デストロイヤーダイズ
「この中に人殺しが居るなア!」バーに入ってくるなり完全武装警官は高らかに声を張り上げた
「または差別主義者かア?」「クスクス」「ハハハ」続々と入店する警官たちはライフルを堂々とチラつかせ、尊大な態度でしみったれた飲み屋の店内を練り歩く。
米国、ジパング州、オホサカ市。百を超える超高層ビル群の端に、カビが生えたかのような準スラム街がある。ナニハ109区、行き場のない社会のはぐれ者たちが追いやられる環境的シマナガシ空間。
非合法バー「タコヤキ」が、今日はいつになく騒がしかった
「人殺しは手を上げろ!差別主義者もだ!」警官が叫ぶ。上げる者はいない。当然だ、差別主義者を自認する人間などいないし人殺しならなおさら主張などすまい
「この区に居る時点でどちらかのはずだァ!おっとすまない、アナーキストも居たかな?」「「「アハハハ!」」」笑っているのは警官たちだけだ「誰も上げんのかァ?」居ない。ここに長くいる者なら知っている、これが増長しきった公権力の無意味な恫喝にすぎないと。もし、そのプレッシャーに耐え兼ねウカツに挙手する者が居れば…
「お前!手を上げたな!」「ひっ…あの、ハイ…えっと…」「署まで来てもらおうか、誰を殺した?それとも女性や多人種を侮辱したか?どっちでもいいが」「エ?そんな、やってません、私は…」「手を上げただろう!クズが!連行しろ!」「アヒェェェッ!!」こうなる
「さて、本題に入るか」警官のその一言でそれを眺めていた客達は一斉に目を逸らせた。絶対によくない事が起こる…
店のマスターが逮捕されここが更地になるか、或いは過激派の検挙の為この場に居る全員が連行されるか…静まり返る店内。警官が、カウンターに寄りかかりアイスミルクを飲んでいた一人の男に歩み寄った
ボロボロのコートの下に真っ白なスーツを身にまとった男はミルクを飲み干すとフッ素ガムを口に放り込んだ
「ダイズ・ムラサメだな?」警官が問うた
【続く】
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