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料理は科学である

料理のおいしさを決める大事な要素の一つが「うま味」である。うま味の中でも特に重要なのが、「グルタミン酸」「イノシン酸」「グアニル酸」であり、これらは大きく2つに分けることができる。それがアミノ酸系と核酸系である。

グルタミン酸はタンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうちの一つなのでアミノ酸系である。また、イノシン酸やグアニル酸はヌクレオチド構造を持つので核酸系となる。

そして重要なのが、アミノ酸系のうまみ成分と核酸系のうまみ成分を合わせると、うま味が飛躍的に強くなるのだ。これを「うま味の相乗効果」なんて呼んだりする。昆布(グルタミン酸)とカツオ(イノシン酸)から出汁をとった味噌汁のうま味が強いのはそのためである。

料理の美味しさを左右する要素はうま味だけではない。例えば、メイラード反応がある。メイラード反応は、アミノ化合物と糖を加熱した時に褐色物質(メラノイジン)が生成される現象のことであり、これをうまく使えば、キツネ色の美味しそうな見た目や香ばしい匂いを作れる。メイラード反応は(食材にもよるが)160度~180度くらいの温度帯で進行する。しかし、フライパンの温度が200度を超えてしまうと食材が炭化してしまい、美味しさが損なわれてしまうので、調理温度を意識することが必要である。

他にも、食材ごとの調理方法も重要である。例えば、厚いお肉を焼く時には、まず常温に戻してから調理を開始する。そして、両面を焼いてうま味が逃げないようにした後には、一旦お肉を休ませる。こうする事で、熱伝導により中心部まで火を通して、さらに肉汁(水分)の分子運動を落ち着かせる事で、切った時に過剰に肉汁が溢れ出すのを防ぐことができる。
また、渋柿を食べたい時には、焼酎で渋抜きをするといい。これは、渋柿の渋さの原因となっているのがポリフェノールの一種であるタンニンなのだが、渋柿の状態ではタンニンが溶けやすく、舌の味蕾を刺激してしまう。そこで焼酎(エチルアルコール)と共に封入する事で、タンニンを難溶性の物質に変化させ、果糖やブドウ糖の甘みを引き立たせることができるのだ。

また、料理そのものについても、所要時間を目的関数とした最適化問題と考えることもできる。このように、料理を理論立てて科学的に捉えることができれば、汎用性が高まり、もう一段上の美味しい料理を作ることができると私は考えている。



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