見出し画像

対魔人・アキ ◆型殺陣orトリート!ハロウィン仮装幻魔を討て!◆

「ドーモ、ジャックオランタンです。私は幻魔で、人殺しに来ました」
男はニヤリと笑い、無線機を見せつけた。無線機はミシミシと音を立て花束に変わった・・・・

                ◆

緑やオレンジを多用する街頭広告。【期間限定】【南瓜でより美味しく】【インスタ映え】などの文言が香ばしい匂いと共に上るキッチンカー。ファンシーグッズが並ぶショーウィンドウにはコミカルなゾンビや骸骨の切絵がダンスする。

このイベントシーズンに盛り上がるのはシブヤ・スクランブルスクエアだけではない。フクシマ中央部コリヤマシティにおいてもまた、狂ったような熱気が渦巻いていた。

「だれか語彙をくれ!」少年が叫んだ。「エ、どうしたの?」「コレを言葉にできない、だれか語彙をくれ!」そぞろ歩く仮装行列の中、少年は両手を広げ、大仰に世界を指した。

「ナニソレ!」「シヅキさん詩的だね!」「ワラ!」「素晴らしいでいいじゃん!」「ワラ!」彼と共に歩く少年少女たちも両手を広げたりして笑った。「来てよかった!」「すごく記念!」「たのしー!」彼らは酔っていた、もちろんアルコールにではない。

仮装行列の非日常感と、友人と共にそのファンタジーに加わるという特別味、浮遊感に酔っているのだ。

((今日くらいいいじゃないか。ちゃんと勉強してるし、時間には限りがあるんだ。かけがえのない人たちと楽しい時間を過ごしてダメなの?ハロウィンを問題視する大人はわかってない、どうせ解からない!))

「ミクちゃん、ちょっと貸して」「エ、ナニ?」シヅキは彼女が被っていた山高帽をフリスビーめいて投げた!「ワオー!」シヅキは10メートルほどダッシュし、自ら投げた山高帽をキャッチしてみせた!

「すごーい!」「ワラ!」周囲にいた仮装民間人も声をあげて笑う。ミクは笑いながら眉を顰めた「危ないよー」正論だ。大勢の人が闊歩する中、このような行為はぶつかったりしてアブナイ。トラブルの元ともなる

「ダイジョブ!」ギャラリーの評価を得て気をよくしたシヅキはもう一度帽子を投げた!「ワオー、あ!」帽子はキャッチする前に仮装通行人の顔面に当たった!アクシデント!

「ア!すみません!」駆け寄るシヅキ「・・・・」当たった男は無言で帽子を拾い上げた。ナムサン、トラブルか?「気をつけてネ」男はゆったりとした物腰でシヅキに帽子を手渡した。「ハロウィンは楽しい日だ、でもはしゃぎすぎるのは良くない。みんなが楽しめるように思いやりをもとうネ。」

男はシヅキを窘めた。「アッハイ・・・・ドーモ」「素直でイイコですネ、思いやればもっと楽しくなれます。ゴキゲンヨウ」男の去り際、シヅキはふとあることに気付いた。男の奇抜な格好はコスプレ衣装のそれとは違う・・・・まっとうな生地と製縫、衣装ではなく衣服だった。ジャックオランタンの仮面を除いて・・・・

「ダイジョブか?シヅキ」「イイ人だったねー」「あ、ウン、ちょっと気をつけようかな」男の陰は雑踏にかき消され、どこにも見えない。シヅキたちは男のことを忘れ、再びパレードの一部となった。

                 ◆

「食わんのか?」とあるビルの谷間にレザージャケットの男、ジャケットの背には『尾』の文字が二つ刺繍されている。「何ですか?」答えるのは白いジャンパーにホット短パンの美少年

「コレだよ、お前のも買ってやったんだぞ?」「結構です」「あのな、親切で言ってんじゃねぇんだよ俺の足手まといにならねぇよう燃料入れとけっつってんの」男がイカヤキをほおばりながら憤慨する

「食べてきました」「甘ェーんだよ、これからする事わかってんのか?」「おれは人間です。レオさんほど消化も吸収も早くありません。それも食べて、おれが足手まといになる分もスタミナを多く付けては?」「アキぃ!」BAKIii!怒ったレオはイカヤキ二つを串ごと平らげた「生意気言いやがって」レオの悪態を聞き流しつつ、アキは路地から大通りを見た

二人が居る路地の先には街の中心部に向かう人の群れがあった。誰もが奇抜な衣装を身にまとい、松めいて枝を伸ばしたスマッホを片手に、或いは横一列に並んだ友人同士が大声で話をしながら歩いていく

大規模なハロウィン仮装行列。およそ5000人を超える人々がコリヤマ最大の通り、ウネメストリートに向けて練り歩く。これ程壮大なハロウィンイベントはトオホクでも前例がない。「にしても、呼びかけだけでここまで集まるとはな」


そう、これは企画されたイベントではない。


「で?肝心の事件はどこで起こる?」レオが問う。アキは少し考え、答えた。「ウネメストリートに接する一番高いビル・・・・そして、通りに一番人が集まるタイミングだ。」「ふーん」レオは巻紙に火をつけ、吸った。甘ったるい匂いが風に乗り通りまで流れていく。路地の近くにいた数名が笑ったり飛び跳ねたりした


「アー・・・・イイ・・・・アキ、もう一度最初から説明してくれ・・・・」完全にキマった。
「すぅ・・・・ー・・・・」ドラッグの残り香が晴れるのを待って、アキも神秘的な呼吸を行う。

二人は臨戦態勢に入った。冴えわたるニューロン、研ぎ澄まされた五感、仮に今、1キロ先からスナイプしたとしても、今の2人には通用しないだろう

「異変に気付いたのは3日前、出処不明のタイムラインが不特定多数のSNS上に流れているとナツメ=サンから連絡があった。イクノ=サンの話では、そのどれもが今日のこの騒動を煽るもので、高度な専門的メンタリズムが仕込まれていたらしい・・・・」

そう、きっかけはSNSへのとある投稿だった・・・・

〈10月31日に仮装パレードをやろう!〉〈シブヤ・スクエアに負けないくらい派手なパーティをしませんか?〉〈友達と集まってハロウィンを盛り上げよう?〉〈SNSで今トレンドだ。インスタ映えもするしイイ〉

こういった種のタイムラインがどこからともなくウェブ空間に流れたのだ。
〈記念になる〉〈大事な人と思い出重点〉〈仮装してカワイイ〉〈出会い〉人間の歓楽心理を巧みに駆り立てる謎の書き込みは、情報ミームとなって人々を先導した。「・・・・続けて」

「おれはイタダキ=サンに調査をたのんだ。結果から言うとこの仮装行列はQPC(静策委員会)仕組んだものだ」なんたることか・・・・この若干インモラルな大衆騒動は仕組まれたものだったのだ!暗黒幻魔組織によって!

QPC、クワイエット・プラン・コミティ。様々なメディアを使って大衆意識を巧みに操作し、クロコめいて、世論を裏から統制している邪悪な幻魔組織だ!

「奴らは今日、大規模なテロを起こして大勢の人を殺すつもりだ。」そういった事件を起こして動かしたい世論があるというのか・・・・「この際、奴らの都合や思惑はどうでもいい。仕留めるのは実行犯ただ一人。」

「幻魔。ジャックオランタン」


・・・つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?