白い手のこっくりさん

あれは学生時代の夏の事だ。私と数人の友人で、放課後に「こっくりさん」をやっていた。五十音とトリイを描いた紙の上で1枚のコインを全員で押さえ、こっくりさんを呼ぶとコインが勝手に動き、質問に答えてくれる。そういう遊びだ

私たちは「好きな人」だの「明日の天気」だのくだらない質問をし、その都度「たけくん」「くもり」などとコインは動いていった。誰が動かしているかはよく分かった、みーちゃんの指だけ爪の先が白くなっており、人一倍力が入っているのがバレバレだった「サキ、動かしてない?」とみーちゃん

「動かしてないよー」「ホントに―?」「誰だよー」とまあそれなりに盛り上がっていたが、私はチョット飽きてきた。「ねえ、そろそろやめない?」と先に言い出したのはみーちゃんだった、皆も同意した。まあ、この年頃、飽きも早い

サキちゃんが言った、「じゃあ指離していい?」「ダメ!」「ダメだよ!」すかさず顰蹙を買う。それはそうだ、こっくりさんは『御帰り』頂かなければ終わってはいけない。神の遣いを呼び出し、そのうえ中座するような失礼があれば祟られる。必ず様式に沿って終えなければならない

だが、この年頃、刺激に飢えている。こっくりさんも今日で4回目、何かしたい。「ダメだよ!」「やってみようよ!」「コワイ!」喧しく騒ぐが皆、それ自体楽しくもある。意見は誰いうともなく、『中座』に向かっていった…

「じゃあ、せーのでみんな外すね」…静寂。取り返しのつかない事をする、そんな緊張感。だが、祟りなど半信半疑。今までも誰かしらがコインを動かしていた。今日だって。好奇心と享楽は、畏怖や啓稔など無縁のコンテンツへ私たちを誘っていた。人生で一番楽しかった。この瞬間までは

「やっぱりやめよう」そう呟いたのはありあちゃんだった。今更?なんで?こんなに楽しいのに。「なんかコワイよ、やめよ?」「なんで?ダイジョブだよ」「うん」「ダイジョブ」「ううん、フツーに終わろ、危ないよ」「何が?」「何にもないよ」いつの間にか日が沈みかけている

「ビビってんの」「そうじゃないけど!」段々空気が淀んできた。けんかになるのは嫌だな、せっかく楽しかったのに、じゃあこうしよう。「いいよもう、せーので離すよ!」「はーい!」「やめてよ!」これが一番だ。ありあちゃんが過剰に怖がった笑い話にしよう。それでおわり

「せーの!」

全員指を離した。一人を除いて。

私は離した、サキちゃんも、みーちゃんも、咄嗟にだが、ありあちゃんも。
全員離した。一人を除いて。コインを動かしていた、張本人を除いて・・・・

白く、長い指でコインを押さえていた。
そこに居たのは

狐マズルの意匠を象ったメンポを装着した、ニンジャだった!!


「「「「アイエエエエエエエエ!!!」」」」

いたいけな四人の少女の悲鳴を鑑賞し、邪悪な笑みを浮かべたニンジャは言った

「ダメだよね?途中でやめたら、ホントに悪き子たちね」身の毛もよだつ猫なで声である

「キミたちのような悪い子は、キツネの国で一生働いてもらうよ?」

「ア…ア…」恐怖のあまり四人は失禁、ありあは既に卒倒しかけていた、重篤なNRS(ニンジャリアリティショック)が目の前にあった!

「あ…ありあちゃん…ありあちゃん」なけなしの正気でありあの身を案じるサキ…

「ありあ=サンというのか。どれ、フフ…『味見』はありあ=サンにしよう」

ナムアミダブツ!目を細め、邪悪なニンジャは狐メンポの下で舌なめずりをした…コワイ!

(やっぱり祟りは本当だった、後悔してもしきれない、ありあちゃんが止めてくれていたのに!私たちのせいだ!)

「フフフ…ありあ=サン…チョット脱ごうか…」

アブナイ!

「まって…!ください…!」

思考が白んでゆく中、気持ちが口をついて出た…

「あん?」「私が…わるいんです…!やめようって…言ってたのに…私が…やめたんです!ありあちゃんは…食べないで…」

「イイよそういうの、じゃあお前でもいいか、脱げ」

「アッハイ」

(ごめんなさい……お父さんお母さん。みんなも、私、悪い子でした)

目を閉じ、死を覚悟した・・・その時である!

「wasshoii!!」

「「「!?」」」

禍々しいシャウトと共に、赤黒の風が教室に吹きこんだ!!

「イヤーッ!」「イヤーッ!」

藍白の風と化す狐メンポニンジャ!ナムサン!空中で交錯した二人のニンジャはシライ空中回転の後に、教室の端々に流麗な三点着地を決めた!ゴウランガ!

「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」

「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン、レスポンデントです。バカナ!なぜ貴様が……なんの脈絡もないぞ!」

「脈絡などオヌシには関係ない。ただ殺されよ」

「ふざけるな!イヤーッ!」「イヤーッ!」

レスポンデントの鋭いトビゲリをニンジャスレイヤーは素早くブリッジ回避!

「イヤーッ!」

ニンジャスレイヤーはスリケン投擲!

「イヤーッ!」

レスポンデントは……なんと!スリケンをキャッチするとそのまま投げ返した!タツジン!

「ヌウ!」スリケンが、ニンジャスレイヤー自らのメンポを掠める!

「俺に飛び道具は無駄だ、優しく忠告しておいてやろう」

「なるほど。ならばカラテで首を撥ねるまで、おめでたいアドバイスへの例に、比較的苦しまぬよう殺してやる」


私は再び失禁した


『サプライズ・ニンジャ』おわり

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ドーモ、澤村求深です 絵を描いたり描かなかったりします