マガジンのカバー画像

花に嵐の映画もあるぞ(洋画編)。

183
わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦… もっと読む
運営しているクリエイター

#SF映画

「昨日は誕生日だったけど、誰も"おめでとう"って言ってくれやしなかった…」_「Dark Star」(1974)

「ハロウィン」「遊星からの物体X」「ニューヨーク1997」などアクション、ホラー諸作品で80~90年代のハリウッドで一時代を築いたジョン・カーペンターの監督デビュー作「Dark Star」(1974年公開、邦題:ダーク・スター)より。彼は自身で脚本を書き、音楽を作曲し、低予算で製作を行っている。後に「エイリアン」を手掛ける脚本家ダン・オバノンにとっても出世作となった。 「2001年宇宙の旅」以後「スターウォーズ」以前の70年代のSF映画といえば「絶対にシリアスでなければいけな

宇宙の孤独、たったひとりの男。「ファースト・マン」。

彼は、月に誘われて居た。光はいつも かはらぬものを ことさら秋の 月のかげは などか人に ものを思はする 民謡 「月」作詞・滝廉太郎 より引用 ルイ・アームストロングは、月のことばかり考えていた。 この映画の醍醐味は、暗闇の中に身を浸してこそ初めて味わえるだろう。 画面と一対一の関係に置かれた時、 明滅する光の喧しい世界の中でふと忘れ去られる死者たちが、浮かび上がる。 恐ろしく原始的な機械の中で命を落としていくか重傷を負うテスト・パイロットたち。 アームストロングも「

外宇宙生命体にとっての銀河ヒッチハイク・ガイド、「宇宙人ポール」。

Apple Arcadeでインディーズゲーム「UFO on Tape:First Contact」をプレイしている。 内容は簡単、画面上に出現するUFOにピントを合わせてシャッターを切るだけ。 なのだが、最初のステージからして、全くクリアさせる気のないムリゲー。 林間の道路を走りぬける車の中からUFOを目撃しようと試みるのだが、高速で動く。一瞬、ほんの瞬きの間に通り過ぎてしまう。 このゲーム体験からプレイヤーの99%が気付くのは 「常人にはそもそも、UFOの目撃なんて、出

オススメのSF映画(備忘録)

ジョルジュ・メリエス「月世界旅行」 言わずと知れた映画史に残る傑作だが、内容はぶっ飛んでいる。 DQNな科学者たちが、探究心が運ぶままに月世界を荒らし回って、月世界人も何人か撃ち殺して、お土産片手に悠々と帰っていく。現地人のその後は一切考えない無責任野郎どもの珍道中。 のちに筒井康隆が「農協、月へ行く」でオマージュを捧げているくらいに乱暴的で黒いユーモアだ。 フリッツ・ラング「月世界の女」 フリッツラングらしい大冗談で大袈裟な身振りの映画。月に旅立つまでは間違いなく面白い。

映画「10 クローバーフィールド・レーン」_“俺だってエイリアンだぜ、自覚はないがな!”

結局、エイリアンはだれだったのか?。 自覚がないまま狂気に陥っているということ。 それが人間にとって、世界でいちばん恐ろしい存在であることは、ロバート・デ・ニーロ、ジャック・ニコルソン、ほか、歴史的名優たちが証明している。 本作のジョン・グッドマンがまさにそれ。自分がそうと知らない、とてつもなく邪悪なエイリアンだ。 彼のマッドぶりに圧倒されろ。 鉄壁の自己正当化で他者に対して閉じている、発作的に暴力を振るう(人間を生きたままドラム缶に並々注いだ薬品で焼き殺す!)、体を焼か

SF映画「トゥモローワールド」_閉塞と暴動の2027年、もうすぐ、そこだ。

ディズニーのトゥモローランド、および同名の映画(監督:ブラッド・バード)とは一切関係ありません。ブラッド・バードの世界観もそれなりにシビアだが、本作はそれを圧倒的に凌駕する。 監督は「ゼロ・グラビティ」でおなじみアルフォンソ・キュアロン。 「2050年 世界人口大減少」で予見された以上に悲観的な未来、人類滅亡の瀬戸際を、「ゼロ・グラビティ」で魅せたキュアロンの持ち味:時間と空間が密接にダイナミックにリンクする臨場感によって、表現する。 西暦2027年、人類にはすでに18年