才能がないから強くなれないという話

 すいません、最近noteが早速滞り始めた上に書いている内容がノウハウの話から脱線してしまいますがお許しください。

 「湾岸将棋教室」を知っている棋士のほとんどの方が初対面で将棋と関係ないランニングの話ばかりツイートしている将棋教室ですよね?という趣旨の話をオブラートに包んで優しくしてくださるので今日は私がなんでランニングしているのかという話がテーマです。

 湾岸将棋教室のある豊洲、東雲、有明などの湾岸エリア。私が引っ越してきたのは6年前なのですがこのエリアに引っ越してきて驚いたことの一つが「太っている人がほとんどいない」ということ。当時100kg弱あった私は痩せないといけないという焦りに近い気持ちがありましたが結局ダイエットはせず、将棋教室をやっていく中で先生が不摂生なままでいるというのは「努力をすれば強くなれるし、強くなりたいのであれば努力が必要」という子供達への言葉の説得力が0であるという紛れもない事実に一念発起ダイエットを決意。その中でなぜランニングを選んだか。走り始めるきっかけは東京マラソンを見て楽しそうというありがちな話ですが、一番大きな理由は「走るのが一番苦手で嫌いだったから」ということです。私は学生時代から50m走、持久走とも下位2割より下にいるのが当たり前というくらい走るのだけはさっぱりダメでした。

 「先生方が将棋が強いのは小さい頃から将棋をやっている上に才能があったから。」ここまでストレートに言われることはないものの、そういう趣旨の言葉は何回か言われたことはあります。そしてこのことを将棋で否定することは既に将棋が強くなってしまった側には証明しようがないことです。(まあ私が将棋が強いかどうかというのは話の本筋とずれるのでこの際ツッコまないでください。)そこで私が自分の身体を使って一番苦手なことを努力だけでどれくらいのレベルまで行けるか、その証明手段がランニングでした。

 ランニング初日は東京マラソンを見て触発された人にありがちな東京マラソンの日の夕方。この手の人はその1週間はそこそこいるのですが、1週間後にはほとんど姿を消します。当時有明に住んでいた私は有明テニスの森公園(1周約1.75km)の外周コースを走りましたが、その3分の1も走れずに歩き始めました。ちなみにそのあと2日間は筋肉痛で歩くのがやっとというレベルでした。(このレベルより上の人がほとんどなはずです)

 そこからまあ何とか1周ならできるというレベルに行きつくのに半月、5km走るのに1ヶ月以上かかり、1年後の2015年の東京マラソンは4時間55分、翌年の東京マラソンも4時間25分かかるという進歩のスピードはびっくりするほど遅かったです。

 ただ2017年の東京マラソンは3時間44分と劇的に走力が上がります。この1年何があったかというとランステ(将棋でいう将棋教室です)に通い始めました。将棋教室をやっていながら人に教わり始めるのに2年かかっている勘の悪さ(笑)。スタッフに練習メニューや走り方などを教わる、ランニング仲間と情報交換したり、同じ大会に出る。将棋教室に通われている方とやっていることは同じです。そのことの大事さになかなか気づきませんでしたが、そうすることが魅力の再発見やモチベーションの維持につながりました。

 現状のタイムは各マラソン大会参加者の上位2割くらいのところに位置します。将棋で言えばアマチュア初段から二段くらいというところでしょうか。このレベルまでは努力でなんとかなるレベルですし、今の自分の感触ではもうちょっと時間をかければ上位1割くらいまでは行けそうな気がします。

 ここでようやくタイトルの言葉に行きつきます。「才能がないから強くなれない」。この言葉、間違いではないですが実は多くの人にとっては関係のない言葉な気がします。皆さんがトップアマクラスでプロのような力がほしいというのであれば大いに関わってくる言葉ですが、ほとんどの人にとっては才能と現状の強さに因果関係はありません。もちろん強くなることよりも楽しむことが大事だという方には全く関係ありませんし、正しいも正しくないもありません。

 ただどうして強くなれないかを考えたときに「才能がないから強くなれない」という言葉をこの言葉が答えであってほしいという願望で使っている方がいます。この言葉を使うと努力する必要性がなくなってきます。できないのは才能がないから、非常にわかりやすく簡明で自分の心を楽にしてくれる魔法の言葉です。繰り返しになりますが残念ながらほとんどの人にはこの言葉は関係ありません。強くなれない理由は努力が足りない、もしくは努力の仕方が間違っているこの2つに帰結するはずです。努力の仕方がわからない場合は強い人にどうやったらいいかを聞いてみてください。十人十色の答えを言ってくると思います。その中から自分に合うやり方を見つけて実行すればいいです。

 努力をすればある程度のレベルまでは必ず行ける、ただし努力に対する成果の出方は人それぞれです。1年で有段者まで行く人、10年経っても有段者になれない人、人それぞれです。私も甘々の二段の免状をもらうまでに干支が一周しました。努力がすぐ結果に結びつくということはありません。ですので「強さ」よりも努力する過程を楽しんでください。私が言ってはいけないセリフですが「たかが」将棋です。仕事や学業、やらなくてはいけないことがある中で1日5分でも10分でもとなんとか時間を捻出してやるものです。強くならなくても焦らずじっくり取り組んでください。その中で将棋を通して努力そのものを楽しんでください。

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