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人が体毛を失った理由

毛があることは哺乳類の大きな特徴であり、「けだもの」の語源でもあります。しかし、哺乳類の中でも気温の高い地域に住むサイやゾウは体温上昇のリスクを抑えるために毛皮を持ちません。また、クジラなどの水生生物も遊泳時の抵抗を少なくするために体毛を持っていません。つまり体毛(毛皮)の役割である体温の保持や体表の保護が必要ない、もしくはあるとデメリットになる環境に住んでいる動物は毛を持たないのです。そして人も体毛が少ないですがこれはなぜでしょうか?

かつてはダーウィンの提唱した性淘汰説が有力でした。性淘汰説とは体毛が薄い方が異性の好みと合致するので繁殖する確率が高くなり、体毛が薄い方向へ淘汰されていったという考えです。しかし近年では、二足歩行の獲得によるライフスタイルの激変によって人は体毛を失ったという説が有力です。ホモ属が出現する以前の人の祖先である猿人は体毛をまとっていました。しかし二足歩行を獲得したことによって、森から草原へと進出していき移動距離が伸びてくると、体温を上昇させる体毛はかえって邪魔になりました。また、大型化した脳も体温の上昇を嫌いました。こうした理由から人は次第に体毛を失い、ホモ属初期には既に体毛がなかったのではないかと言われています。また、体毛を失ったことによって毛を逆立て怒りを表現するようなことができなくなったことは豊かな表情やジェスチャーによるコミュニケーションの発達に繋がったと言われています。

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参考文献:廣澤瑞子,「眠れなくほど面白い 生物の話」,日本文芸社出版,(2017).
 

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