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「レゴ・ニンジャゴー・ザ・ムービー」_“今更メカに頼ろうものか!” その顛末。

2013年に日本で公開された「LEGOムービー」は、(レゴ・ビルダーであるなし問わず)一目見た者たちの心を鷲掴みにした。

CGアニメーションの利用により、ハイパーリアル=現実には再現できそうにない「現実」が立ち現れたのだ。
それが、レゴブロックの集合で表現された大海原の波のうねりであり、崩落する「雲の上の楽園」であり、敵を蹴散らしてはハイウェイを爆走するバイクのアクションであり、主人公が操縦する巨大ロボの大暴れでもある。
組み立てては壊されるブロックの洪水。ボーッと見ているだけでも心地よい。

ここまでは良かったが、その後「バットマン・ザ・ムービー」「レゴ・ニンジャゴー・ザ・ムービー」「LEGOムービー2」と5年間に4作も作られた。
企画の吟味に吟味を重ねるハリウッドらしくない、濫作だ。

今回はリアタイの観客の半分がずっこけたであろう「レゴ・ニンジャゴー・ザ・ムービー」を紹介する。東方不敗マスター・アジアの謂いではないが「今更メカに頼ろうものか!」を地でやっちゃった作品だ。


ニンジャゴーシティに巨大な闇の力が近づいていた…。
世界征服の野望をもつ悪の帝王ブラックガーマドンが、街を征服しようと連日ニンジャゴーシティを攻撃。
ニンジャゴーシティを守るため、若きニンジャ、ロイドと仲間たちは、師匠ウー先生に率いられ、
「真のニンジャ」だけが手に入れられるという“最終最終兵器”を求め修行の旅へと出かける。
《緑・火・雷・水・氷・地》の力から得た“エレメント・パワー”を駆使してニンジャたちが、いざ、運命の決戦へ―!
ロイドが、自分の力を信じ仲間と力を合わせて巨大メカと使いこなして大活躍、痛快爽快なバトルに大興奮!
最強チームでみんなの「力」と「あきらめない心」に勇気と感動をもらえる、夢のニンジャアドベンチャー!

ワーナー・ブラザース公式サイトより引用


この映画の見どころの99%は、市街地を舞台に繰り広げられるロボット同士(ガーマドン一味VSニンジャ六人)のバトルに集約された冒頭、と言って良い。

まるで神龍乗った悟空思わせる、ロイド(緑の忍者)乗り込むメカドラゴン。
スタンダードなヒューマノイド型ロボであるカイ(赤)のファイアーメカ
アカシック◯スターぶっぱしそうなジェイ(青)のライトニング・ジェット。
巨大タイヤでビルの谷間を激走するコール(黒)のクラッシャーメカ。
これはまるで陸のミレニアム・ファルコン:ゼン(白)のアイスタンク。
紅一点なのに何故か蜘蛛型!ニャー(灰)のウォーター・ストライダー。

それぞれ個性的なメカニックが、敵のロボット軍団相手に、「トランスフォーマー」や「パシフィック・リム」なんて眼じゃねえぜ、と言った感じで戦い、壊し、グイグイ動きまわる。

冒頭で盛りに盛り上げたテンションは、しかし話が進むにつれ萎んでいく。
具体的には、六人の師匠(ウー先生、声はジャッキー・チェン。)が、真のエレメントパワー持つニンジャにはメカなんて必要ないと、告げるあたりからだ。
六人は真の力を得るために修行に向かう、そしてそこまで苦もなく力を手に入れる。血の滲むような努力の末ガンダムファイトへの参加枠を手に入れたシャッフル同盟が見たら、間違いなく激おこする瞬間。

クライマックスはガーマドンとニンジャの最終決戦。ここでは、ロボットをほっておいて超人同士が動き回る。グリグリ動き回るのは良いが、如何せんミニフィグ。ビルドしてデストロイするカタルシスが、まるで弱い。
戦隊ヒーローもので例えていうなら、前半、巨大化して現れた怪人を巨大ロボット出撃させて倒したら、怪人が死力を振り絞って縮小化。戦隊ヒーローと怪人の小規模な肉弾戦が後半に繰り広げられる、という竜頭蛇尾な構図だ。


もうひとつ、本作を見る上でのガンが存在する:敵の親玉ガーマドンの出しゃばりだ。百足のように手をはやしたお世辞にも可愛くない人外が、これはもうやりたい放題。
人外だから、武術にも超能力にも大軍の指揮にも秀でている。
ニンジャたちが不甲斐ないので、着々と悪の作戦は進行。冒頭から中盤、はてはエンドロールまで出番をのっとる:ニンジャたちを差し置いて!

この自意識過剰エゴイズムの塊から産まれたのが、ロイド。
すでにガーマドンの息子だと世間に知れ渡っているので、ハイスクールのクラスメートからの風当たりは(仲間のニンジャたち以外)冷たい。
放埒すぎる悪の帝王=父親を、ロイドたちが止めようとするのが話の大筋だ。
悪に走った父と善の勇者たる息子というスターウォーズさながらの構図・・・が、主に親父がギャグとしてこの関係性を茶化している(つまり重要視していない)ので、息子が頑張っても頑張っても報われない構図なのが、致命的な問題。
ニンジャたちが奮戦するほど、ガーマドンが我が物顔で通る、悪夢の構図。


まとめると、
冒頭あれだけ尺を割いたロボットたちが、後半まるで出番なし。
生身の人間(というか超人)がメカをぶっ壊す。
あしゅら男爵みたいな怪人(の親父)が大暴れ。
親父の遺したツケを息子が払わされる。

・・・あれ?この作風どっかで見たぞ。
アニメファンにお馴染み、何かといえば「今川泰宏」


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