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花に嵐の映画もあるぞ(洋画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦… もっと読む
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#ナチス

「人々は救世主を求めている。だがそれは、平和の王子じゃない…全く別のヒトラーさ。」_『The Stranger』(1946)

オーソン・ウェルズが「第三の男」の3年前に奇しくも「追われる男」を演じた、1946年に自身が監督・主演したフィルム・ノワール『The Stranger』より。 逃亡中かつ米国に潜伏しているナチ高官、という当時としてはスキャンダラスで生々しい題材。とはいえ、「市民ケーン」の様な圧力を受けることもなく、興収は制作費の2倍を回収する、そこそこの成功を収めた。 物語は第二次世界大戦後のアメリカで展開される。オーソン・ウェルズ演じる元ナチスの指導者フランツ・キンドラー(オーソン・ウェ

破滅の映画「愛の嵐」_消せない傷痕、不幸せに身震いするふたり。

挑発的で退廃的な映画は、いかがかな? この映画は 陰鬱なメロディと映像に始まる。 オープニングから流れるテーマ曲が誠に素晴らしい。オーボエの哀愁を含んだ音色がヨーロッパの持つ陰鬱さを見事に感じさせてくれている。そして、全体的に色調を抑えた映像に実にマッチしている。作品中所々に流れるピアノ・ソロ・バージョンも素晴らしく良い。 さて、あらすじは。 そして、悲劇が始まった…。 再会した二人は、堕ちる所まで狂喜と愛欲の日々に溺れていくのである。 愛し合う2人。「愛してる」とマ

ナチの追手にご用心。_“Man Hunt”(1941)

ナチスへの協力を避けるために渡米したドイツの巨匠フリッツ・ラング監督が、ハリウッドで手掛けた反独プロパガンダ映画「マン・ハント」より。 劇中の時系列は、 と後世に評される様に(小国の事情を無視して)独英露仏が縄の引っ張り合い、欧州情勢が複雑怪奇の様相を呈していた1939年7月末日(正確な日時は29日)から、同年9月まで。 ライフル名人のイギリス人男性ソーンダイクは、ドイツ国内で狩を楽しんでいる途中、たまたまヒトラーに照準を向けてしまったことから、暗殺未遂事件の容疑者としてゲ

“正義とは赤いリボンや金モールには目をやらないもの。殺された女の叫びのみ耳にするもの。“_“THE NIGHT OF THE GENERALS”(1967)

オープニングだけは”ヌーヴェル・ヴァーグの父”アンリ・ドカエのカメラが冴え渡っていて、あとはなんというかひたすら重苦しいだけのジメジメした(142分も必要だったか?)映画「将軍たちの夜」より。 ドイツ国防軍として実際に前線に出た東プロイセン出身のハンス・ヘルムート・キルスト原作。また、ハリウッド作品ながら、出演者は全てイギリス及びヨーロッパの俳優であり、そのことが本作に一種独特の雰囲気を与えているのは、間違いない。 舞台は1942年、 と後世に評される、ナチス・ドイツに根

映画「手紙は憶えている」_あなたの、探し物は、誰ですか?

2021年2月に逝去されたカナダ出身の名優クリストファー・プラマー。 「サウンド・オブ・ミュージック」で演じたトラップ大佐は永遠に不滅。だがこの作品で、オスカーは(意外にも)受賞していない。 彼がアカデミー賞に80歳を越してからだ。 『終着駅 トルストイ最後の旅』では第82回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、 2011年の『人生はビギナーズ』で第84回アカデミー賞助演男優賞を受賞した。82歳での受賞は、演技部門の受賞者の中では最高齢である[2]。 『ゲティ家の身代金』