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(考察) 京都アニメーションのエモさは、徹底された「三分割法」と「斜め構図」にある説

写真を撮りまくって構図を意識することにも慣れてきた折、
ふとそんなことを思った話。


1.京アニの映像はエモい

先日、京都アニメーション作のアニメ「響け!ユーフォニアム」(以下”ユーフォ”)のコンサートに行ってきました。

そこで久しぶりに京アニ映像を見て改めて思ったのですが、
1シーン1シーンがとても印象に残るんですよね。

たとえば、ユーフォ2期のオープニングの最初の方。

(※公式チャンネルが無いので転載物ですみません)

これの0:00~0:40の辺り、
静止画に近いカットが次々と切り替わっていくのですが、

なんというか、めちゃくちゃ良くないですか?


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各シーン各シーン、青春っぽさがあふれていたり、
キャラクターの表情が生き生きしていたり。

最近の言葉でいうところの「エモい」。

このエモさ、もちろん京アニの画力が凄まじいから、
というのもあると思うのですが、

「もしかして、構図が素晴らしいからなのでは?」
と、そんな考えが頭をよぎりました。




2.「構図」の話

たとえば、「三分割法」

カメラを持っている人なら一度は聞いた・調べたことのある単語でしょう。かくいう自分ももちろんその一人です。

簡単にいうと、
「縦横3分割した線の交点に、撮りたい被写体を合わせる」
という撮影方法。

ちなみにカメラ界隈だけでなく、絵画など芸術界隈でも使われているとWikipediaに書いてました。万能すぎる。


あと、言葉が正しいか分かりませんが、
あえて斜めになるように被写体を撮る「斜め構図」とかもありますね。




3.オープニングの静止画カット×構図解説

さて、前項の知識を踏まえたうえで、
改めてユーフォのオープニング序盤を振り返ってみます。

~0:40までの、比較的動きが小さいものの中から
10カットほど抜き出してみました。


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たとえばこのカット。

分かりやすいように、縦横に三分割したところと、
対角線に補助線を引いてみます。


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①右上の三分割の交点に瞳がある
 ⇒ポートレート撮影では瞳が主体。完璧な三分割構図。

②対角線上に左肩のライン&サブキャラ
 ⇒斜め構図。右肩も割と収まっている。

という風に見てとれます。どうでしょうか?
続いて、もう何枚か見てみます。


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①メイン(麗奈)が左三分割ラインに沿っている
 麗奈にだけ光が当たっているというライティング効果付き。

②構図の基本である中央にもサブキャラ(葉月)


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①右上三分割ラインと顔の中心が同じ

②中心から左側に顔が収まっている
 ⇒かつ、対角線の右上に収まっている


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①左三分割ラインにメインキャラ2人
 ⇒このカットだとメインかが分かりませんが、今後のカットでわかる

②右下に向けての綺麗な斜め構図
 ⇒左端キャラの頭から右端キャラの脚にかけて。


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①左右三分割ラインに沿って2人
②両方の対角線上に沿って身体ないし顔がある

…このカット、本当にお手本のような「三分割法」と「斜め構図」だと思います。イラスト・写真界隈の教材にするべき。


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①右三分割ラインにメインキャラ
 ⇒交点が背中に乗っており、背中を魅せたいカットだとわかる。

②左右の真ん中に窓枠、上下真ん中に机と空間の境目


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①右三分割ラインに入道雲△の頂点が来る
 
⇒ついでに右上交点に影のようなものも。余念がない。

②対角線を境に雲の有無が分かれる(左側)
 ⇒図形的な美しさがありますね。


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①右三分割ラインに”キャラと楽器”の中心
 ⇒キャラ+楽器のセットを主体にしていることがわかります。

②下三分割ラインと机の境界線が同じ

③真ん中から右側に主体が収まっている
 ⇒今気づきましたが京アニ、かなり中心も意識しているようです。


どうでしょうか?

ぶっちゃけると、最初は「なんとなく三分割法っぽいな」と思って線を引いてただけでしたが…、
実際に引いてみると想像以上でした。

ここまでピッタリと交点やラインに主体が乗っているとは……。
線を引きながら鳥肌が立つという貴重な体験ができました。




4.静止画カット×構図解説(少し外した構図編)

さて、今度は同じくオープニングの中から、
三分割構図を少し外した?ようなカットを見てみます。


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右三分割ラインより右にキャラが収まっている
⇒しかもその1/3領域の半分が壁(影)です。
 あえてライン上より端に配置することで、このキャラ(みぞれ)
 の控えめな性格を表しているのではないでしょうか。


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右三分割ラインより右にキャラが収まっている
⇒さっき手でカメラを遮っていたキャラ(夏紀)です。
 カメラに映るのが恥ずかしいのかも?というイメージを与えます。

三分割法なんかは完成された構図が故に、
連続しすぎるとどこかマンネリ感が出るところもあります。

なのでこういう「少し外した」カットをあえて差し込むことで、
オープニング映像をより良いものにしているのでしょう。


ちなみにここまで見て気づいた方もいるかもしれませんが、
京アニのイラスト、おおよそ右側に主体を置いています。

写真なんかは撮る人によって、被写体を右側に置くか
左側に置くかという「クセ」のが出るのですが、
イラスト界隈もそうなのかもしれません。



まとめ

いかがだったでしょうか。
ここまで三分割ラインや対角線にピッタリ乗ってくるのは、もはや偶然ではないでしょう。
徹底された構図、それが京アニの描くイラストの美しさに繋がっていることが分かっていただけたのではと思います。

そして「三分割法」「斜め構図」などは先に述べたように、
写真を撮るうえでも非常に重要なポイントです。

というわけで、今回の解析は自分にとっても勉強になりました。



おまけ:京アニの他の作品編

同じく京アニの作品であり、ユーフォのスピンオフの位置づけである
「リズと青い鳥」も、随所に先述の構図がたくさん含まれていました。

PVを貼っておきますので、よかったら実際に確認してみてください。


リズと青い鳥はいいぞ。

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