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ARCS-VとCIS ID学 vol.17

タイトルがもはや暗号じみてきた。職場でもやたらと「MOU」だの「JLC」だのとボンボン言われて腹がたつ今日このごろ。なので丁寧に解説。

ARCS-V:動機付けの5要因
Attention(注意)
Relevance(関連性)
Confidence(自信)
Satisfaction(満足)
Volition(意志)*追加された項目なので「-」があるけど、もう不要かも

CIS:科目の興味度調査
Kellerが提唱した学習者の科目への興味度を調査するアンケート項目(34項目)。主に実施した(する)学習コースの評価指標として用いられている。Course Interest Surveyの頭文字らしい。

ARCS-Vが研究でどう扱われているのか論文をあたった結果と、そこから派生してCIS(ARCSに基づいた興味度アンケート)関連の論文のアウトプット(日本語限定)。

ARCS-Vに関する研究

中嶌康二・中野裕司・渡辺あや・鈴木克明(2013)「拡張版ARCS 動機づけモデルの実践有効性検証ツールの設計と評価」『 日本教育工学会研究報告集』

もう何度も挙げてますが(たぶん3度目)、オンラインで見渡す限りVolition(意志)の方略を明示している唯一の論文じゃないかしら。ただし、Volition提唱者のKellerとは多少解釈に差異があるとのこと。その差異の背景となる「MVPモデル概念図」(Keller 2008)が載ってるんだけど、原本には辿り着けず、まだ理解もできていない。

とにかく「そもそもARCSでは不満か!本当にVが必要か否か!」(こんな口調ではないし恐らく必要という立場)ということで調査を実施するという報告書。もういちどいいますが、Volitionの方略リストがある。すばらしい。


杉江聡子・三ツ木真実(2015)「遠隔交流を活用した中国語ブレンディッド・ラーニングの実践と混合研究法による評価」『教育システム情報学会誌』32(2), 160-170

高校の中国語学習におけるブレンディッド・ラーニングをARCS-Vに基づいて評価した論文。とくに目玉は中国の高校生との交流会で、おもにそこについてのアンケート調査になっている。研究として面白いのはトライアンギュレーションの手法を用いて量的および質的の両面から分析していること(と自分で書いていて、トライアンギュレーションとはなんぞやを勉強していないのでわからない)。量と質の両面からという視点はこれから重要視されると思う。

おそらくアンケート作成の参照元は以下の通り。
★ARCS J. M. ケラー(著)・鈴木克明(監訳)『学習意欲をデザインするーARCSモデルによるインストラクショナルデザインー』(北大路書房)
★V 中嶌康二・中野裕司・渡辺あや・鈴木克明(2013)「拡張版ARCS 動機づけモデルの実践有効性検証ツールの設計と評価」『 日本教育工学会研究報告集』

おそらくというか引用文献に挙げられているからたしかなんだけど、わたしの読んだ限りでは、これらの何をどう解釈してアンケートの質問項目が作成されたのかわからなかった。おそらくARCSは書籍の中の「動機付け方略」で、Vは論文中の「ARCS-Vモデルのヒント集」(動機付け方略)を参照しているんだと思うけど、どれがどれに当たるのか、どのような過程を経て項目が抽出されているのか興味をそそる。

CISの関する研究

授業やコースに対する学生のモチベーションを評価するならCISのほうが適している気がする。ARCS-Vに言及している論文を探しているうちに、CISを利用した論文をいくつか読みまして、わたしのちっちゃな授業改革を評価するならCISかもしれないと、CISについても少し調べました。

いくつかの論文をチラ見した感覚でいうと、CISの和訳版をそのまま用いている感と、平均点のみによる考察の感がありまして(すべて感覚で書いてます)なによりもCISの和訳版はなんとなく文体が不自然で冗長的といいますか、しかも34項目もありまして、わたしが回答者だったらたぶん適当に答えるなという感じなのよ。

でもこんな論文に出会いました。
川上裕子・向後千春(2013)「ARCS 動機づけモデルに基づく Course Interest Survey 日本語版尺度の検討」『日本教育工学会研究報告集』JSET13(1), 239-294

CISの日本語版(和訳版とは違う、要するに日本語文としてわかりやすい版)を試作し調査を実施、因子分析により整理された4要因14項目のCIS日本語版を発表。ARCSの4要因と対応し、モデルとして適合性も確認されているということで、オリジナル版が内包していた諸問題も解決されたものであります。

これを使おう!そうしよう!!

まとめ

ARCS-Vモデル周辺をあたりました。オンラインで無料参照できるものかつ日本語限定ということでかなりの制約があるけれども、いろいろ収穫はあった。このへんで自分の実践もなにか形にしたいし、熊本大学の科目履修がとうとう始まったので、とりあえずこのへんで、いったんおやすみ。