マガジンのカバー画像

花に嵐の映画もあるぞ(洋画編)。

184
わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦… もっと読む
運営しているクリエイター

#第一次世界大戦

「栄えある死のために。」_"Dishonored"(1931)

第一次世界大戦中の渦中を股にかけたとドイツ帝国に喧伝された、実在のスパイ:マタ・ハリをモデルに、マレーネ・ディートリッヒが美貌の女スパイを演じた、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の1931年の映画「Dishonored」(邦題:間諜x-27)より。 1915年、オーストリア帝国の首都ウィーン。娼婦のマリーは帝国の諜報部から強制的にリクルートされ、スパイとなる訓練を受ける。戦時中ゆえ拒否権はない。勲章すがたの将校が、愛国心や自己犠牲をマリーに説く。彼女は実にどうでも良さげに

まだ東独があったから成り立ちえた危険な映画、いやほんと。「ローザ・ルクセンブルク」(1985年)

女傑、という言葉が似合う女性には、戦前日本なら市川房江、平塚雷鳥、与謝野晶子ら、女性の権利向上・社会進出のために尽力した政治的な人物が挙がるだろう。 戦前ドイツにも、同様の人物がいる。ローサ・ルクセンブルク。 彼女はマルクス主義者の理論家として、戦前日本においてことに知名度が高く、太宰治の「斜陽」にも、かくの一節がある。 そんな彼女の48で短く太く終わった人生を、「ハンナ・アーレント」(2012年)でやはり実在の人物を演じたバルバラ・スコヴァ(Barbara Sukowa,

もうひとつの西部戦線異状"なし"。映画「西部戦線1918」

1930年に公開された、第一次世界大戦をテーマに置いたドイツ映画「Westfront 1918」(邦題:西部戦線1918)より。 戦争の前線で戦うドイツ兵士たちの視点に立った本作、彼らは戦場での過酷な状況に直面しながら、友情や人間関係、そして戦争の非人間的な本質に向き合っていく。戦争の残酷さと不条理さがリアルに描写され、兵士たちを追体験する構成になっている。また、彼らは家族や恋人たちとの切ない別れや、戦争が引き起こす悲劇的な出来事にも直面する。 …なんだ、「西部戦線異状な

"機関銃を止めずにはいられなかったんだ。だから俺はやり遂げた。"_Sergeant York(1941)

実在の第一次大戦中の英雄の伝記映画である「ヨーク軍曹」より。 テネシーの田舎町に生まれた無頼漢 ヨーク(ゲーリー・クーパー)は、ある時、信仰に目覚め、改心する。やがて、戦争が始まり、戦争と宗教の矛盾に苦悩するも、真の自由を守るために銃を取る。 皆さんお分かりの通り:「ハクソー・リッジ」とやってることは同じである。シモ・ヘイへよろしく、一歩間違えればマンガの世界から出てきたような活躍ぶりを見せる一兵卒を、ハワード・ホークス監督はどう描いたか。 ヨークは農夫として育ち、若い頃

WW1の忘れたい/忘れられない記憶。「彼らは生きていた」と、3つの「西部戦線異状なし」。

悲惨な記憶、というものは、いとも容易く忘れられる いや、本心では忘れたがっていることに、そろそろ気づくべきかもしれない…。 それを考えるべく、今回は計4つの第一次世界大戦の記憶 を紹介する。 ピータージャクソンのドキュメンタリー 「彼らは生きていた」 2020年2月公開の「彼らは生きていた」 皆様はご覧になっただろうか? イギリス帝国戦争博物館に所蔵されていた西部戦線で撮影された未公開映像を元に、ピーター・ジャクソン監督がモノクロの映像をカラーリング。大戦当時は音を録音