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岡村靖幸のバラードって何ものにも変え難い

高校2年くらいに恋に落ちて、大学3年くらいまでゾッコンだった歌手がいる。
そうでなくても音楽は好きだし、何かしらずっと聴き続けているので、アイドルでもない限り、1人のパフォーマーに没頭するのは珍しかった。後にも先にも彼くらいしかいない気がする。

岡村靖幸って歌手に入れ込んでいた。


彼は通称「岡村ちゃん」。カルト人気的天才のシンガーライターダンサー。一定年齢や一定ジャンルを嗜んでいる人間であれば、いいよね!とか、好きだよー!と言ってくれることもある。
最近はやたらEIGHT-JAMとかの解説系音楽番組で度々出てくるので、何となく知ってる人もいるかも?と希望込で思っている。
若い子、すなわち、わたし同様圧倒的世代ではない人間からはあまりそういう印象を受けないのだが、世代付近の方々からは、『CITY HUNTER』(2期EDテーマの『Super Girl』のこと)でしょ?とか、『だいすき』知ってる!と言われる傾向が高い。

うーん、まあ、有名なのはその二曲と『あの娘僕がロングシュート決めたらどんな顔するだろう』の三曲くらいだよね…、まあ、うん…わかるよ…わかるけどさ…。になってしまう。
でもかと言って、下手に自慢気に語るような人間にもなりたくないので、背中を丸めるしかないのである。

というわけで、最近湯島のバーで語ったこともあって、溜まっている岡村靖幸語り欲を発散しようと思う。


そもそもハマった経緯は、ざっくり要約すると、レンタルショップで借りたアルバム・『早熟』にあった『いじわる』の変態さに射抜かれてしまった、である。借りるきっかけはフェスに彼が出演する(確か三回目の復活の時)からだった。
高校生で多感(?)さは始まっていたけど、陽キャでも、恋愛に興味があったわけでもないムッツリスケベなわたしは、岡村ちゃんの作り出す「もはやファンタジーな男女の営み感」にすっかり見出されていた。
だって『いじわる』なんてまさにそうで。

「明らかに手がチャックで止まらない」
「僕のヒップにしゃがんで」
「今はだっこの形で」
意味がわからない、日本語の文脈とか文法とか軽々と無視しているのに、なんか湿気っぽい。湯上がり感がすごい。エロい。
詞人としてすごいのだ、言葉をわやくちゃに使ってるのに、ちゃんと空気感が伝わってくる。
勿論、サウンドもめちゃくちゃいい。不思議な電子音のイントロから始まり、ベースが良く効いたお洒落なトラックで、かっこいい。音楽学的に詳しくないので子どもみたいな感想しか言えないのがくやしい。
さて、その官能的なメロディと歌詞ですっかりドキドキしたわたしを最後に叩きのめしたのは「セリフ」だった。ポエトリーリーディングでもなく、岡村ちゃんの、「セリフ」。(以下サイトの歌詞一番下部分)

ちゃんと書いてくれてる歌詞サイトあった、感謝。
もう、なんか最早存在がファンタジーだな!って思ったんですよ。「どのやりかたがいちばん気持ちいい?」なんて二次元男性の台詞でしか触れたことないし、「君がどのくらいエッチな女の子だか知ってるよ…」に関しては初めて言われた。そんなこと言う人、現実にいるんだ、って、新鮮に驚いた。(今も驚いてる)

ちなみに、「セリフ」はだんだん凄いことになって行くので、気になる方は『家庭教師』というアルバムの『家庭教師』をご一聴、そして、ライブ映像(確認できるところでニコ動にあるけどサイバー攻撃の影響…)をご覧いただきたい!もう、すごいよ。

こういう、半分イマジナリーな男女の営み感がたまらなくクセになってしまい、わたしはどハマりした。1週間くらいで当時出ていたアルバム全てを買い占め、発売のタイミングがたまたま合ったDVDBOX(MVとかライブビデオのリマスタリング集)も買った。その頃にやっていたツアーから毎回一度は必ず行っていた。そんなお金どこから…。

今たまたま流れてきた(プレイリスト流している)から話すけれど、彼の名曲のひとつに『真夜中のサイクリング』って曲がある。

これも日本語文法とかをぶち壊してる歌詞なんだけども、歌い方とメロディーの影響もあってめちゃくちゃ泣けるのだ。1人で夜中聴くとしんどい。
この曲を聴きながら、わたしは実際、真夜中に自転車をかっ飛ばしたことがある。
かっ飛ばして両想いだと思った人間の元に会いに行ったのだ。深夜1時か2時くらい。まあ結論から言って、その人は全然浮気(というかわたしが浮気相手だった)していたし、クズだった。
そんな相手と1時間くらい会った後、またこの曲聴いて帰ってたら、
「今晩の月よどうか照らさないで 心の中が全部読まれちゃいそうさ」
って歌詞がめちゃくちゃ刺さってしまい、自転車が漕げなくなった。地面向いて自転車引いて行こうとしたら、雨が降ってきた。実際は、月すら照らしてなかったのだ。
そんな苦い思い出がある、『真夜中のサイクリング』。どうでもいい思い出話をしてしまった。


そんな岡村靖幸。よくポップな曲が持ち上がる。
前述したように有名な曲もアップテンポだし、実際いい曲が多い。
だけど、わたしは声を大にして言いたい。
「岡村靖幸はバラードの男だ」ということを。

岡村靖幸でバラード、とあがるのは『イケナイコトカイ』とか『カルアミルク』だと思う。実際人気。
でもわたしは正直その辺りじゃなくて、さっきあげた『真夜中のサイクリング』とか、『Lion heart』『White Courage』とかみたいな、前2曲に隠れがちなバラードを推したい。…まあ個人的に推したいだけで、前2曲も全然最高のバラードには違いない。

ともかく、彼はバラードを歌えばこそなのだ。
あの絶妙な声色はピアノ弾き語りとの相性も良く、シンプルなバックサウンドでも華やかな印象を与える。逆に、豪奢なバックサウンドだったとしても、それはその分、彼の描きたい「孤独感」とかが浮かび上がって乙なもの。
なにより、彼の「モテたいけど実際は(意中の)キミにしかモテたくない(のにキミは全然振り返らない)」等の青臭い、童貞臭い、マインドが、バラードの方が色濃く出ている気がするのだ。
わたしは彼のそういうマインドが大大大大大好物なので、それはもう、興奮する。

最近斉藤和義と組んだ岡村和義でもバラードを出しているけど、これもどこか哀愁深くなった、意中の相手に振り向いて貰えない男の雰囲気が漂う。


彼は多分ベースがそうなのかもしれない。(そういえば斉藤和義もそんな感じのマインドな気がする)
にしてもいい曲だな、これ。

おドラッグやったり、思い悩んだり、声出なくなったり、いろいろあった方だからこそ、今も元気に青春して歌書いて唄って過ごしてくれてることに、わたしは喜びを感じる。そして、彼に出会って知った文化や音楽もたらふくあるので、本当に感謝しかないです。
彼を超えるどハマりしそうなアーティスト居たら教えて欲しいくらい、彼は強いです。わたしの中で。

ちなみに、わたしは1stアルバム『yellow』が一番好きな作品です。あれを処女作として出した実力こそ、彼を天才と示さずして何と呼ぶ。

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