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酵素の反応条件とフィードバック調節

以前の記事では酵素とは生体内で働く触媒であり、さまざまな化学反応を促進させることを紹介しました。今回は酵素が働くための条件と酵素反応を調節する仕組みについて説明していきます。

<反応条件 〜濃度編〜>

化学反応が起こるためには反応に関わる分子同士が衝突する必要がありますが細胞の中はたくさんの分子で混み合っています。それにも関わらず特定の化学反応が着実に進むのは、熱エネルギーによる分子運動によって基質(酵素が作用する物質)が細胞中の他の分子との衝突を繰り返しながら素早く移動し、酵素と衝突するためです。ここで反応速度を更にアップさせるにはどうしたらいいでしょうか?まず考えられるのは基質の濃度を高くする方法です。基質の濃度を高めることで酵素と衝突しやすくなり、反応速度が上昇するのです。ところが酵素の量は限られているため一定の濃度以上になると全ての酵素が基質と結合した状態(飽和状態)になるため反応速度は一定になります。逆に基質の量を一定にして、酵素の濃度を高くした場合にも同じ結果になります。

<反応条件 〜外的条件編〜>

先ほど説明したように熱エネルギーによる分子運動が化学反応にとって重要なファクターです。熱エネルギーが大きくなる、つまり温度が高くなるほど分子運動が活発になり化学反応速度が上昇します。しかし触媒が酵素の場合、温度を上げていくと際限なく反応速度も上がるかというとそうではありません。なぜならタンパク質である酵素の立体構造は熱によって変化して機能を失ってしまうからです。これを失活と言うのですが昨日の記事で詳しく紹介しました。ここまでをまとめると、温度をあげて分子運動を活発にすると反応速度は上昇しますが、タンパク質である酵素には限界温度があるという事になります。ちなみに酵素が最もよく働く温度を最適温度と言います。また酵素の立体構造は溶液の酸性またはアルカリ性の影響も受けるため、反応が最大になる最適pHも酵素ごとに決まっています。例えば胃で働く酵素のペプシンの最適pHは2(強酸性)です。それに対して唾液に含まれるアミラーゼの最適pHは7(中性)で膵臓に含まれる消化酵素のトリプシンの最適pHは約8(弱アルカリ性)と酵素が分布する場所によって最適pHが大きく変わってきます。

<酵素反応の調節方法>

細胞内では数多くの化学反応が連鎖的に起こることで一連の反応系を形作っています。そして反応の各段階では異なる酵素が作用しているわけですが、反応系全体の進行の調節がどのようにして行われているのかをこれから紹介していきます。

体内には様々な反応系があり、それぞれその細胞に必要な物質(最終産物)を作り出します。この最終産物は多すぎても少なすぎても問題で適切な量に調節する必要があります。その調整する仕組みがフィードバック調節です。酵素反応のフィードバック調節では最終産物が反応系の初期に作用する酵素の働きを阻害することで、反応系全体の進行を阻害します。その結果、最終産物が多ければ反応が阻害され、逆に最終産物が少なければ阻害がなくなるので再び反応が進行するようになります。

参考文献:嶋田正和ほか22名,「生物」,数研出版,(2017).

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