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【ぶんぶくちゃいな】それはプロパガンダか芸術か? 全面否定された「社会主義核心価値観」

「富強」「民主」「文明」「和諧」「自由」「平等」「公正」「法治」「愛国」「敬業」「誠信」「友善」……あなたが暮らす街、あるいはよく出かける通りの一部の壁がある日突然、真っ白に塗り潰され、そこに整然とこのような24字の大きな漢字が並べられていたら、あなたはどうするだろうか。

我われ日本人は漢字を理解できるからたぶん、まずはまじまじと一つ一つに目を走らせ、それらの文字が持つ意味を吟味し、そしてそれらの単語が一緒にそこに並べられていることの意義を求めつつ、いったいこれはなんのキャンペーンなんだろうかと一瞬でも立ち止まって考えるのではないだろうか。

でも、漢字が読めない国の人たちはそれを目にした時、どう感じるのだろう? ……イギリス・ロンドン東部地区にあるブリックレーン(Brick Lane)にこつ然とこれらの文字が出現したというニュースを目にした時、筆者はいの一番にそう考えた。

ブリックレーンはもともとストリートカルチャーの通りとして知られ、それほど広くない道の両側に立っている壁はさまざまなアーティスト(専門的には「ライター」と呼ばれるそうだ)が所狭しと描いたグラフィティアートで埋め尽くされ、若者が弾き語りをし、また飲食店や雑貨店が立ち並んでいるという。

いつもならカラフルなグラフィティアートを眺めながら多くの人たちがそぞろ歩くこのブリックレーンが、8月5日の夜を境に突然その様相を変えてしまったのである。人々を楽しませてきた壁のグラフィティは全面真っ白なペンキで塗りつぶされ、そこに大きく赤いペンキで書かれた冒頭の漢字24文字が出現し、多くの人たちにショックをもたらした。

それらの文字の脇にまるで美術館の作品タイトルのようにラベルが貼られ、そこには中国語と英語で「社会主義核心価値観(Socialist Core Values) 2023年」と書かれていた。

そう、これらの文字は中国共産党が2012年の党大会で提唱したスローガンである。ロンドンの自由なアートの街に忽然と現れた、社会主義国中国のスローガン……この出来事はあっという間にネットを通じて、ロンドンの芸術愛好家のみならず世界中に広がった。


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