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新旧入り混じるファンに届けた、初音ミクの「開闢」と「進化」の物語【マジカルミライ2021】

『これは僕の進化の過程の1ページです』
(二息歩行 / DECO*27)



マジカルミライ2021

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初音ミクが歌う"ライブ"と、
初音ミク関係のグッズ販売をメインとした"展示会"とが合体した一大イベント、「マジカルミライ」。

9回目となる「マジカルミライ2021」も、
昨年に引き続きコロナ禍での開催。
もちろん自分も参加してきました。

ライブ、めちゃくちゃ楽しかったですね。


…一方で、ライブが終わった後で気になったことがありました。
それは、「最近の曲が少なかった」ということ。

去年は「プロジェクトセカイ」のリリースもあってか、
2018~2020年あたりの曲が割合多かった記憶があるのですが、
今年演奏された曲は、オフィシャルCD収録曲とグランプリ曲(これらは最新曲ですが)を除けば、2016年以前リリースの楽曲のみ。

自分はてっきり、プロセカから入った若年層向けに
CD収録以外にも近年の曲が入ってくるかと思っていました。

が、目立ってそういったことは無く。
正直な気持ち、大阪公演が終わった後は、
「あれ??」という感じでした。


ですが、そのようなセトリにしている以上、
運営としてはきっと意図あってのことなわけです。

そう考えながらセトリを見返してみると、
運営の思い描いた「今年のマジカルミライのテーマ」が、
なんとなく見えてきたような気がしました。



テーマ①:開闢 - 往年の神曲で伝える「ボカロ曲」の生い立ち

先にも述べた通り、懐かしの楽曲が多数あった今年。

セットリストを振り返ってみると、往年のボカロシーンを象徴するような「神曲」と呼ぶべき曲が多数入っていました。


1.『お姫様』としての初音ミクが当時全員の心を掴んだ曲(2008年)


2.ボカロ界隈で今も大躍進を続けるDECO*27、その登場初期の楽曲(2009年)


3.「ボカロ曲で最も有名」と言っても過言ではない、
Mステでも流れたまさにキング・オブ・ボカロ曲(2011年)


4.Google Chrome登場時のCMに採用された楽曲(2012年)
あれからおよそ10年、Chromeも初音ミクも、あの時とは比べ物にならないぐらいのビッグコンテンツへと成長しましたね。


演奏曲どれもがみんなのよく知る曲なのはもちろんのこと、
これらほとんどが過去のマジカルミライで演奏歴があるものでした。

いわゆる「古参」の人にとっては
コールがあった時期を懐かしんだり、声出しができない今年を悲しむぐらいに身体に染み込んだ楽曲も多かったでしょう。

まさに自分もそんな一人でした。


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そんな超有名曲盛り盛りセットリストだった今年。

長年初音ミクを愛し続けてきた人に対しては
「ボカロ曲ってこうだったよね」と懐かしさを与え、
今年がマジカルミライ初参戦という人に対しては
「これが初音ミクのライブだよ」と紹介する。

まさに「初音ミク開闢の歴史」が
テーマのひとつだったのではないかと感じました。

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…あと、個人的にめちゃくちゃ好きな「恋色病棟」が
まさかの全日程で入っていて嬉しかったのですが、
特別有名とも思えず、なぜ全日で入ってたのかだけが不思議です。

コロナ禍→病棟、ってこと…?(笑)



テーマ②:進化 - 誰でもワンチャンある「ボカロシーン」の世界の持続と発展

2017年のマジカルミライから始まった「楽曲コンテスト」。

そのグランプリ楽曲はこれまでその年のライブでのみ
演奏されていましたが、今年は過去4年分を含めた
全楽曲が演奏されるという、ある意味「異例」のセトリでした。

おそらくこれには、今年で5周年を迎えるコンテストを
一層盛り上げたい・大切にしたいという、
クリプトン側の思いがあったのではないかと思います。


思い返せば、世に初音ミクが登場してしばらくの間、
ボカロシーンは正に「ワンチャンある」世界
だったのではないでしょうか。

ビジネス用語でいえばブルーオーシャン時代

ネタ曲、中毒曲、初音ミクに恥ずかしいことを言わせる曲…
様々なジャンルで有名楽曲が登場してきました。


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しかし、そんな時代も今や昔。

他の音楽ジャンルがそうであるように、
ボカロシーンもまた、「プロ作曲家」により精錬された
「商用音楽」がランキングを席巻する時代に突入しています。

もちろん、楽曲が時代とともにブラッシュアップされていく
というのは当然の流れです。

しかしその結果、
「商用音楽が溢れる→アマチュア作曲家の曲が埋もれがちになる→作曲活動を諦めてしまう人が増える」
という事態になってしまうのは良くない。

ボカロ作曲人口が減ってしまうことは、
直接的にはボーカロイドの売り上げ減、
長期的にはボカロシーンの縮小に繋がってしまいます。


そんな流れを断ち切るべく、
マジカルミライの主催であるクリプトンが考えたのが、
最初に述べた「楽曲コンテスト」です。

ここでグランプリにさえ輝けば、
ほぼ全ボカロPの憧れである「マジカルミライでのライブ演奏曲になる」という夢が叶う。

現ボカロシーンにおける「ワンチャン」が、
まさにこの楽曲コンテスト
といえるのでしょう。


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偶然か必然か、楽曲コンテストでは「曲を作ること」が
テーマとなった曲が例年グランプリに輝いており、
今年に至っては、かつてのボカロシーンで多くあったような
「初音ミクでの作曲」がテーマとなっています。

『私だけの世界を作ろう 歪でもいい 一つだけのモノを』
(まるいうなばら / ごーぶす 2020年グランプリ曲)
『忘れていた衝動に 耳を澄ませてごらん
私は何を歌えばいい? 何を歌ってほしい?』

(First Note / blues 2021年グランプリ曲)

最近の有名曲ではすっかりテーマアップされなくなった
「作曲そのもの」を題材にし、
創作活動の楽しさを今も大勢の人に届けることができる場所。

楽曲コンテストは、まるで現代に生きる
黎明期ともいえるかもしれません。


『何度目かの黎明を迎えて
 照らされた希望を一つ旋律とし地として』

(初音天地開闢神話 / cosMo(暴走P))

過去のグランプリ曲再演奏によって、
そんな素晴らしいコンテスト界隈(≒アマチュア作曲界隈)が
今後一層盛り上がってくれることを願って止みません。



時空を航り継ぐ歌い手

初音ミクの誕生から、早いもので来年で15年。

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一時は「なんもない砂場」などと揶揄されたボカロシーンも、
ストリーミングアプリの浸透、プロジェクトセカイのリリース、
先述の楽曲コンテストなどによって
砂漠にリンゴの木が実り、緑あふれる森が蘇ってきました。

15年というと、今の大学生ですら
「物心ついた時には初音ミクがいた」となる年月なわけで。

改めて考えると凄い話です。

マジカルミライには家族連れで参加する人も年々増え、
世代の移り変わりが感じられるようにもなりつつあります。

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それほどの長きにわたって、日本だけでなく
海外にまで活動を広げるボーカロイドのセカイ。

すっかり世界の一部となってしまった彼女たちのミライを、
これからも一緒に見届けていけたらと思います。


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