。毎年、この時期には必ず出てくる話題ではあるものの、今年の60社あまりという数はコロナ期の数年間を超える、近年としてはかなり大きな数字となった。

報道によると、そのほとんどが中国企業、さらにかなりの割合を不動産企業が占めている。そこには現在、債務不履行が続く、中国最大の民間不動産会社「碧桂園」(カントリーガーデン)や融信中国、上置、力高集団など中国著名企業が含まれている。

また、記事でも触れられているが、これまでの不動産危機において注目されていたものの、具体的な債務悪化が伝えられていなかった、大手不動産「万科」が創設31年来初めての無配当を発表したことでこのところ株価が急落している。

中国当局は経済不振の打開策として、過去数年間にわたって続けてきた厳しい住宅購入制約を次々と撤廃し、不動産消費を奨励することで景気が上向くのを期待している。だが、実際には不動産業界を洗う荒波はいまだ落ち着く方向には向かっておらず、不動産市場の萎縮と業界の混迷は続いている。

この記事ではこの60社あまりにも及ぶ取引停止が香港株式市場、ひいては香港の金融市場にどのような影響をもたらすのかには一切触れていない。「明るい予想」が立たない以上、それを論評することによって「社会に混乱を与えた」として施行されたばかりの「国家安全条例」(または香港基本法23条条例)に問われるのを警戒しているのかもしれない。

予想はかくも難しい。もちろん、予想に基づく論評も難しくなってしまった。だから、数字に表れる「事実」のみを淡々と伝えること、それがしばしの香港メディアの主要な仕事になってしまったようだ。今後の経済予測はどうなっていうのだろうか?

だが、そんな香港でこの1週間、次々と流れたスクープが社会の話題をさらっている。


ここから先は

5,407字
この記事のみ ¥ 500

このアカウントは、完全フリーランスのライターが運営しています。もし記事が少しでも参考になった、あるいは気に入っていただけたら、下の「サポートをする」から少しだけでもサポートをいただけますと励みになります。サポートはできなくてもSNSでシェアしていただけると嬉しいです。