冷凍の今川焼きを弄ぶ

タイトルを五七五にしたのに意味はありません。


冷凍の今川焼きを知っていますか。

スーパー等で売られている一袋五個入りの今川焼きです。小豆のみならずクリームやチーズなんかもあります、あの今川焼き。


今、今川焼きにどハマリしてます(駄洒落ではない)


カチカチの今川焼きをお皿に乗せてレンジで40秒。扉を開けると湯気と共に小麦の香りが広がる。
ほかほかの今川焼きをリビングに運び、眺める。
薄茶色に広がる生地は綺麗な正円をしていて、触ると表面は指に沿って沈む。片手で持ち上げるともったりと宙に浮き中のクリームが重力に従って歪む。そのままお皿に落とすとバフリと音をたて着地、何事もなかったかのように佇む今川焼き。

あの今川焼き。

一口食べると口内に熱が広がる。噛みしめると生地の味が深く広がってゆく。続けて二口、今度はクリームが主張をしてくる。冷凍食品のチープな濃さを生地と混ぜて飲み込む。

半分食べ終わったところで、もう一度今川焼きを見る。半月型になった今川焼きを片手で持ち揺らす。
クリームの質量をもった今川焼きはタプタプと左右に揺れる。揺らすのに飽きたら一口ちぎる。気怠げに離れた一口分の今川焼きは、もの言いたげに生地の間からクリームを覗かせている。

ゆっくりと食べ終えお茶を飲む。

手にはまだ今川焼きの温もりが残っていた。



1925年11月24日 太宰治手記より

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