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DNAが複製されるまで

DNAの構造については「DNAはなぜ二重螺旋になっているのか」で紹介した。DNAの構造を復習したいという人は見てほしい。その記事でも書いた通り、DNAはヌクレオチド鎖2本が互いに向かい合っており、内側に突き出した塩基同士が水素結合して全体にねじれた構造をしている。

そして我々の体は細胞が繰り返し、繰り返し分裂してできたものである。その際に母細胞のDNAからまったく同じDNAが複製されて娘細胞に受け継がれる。今回は複製の仕組みに焦点を当てて紹介していこうと思う。

まず前提として新しいDNAが作られる時はゼロから作ることはできない。もととなるDNAがあって、そのDNAを鋳型として使うのだ。鋳型とは溶かした金属などを注入して固め、製品を作る際に使用する型のことでDNAでも同じような作業がおこなわれる。

どういう事かというと、もととなるDNAの二重らせんがDNAヘリカーゼという酵素によってほどかれていく。そして一本のひものようになったDNAにデオキシリボヌクレオシド三リン酸と呼ばれる物質が結合するのだ。

DNAの基本構成要素であるヌクレオチドはリン酸というものが1つしかついていないのだが、デオキシリボヌクレオシド三リン酸はヌクレオチドにリン酸が追加で2ついている。この物質がDNAポリメラーゼ(DNA合成酵素)と呼ばれる酵素の働きによって、鋳型となるもとのDNAと結合し、その際に2つのリン酸が取れるという仕組みなのだ。

このようにDNAをほどくDNAヘリカーゼと鋳型を元に新しいDNAを合成するDNAポリメラーゼが活躍し、この2つの酵素が鋳型を移動することでDNAの複製が進んでいく。こうして複製されたDNAは元のDNA(鋳型)とまったく同じ塩基配列を持ち、鋳型のDNAと新しく合成されたDNAの組み合わせでできている。


<コラム1>

DNAが複製される方向は決まっていて、複製起点と呼ばれる特定の塩基配列の部分からDNAがほどかれていきます。

<コラム2>

DNAポリメラーゼは新しいDNAを合成するだけではなく、鋳型に間違った塩基を持ったヌクレオチドが結合していたら、そのヌクレオチドを取り除く働きも持っていています。そして、その部分には正しいヌクレオチドを繋ぎ直します。つまり、DNAポリメラーゼはDNAの修復も担当しているのです。

<コラム3>

DNAの複製は正確に行われますが、線状のDNAをもつ真核生物の場合、DNAの端っこの部分は完全には複製されません。そしてDNAの末端にはテロメアと呼ばれる特定の塩基配列の繰り返しが存在するのですが、このテロメアが細胞分裂を繰り返すごとに短くなってしまいます。

このテロメアの長さが一定以下になると細胞分裂が停止することがわかっていて、このことは老化や寿命に関係していると考えられています。細胞分裂の限界に関しては「細胞分裂の限界はどこなのか?」で詳しく解説しているので興味のある人はぜひ見てほしいです。

参考文献:嶋田正和ほか14名,「生物基礎」,数研出版,(2016).

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