村上春樹「ノルウェイの森」(1987)を読んで: 安易な理解への抵抗とその不徹底のこと
casualties──作者の訳するところの「犠牲者」についての物語であるとされるらしい「ノルウェイの森」には、序盤と終盤に示される命題がある。『死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。』(上48P)『その場所では死とは生をしめくくる決定的な要因ではなかった。そこでは死とは生を構成する多くの要因のうちのひとつでしかなかった。』(下226P)。
死は「ノルウェイの森」を構成する多くの要因のうちのひとつでもあるが、決定的かどうかはともかく、それを抜きにしては作品