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花に嵐の映画もあるぞ(洋画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦… もっと読む
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#ロードムービー

死が二人を分かつまで。映画「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」

「Knockin' on Heaven's Door(ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア)」は、ボブ・ディラン(Bob Dylan)が1973年に発表した曲だ。 死後の世界を指すメタファーを含んだ歌詞は、同時に比較的シンプルで直感的であり、多くの人に深い感銘を与えた。歌詞には個人的な喪失や絶望感が反映されており、何か終わりに近づいている感覚が表現されている。また、死や死後の世界についてのテーマも含まれている。 本曲が西部劇映画『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』に対する楽曲とし

親父、まだヒッピーなのかよ(偽らざる本音)。 「はじまりへの旅」

評価が高いところ済まないが。いい話に見えて、見方を変えれば毒親じゃないのか。これ。2016年に公開されたアメリカのドラマ映画「はじまりへの旅」(Captain Fantastic)より。 物語は、ベンという名前の男性(演じるヴィゴ・モーテンセン)と彼の6人の子供たちが、アメリカの森の中で自給自足の生活を送っているところから始まる。ベンは子供たちに固定観念にとらわれず、知識や生存技術を教え、肉体的・知的に鍛え上げる教育を施している。 ある日、ベンの妻であり子供たちの母親である

“美よ、我とともにあれ”_”The Sunchaser”(1996)

これが、マイケル・チミノの遺作だ。 遺作と呼ぶに相応しい風格だ。 そもそもチミノは、作品を出すたび、何かしら社会のスキャンダラスな一面をえぐってきた。 ベトナム帰還兵とロシア系移民(アメリカ国内のマイノリティ)を扱った監督二作目の「ディア・ハンター」は言わずもがな。 「天国の門」は1890年代のワイオミング州を舞台にロシア・東欧系移民の悲劇を描いた。 干されて復帰した後の「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」にはチャイニーズ・マフィア含む人種問題の色が現れる。 芸術か偏見か、いつも

映画「手紙は憶えている」_あなたの、探し物は、誰ですか?

2021年2月に逝去されたカナダ出身の名優クリストファー・プラマー。 「サウンド・オブ・ミュージック」で演じたトラップ大佐は永遠に不滅。だがこの作品で、オスカーは(意外にも)受賞していない。 彼がアカデミー賞に80歳を越してからだ。 『終着駅 トルストイ最後の旅』では第82回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、 2011年の『人生はビギナーズ』で第84回アカデミー賞助演男優賞を受賞した。82歳での受賞は、演技部門の受賞者の中では最高齢である[2]。 『ゲティ家の身代金』

ソ連製戦争映画「誓いの休暇」_帰郷、たった3分間だった。

わたしは厳寒を冒して、二千余里を隔て二十余年も別れていた故郷に帰って来た。時はもう冬の最中で故郷に近づくに従って天気は小闇くなり、身を切るような風が船室に吹き込んでびゅうびゅうと鳴る。苫の隙間から外を見ると、蒼黄いろい空の下にしめやかな荒村があちこちに横たわっていささかの活気もない。わたしはうら悲しき心の動きが抑え切れなくなった。 おお! これこそ二十年来ときどき想い出す我が故郷ではないか。わたしの想い出す故郷はまるきり、こんなものではない。わたしの故郷はもっと佳いところが多

西部劇「ビリー・ザ・キッド 21歳の生涯」_ 生き急いだあいつと、無為に生きながらえた俺と。

無念、という言葉が、この世には存在する。 なぜ、命を奪われた。 なぜ、命を奪った。 という無念が。 アメリカ西部開拓時代の保安官、パット・ギャレットの一生において痛恨の無念が、当時21歳のビリー・ザ・キッドを射殺したことだった。 「血まみれ」サム・ペキンパーが、その道行を映画化した本作。 かつて「ワイルドバンチ」で情け容赦ない無差別殺戮を描いたこの男が、こんどは、ただひとりのアウトローの死、それを殺した保安官の無念を、描く。 物語は1909年、老境のパット・ギャレットが、