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釣りコンテストと太客の共通点

panpanyaさんの新刊「魚社会」が今年の7月に発売された。

出所は不明だが、本の装丁もpanpanyaさん自身が手がけられているらしい。世界観を完全にプロデュースされている、そのことも戦略だろうか。今回も一冊丸ごとpanpanyaさんを味わえる濃い中身だった。

本作の中で、これは他にも通じる話かもと思い浮かんだものがあった。それが釣りコンテストの話だ。「釣りコンテストで優勝した人間が褒められるのはおかしい。大きさを誇るオレこそが褒められるべきだろう」というような主張を釣られた魚本人が主張する。釣った主人公は相手にせず、調理してやろうかと脅して、結局はおどけて終わる。

読み終わって、全く魚の言う通りだと思った。魚が主張する通り、評価の起因は魚の大きさにあるのだから、魚にこそトロフィーが渡されるべきだという主張は通っている。納得と同時に、この感覚をどこかで味わったような気がした。少し記憶をたぐり寄せただけで正体はすぐに判明した。太客と嬢の関係に似ている。

いつものようにYouTubeを回遊していて、再生回数が伸びている人気動画の中に「月3000万を稼ぐ No.1キャバ嬢」というサムネを見つけた。その時に違和感を感じたのだった。月3000万円ということは、それだけ指名をもらったり高いお酒を払ってもらったりしているのだと思うが、そのお金はそもそも太客から渡されたものだ。気に入った嬢にウン百万という大金を渡せる太客の方もすごいのに、嬢だけの手柄になっているような見え方が気になった。太客の方も、多少はそう思っているのではないか。実際にイチナナで大金を投げ銭している人たちは、そのコミュニティ内で誰が一番金を払えるかというマウント合戦をしているらしい。大金が(大きな魚が)最後に流れ着いたところが一番評価されるというのなら、No.1キャバ嬢が貢いでいるわがまま猫が一番すごいということにもなりうる。なんだかおかしな話になってきた。

こういった評価の取り替え物語みたいなのは他にも起きているかもしれない。panpanyaさんの心地よい世界観と、自分の俗な世界観が不意に重なった瞬間だった。

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