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花に嵐の映画もあるぞ(洋画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦… もっと読む
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#イタリア映画

ソフィア・ローレン、89歳、魔女のように気難しいおばあちゃん。「これからの人生」

ソフィア・ローレン。イタリアを代表するスケールの大きな国際女優。活躍期間までを考慮すると国際スターとして空前絶後の存在。「ひまわり」はじめとするヴィットリオ・デ・シーカ監督作品他イタリア映画はもちろん、英語圏の映画への出演も数多く、名声においても出演作の数と質においても、国際女優としてイングリッド・バーグマンと双璧をなした存在。 多岐に渡るジャンルで活躍し、共演した主な男優は、英語作品のみに限っても、ケーリー・グラント、クラーク・ゲーブル、ジョンウエイン、チャールトン・ヘスト

イタリア映画「越境者」

イタリアの南北格差とは、経済、社会、文化的な要因によって引き起こされ、南部イタリア(メッリダノ、カラブリア、シチリアなど)と北部イタリア(ミラノ、トリノ、ヴェネツィアなど)の間の大きな経済的、教育的、発展の不平等のこと。かのヴィスコンティ監督が「若者のすべて」で、成功を夢見てミラノにやって来たイタリア南部の貧しい家族と都会での残酷な現実を描写したのは、あまりにも有名だ。 『越境者』(1950年、ピエトロ・ジェルミ監督)は、「若者のすべて」と同様に、南イタリアから北イタリアへ

破滅の映画「愛の嵐」_消せない傷痕、不幸せに身震いするふたり。

挑発的で退廃的な映画は、いかがかな? この映画は 陰鬱なメロディと映像に始まる。 オープニングから流れるテーマ曲が誠に素晴らしい。オーボエの哀愁を含んだ音色がヨーロッパの持つ陰鬱さを見事に感じさせてくれている。そして、全体的に色調を抑えた映像に実にマッチしている。作品中所々に流れるピアノ・ソロ・バージョンも素晴らしく良い。 さて、あらすじは。 そして、悲劇が始まった…。 再会した二人は、堕ちる所まで狂喜と愛欲の日々に溺れていくのである。 愛し合う2人。「愛してる」とマ

1959年金獅子賞受賞「ロベレ将軍」_何故、仮面を引き受けた?

これは、偽りの仮面を引き受けた男の物語だ。名を騙る。最初はほんの軽い気持ちだった。 第二次大戦末期のレジスタンスの英雄、デッラ・ロベレ将軍にまつわるきわめて奇異でイタリア的な実話をネオレアリズモの旗手、ロッセリーニが軽妙に、劇的に描く、『無防備都市』をひっくり返したような異色のヒューマンドラマ。その弛まざる演出に応えた役者、デ・シーカが渾身のアンチヒーローを体現し、最低の詐欺師の中にも奇跡的に芽生える正義感(ないし人間的使命感)を表して尋常ならざる感動を呼ぶ。 【スタッフ】

映画「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」_おれがやめたら、だれがやるのだ。

焼け跡からしぶとく立ち上がり、逞しく生きていく人間たちの美しさ、醜さ。 レジスタンスのものがたりは、イタリアにも存在する。 第二次世界大戦が終わった時、イタリア映画にはネオ・リアリズモが起こった。 資金も撮影機材もままならぬ状況にもかかわらず、監督たちはメガホンを取った。 最小限のスタッフと機材、出演は素人、撮影はロケのみ。 そんな逆境が、次々と傑作を生み出した。 そこには、社会に潜む悪を告発する、戦争という理不尽の極みを生き延びた人々の”真実の叫び”があった。